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【今日の読書】ヤギになったりトースター作ったり、という本2冊

イヌやネコやパンダやハシビロコウなどなどの動物を見ていて、

「動物って悩みごとがなくていいなぁ」

なんてことを思ったことがある人は多いのではなかろうか?
少なくとも私は思ったことがある。
そして、人間が二足歩行しているいびつさと違和感を感じることも時たまある。

そんな考えを実際に実行して、その過程と結果をまとめたのが、『人間をお休みしてヤギになってみた結果』というドキュメンタリである。

作者のトーマス・トウェイツ(ミュージシャンのトム・ウェイツと微妙に名前が似ているが違う)は、美術系の大学院を卒業したのはいいが、就職もできずガールフレンドとの結婚も考えなければならない、人生ままならないという人間らしい悩みに直面している中で、

「人間をやめてみればいいじゃん」

後ろ向きな前向きさとでも言うのか、なんだかよくわからないことを実行することを思いついた。

では、どの動物になればいいのか?

最初彼は象になることを目論んだが、長い鼻と巨体から早々にその考えを放棄する。

そして、シャーマンと相談した結果、ヤギになってみることを決意する。

ヤギになるには四足歩行をしなければならない。
そのための義体を作成するために、研究者と義足作者と相談する。

ヤギは草食動物だから、繊維質をエネルギーに変えるために少なくと酵素分解するための胃が必要だから、それ用の胃を用意しないといけない。
やはり研究者と相談して草を分解する模擬的な胃を身体外に作る。

また、ヤギは人間の言葉なんかしゃべらないから、脳の言語野を不活性状態にしなければならない。
さすがに強力なパルスを脳に与えるのは危険なので、これはやらなかった。

そんなこんなでトーマスはヤギになってアルプス越えを敢行する、というお話。

※※※※※

さて、2冊目の『ゼロからトースターを作ってみた結果』は、ヤギになってみることからさかのぼること10年前。

まだ大学院生だったトーマス・トウェイツが、産業革命以前の技術で「トースターを作ってみる」という企画。

作るといっても部品を組み立てるのではなく、鉄鉱石から鉄を作り、石油からプラスチックを作り、というレベルから行うというもの。

鉄は何とかなっても、プラスチックを作るために必要な原油を手に入れることができなかったために、ジャガイモでエコなプラスチックを作りだし、ニッケルは硬貨を鋳つぶすという反則技を使って、なんとかかんとか作り上げたのが、書影にある、どろどろでホラーなトースターでありました。(一応できたみたいよ)

あほなことを真剣にやって見えることは、確かにある。

「ヤギ」で見えたもの。
人間とそのほかの動物を分かつもの。
「トースター」では、文明と技術への一種の懐疑。

普通に生活していく分には、

「人間とはなにか?」
「今ある技術って本当に必要なの?」

と考えることは不要なのかもしれないけれど、
クリエーティビティというのはこういう思考から出てくるものだよね、というのが私の読後感でした。

(ついでながら、『人間をお休みしてヤギになってみた結果』でトーマス・トウェイツは、イグノーベル賞を受賞しています)

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