心に残る言葉 No.3

秋風にあへず散りぬるもみぢ葉のゆくへさだめぬ我ぞ悲しき

 古今集の秋歌下にあるこの和歌は、秋風に耐えきれなくなって散ってしまう紅葉は行方も決まらない、同じように行方の決まらない私も悲しい、という意味になる。

 この和歌は、私がこれまでで1番共感できた和歌である。浪人生として勉強している時、テキストに出てきた。

 大学に全落ちして、親に頭を下げて浪人をさせてもらった。しかし、同級生のほとんどは現役で合格。
 同級生のきらきらしている様子を横目に、また落ちたらどうしよう、夢に向かって頑張っていけるのか…という思いにがんじがらめになっていく。
 覚悟を決めて浪人したはずなのに、不安で仕方がなかった。

 まさに、落ちていく紅葉と同じように、自分もどこかに落ちていく。決まらない進路。

 和歌が、自分のことを分かってくれているような感覚になった。よく、本を読んで、過去の人と対話する、という感覚を眼にする。それまでよくわからなかった感覚だが、この和歌に出会って、今でも昔の人と感覚を共にできることを感じたのである。

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