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偏西風はなぜ吹くのか?(詳細編)

この記事(https://note.com/demoto222/n/n871be44761bc)の詳細編です。


更に詳しく

1.コリオリ力(詳しく)

まず、こうした文脈では「見かけの力」といった言葉が使われますが、却って分かりづらくしている印象があります。
普通にシンプルに物理現象を解いたほうがわかりやすいと個人的には思います。

1-1. 並進座標系における慣性力

まず、よくある「電車が発進した際の、物理事象についての理解」の整理から入ります。最初に、外から見た際の事象を整理したほうがわかりやすいかと思います。

電車に座る人間を例にとると、横軸方向に存在する力は接合面、すなわり座面から来る摩擦力だけなので、

摩擦力(F)= mA (m: 人間の質量、A: 電車の加速度=人間の加速度 )

という関係になります。※高校力学の基礎of基礎(だけどあまり明示的に触れられない?)話として、力は2種類=1. 万有引力(主に重力)2.電磁気力(広義のとでもいいましょうか。接合面の分子の反発 e.g. 摩擦力や、接合面の接着 e.g. 糸の張力 を含みます)です。

見かけの力などといわずとも、「座面からの摩擦力で加速度が生じた」という形でシンプルに起きている物理事象を解釈できます。

これを電車とともに動く立場から見て「電車から見て、人は止まっている」という言い方もしてみたくなるわけです(そのほうが人間の理解にとって自然だったりすると思うので)

それは、F - mA = 0 (摩擦力と左向きのmAという力が釣り合って、静止している)と表現されます。
すなわち、加速度Aで動く座標系から見る場合、-mAの力が存在していることにすればOK、ということで、見かけの力と呼ばれるわけです。

(たまに、「見かけの力で電車の発進方向に対して後ろ向きの力が感じられます」といった説明も見かけますが、個人的には昔、見かけの力を感じるってなんだ?ということで混乱しました。あくまで人間が感じているのは、電車の発進方向に向かう座面からの摩擦力であり、そこに追従するよう上体を前に向かわせるので、後ろ向きの力を感じているときと同様の動きである、と理解したほうが良いように思いました)

1-2. 回転座標系における慣性力=遠心力+コリオリ力

次に、円盤上の話です。
少し調べるだけでも直感的に理解するための動画がいくつが挙がっていたので、referします。

要は、コリオリ力=動く向きに対して、右向きに働く見かけ上の力(※) なのですが、恐らくこれが直感的に理解が難しいものと想像します。 
※ここではすべて正回転=反時計回り=北半球想定 の前提で書きます。

数式上は、コリオリ力は一義的に表せるのですが、直感的に理解する上では、円盤上色々な向きに転がすことをそれぞれ想像してみるのが良いように思います。

まず、多分一番直感的にイメージしやすいのは、内側から外側にボールを転がすケース
(物理的に正確な表現をすると、円盤上から見て静止状態にあった、中心部近くに置かれたボールを、一瞬だけ外側方向に力を加えることで、外側向きの速度を生じさせ、それ以降は一切の力は加わらずに、慣性の法則に従い、等速直線運動をする)

円中心部に自分が立ってみると、自分自身の目線がどんどん左に行くので、相対的にボールは右側に流れているように見えるはずです。

次に、外側から内側にボールを転がすケースです。
もしかしたら、「あれ、進行方向に対して左側に転がるのでは?」と思われる方もいるかもしれません。(先程は自分の目線が回転軸に沿って進みながらボールがおいていかれる感覚でしたので)

実際にはそうはなりません。なぜなら、初期値=転がす直前 の時点で、円盤上から見て静止状態にあったということは、円盤と同一の速度を持っていたためです。
この状態から、中心方向に向けて力を加えると、その次の瞬間の速度ベクトルは、接線方向の初速と、加えた力によって生じた向心方向の速度をあわせたものになる
速度は外縁側ほど速いので、どんな力を加えても、次の瞬間において、
中心部を見る目線の右側にボールが存在することになります。

(最初のケースでは、初速への言及を割愛しましたが、逆に内側ほどスピードが遅いので、外側に転がした際には、円盤が回転するスピード以上にボールが回転方向に向かうことはありません)

念のため、反時計回りの回転方向及び逆向きにボールを転がしたケースも考えると以下の通りです。

  • 回転と同じ方向に転がすと、発射台の横軸方向の速さ以上にボールの速さがなるので、右方向に逸れるように見えます

  • 逆向きに転がすと逆に必ず減速することになるので、やはり一緒に動く立場から見ると、右方向にそれるように見えます。

また、ここではコリオリ力の話を先にしましたが、直感的に理解できる話として、遠心力もあるかと思います。
すなわち、見かけの力(慣性力) = 遠心力(中心から外に向かう方向) + コリオリ力(速度に対して右向きの方向) となることが理解できるかと思います。

この力の大きさを、数式を用いて、簡単に解いておきたいと思います。

先程の電車の例と同様に、
実際に加わる物理的な力Fに加えて、座標系の加速度に基づく力が加わった挙動をするような格好になります。


要は、座標変換の話なので、r'とrの関係式から上記の見かけの力を求めるだけです。計算過程を汚い手書きですが一応貼っておきます。

確かに、以下2つの見かけの力(慣性力)=遠心力+コリオリ力を得られました。

1-3.自転する地球上におけるコリオリ力

地球は自転している、かつ通常、気象現象は地球に乗った立場での議論をするので、コリオリ力を考慮することになります。
上では円盤で議論をしましたが、地球は球体なので少し挙動が異なり、
例えば赤道ではコリオリ力はゼロになります。

もしかしたらぱっと理解しづらい話かもしれませんが、そもそもここで議論しているコリオリ力は、水平方向の風に対してであるという前提があります。

赤道では水平方向には自転をしていないので、コリオリ力はゼロになります。
※コリオリ力の定性的な説明の中で、速い外側から遅い内側にいくと相対的に右にずれたように見えるという話をしましたが、赤道上では少し南北にずれても速度がわからないので見かけの力を受けない、という点と整合します。

逆に極近くでは、円盤と同様の動きになります(この点はイメージ湧きやすいと思料)すなわち、地球の自転角速度Ωに対して、2mΩvとなります。

中緯度帯など含め、一般に緯度φにおけるコリオリ力は、地球の自転ベクトルの水平成分を取り出すことで求められます。
幾何学的に見て、2mΩsinφvとなります。

すなわち、赤道近辺はゼロに近いのに対し、30度近辺では最大値の半分程度までコリオリ力が生まれることになります。

2.大気大循環

こちらは色々わかりやすい記事ありましたので、referだけします。
参考)
https://www.rd.ntt/se/media/article/0044.html  (大気大循環とは/NTT)

(繰り返しになってしまいますが)
要するに、赤道付近で暖められた空気が上昇して極方向に向かうものの、コリオリ力の強まる亜熱帯(北緯30度)付近で、風向きの南北方向の成分を失い、一旦下降流となり、高気圧帯を形成する、という点がポイントです。

3.地衡風

こちらはやや分かりづらい点かもしれません。
冒頭に挙げたモーニングショーでも「南から北に行って、少し右側斜めにずれることまではわかったけど、なんで真横なのかがわからない」というコメントが、コメンテーターの玉川氏のコメントもありました。

気象学的に言えば、「地衡風だから、以上」ではあるのですが、そもそもの前提として、ここでは平衡状態を前提とした議論をしている、という点を明確化すると良いのだと思います。

すなわち、ある瞬間に、南が高気圧、北が低気圧という状態が生まれたとして、風が北に向かう中で、コリオリ力を右向きに受け風向きが右にそれる。
このときは、あくまで斜めの風であり、玉川氏の仰る通りなわけです。

しかしながら、いざ風向きが右にそれると、次の瞬間は更に右向きのコリオリ力を受けることになる。
このように力が釣り合っていない限り、風は変化を受け続けるわけですが、ある所まで行くと力の釣り合いが取れた平衡状態になります。
それが、気圧傾度力とコリオリ力が釣り合った状態で、いわゆる地衡風と呼ばれるものになります。

偏西風というのは、もちろん常に何らか吹いているのだけれども、
あくまで平年値として(割りと横向きに近い形で)西向きに強い風が吹いている、という事象を指しています。すなわちこれは平衡状態を表したものです。逆に言えば、日々日々で見ていくと、真西風ではない南北成分を多く含む風も(当然ながら)吹いている、というわけです。

参考)https://irokata7.com/2018/06/15/r21chikoufuu1/

地衡風のイメージ
(出所:上記リンク記事)


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