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《分割版#4》ニンジャラクシー・ウォーズ【メッセージ・フロム・ジ・アース】

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◆#4◆

 BEEPBEEP。シュート・ガバナスの航法UNIXが警告音を発した。レーダーモードのモニタ画面に二つの光点が灯り、二機のハンドメイド宇宙戦闘機がワイヤーフレームで描き出される。「……来たか」呟く編隊長トルーパーの表情はフルフェイスメンポに隠され、判然としない。

「各機に告ぐ」編隊長は通信チャンネルを開いた。「本作戦の標的はあくまでも地球の小型船だ。ベイン・オブ・ガバナスの妨害には構うな。ブリーフィング通り散開して敵機を回避、各個判断で標的を……」『編隊長!』パイロットの一人が遮った。『敵機の動きがブリーフィングの想定外です!』「何?」

 モニタ上の光点はいまだ直線軌道のまま編隊との距離を詰めつつある。事前シミュレーションではとうに左右に分かれ、挟撃体勢に入っているタイミングだ。何かがおかしい……編隊長が訝しむ。その時。『今だ相棒!』「ガッテン! AAAARGH!」バルーがリュウの合図に応え、愛機のコックピットで吼えた。

 毛むくじゃらの腕がコンソール右端のレバーを引いた。愛機に備わった最もクレイジーな武器の起動レバーを! DOOOM! 円筒形の機首が本体から切り離され、イオン・エンジン噴射で加速する。その正体は巨大な陽子魚雷プロトン・トーピドーだ! 敵編隊の只中に突っ込み、近接起爆! KRA-TOOOOM!

 爆炎とエテルの衝撃波が球状に広がり、機体の群れを瞬時に飲み込んだ。『『『『『アバーッ!』』』』』第一波全滅!「狼狽えるな!」編隊長が叫ぶ。「たとえ最後の一機になろうとも、必ず標的を……」ZAPZAPZAP! リュウ機のパルスレーザー機銃が閃いた。KABOOOM!「アバーッ!」撃墜!

「ヤッター!」『浮かれンな! これからが本番だ!』銃座で小躍りするハヤトをリュウが叱咤した。ZOOM! ZOOMZOOOM! 爆炎を抜けて飛び出した第二波の生き残りが、即席の三機編隊を組んで小型船へ向かう。「させるか!」「WRAAAGH!」リュウ機とバルー機が反転した。

 ZAPZAP! KABOOM! KABOOOM! 二機撃墜! だが残る一機のパイロットは動じない。編隊長の最後の命令に則り、いかなる犠牲を払っても標的を撃破すべし。獲物を狙う宇宙スパイダーめいて、シュート・ガバナスのレーザーステーが開いた。電子ターゲットスコープが小型船を捉える!

 ピボッ。『ソウハ、イカナイ、ゾ』DDOOOM! トントは瞬時に着弾座標を予測演算、増設スラスターを最大出力で噴射した。「グワーッ!」激烈なGにハヤトが苦痛の叫びをあげる。リアベ号の武骨な船体は捻れた3D旋回軌道をとり、敵機の正面に割って入った。次の瞬間! BEEEAM!

 船体そのものを盾にして、リアベ号は敵機のビームを受け止めた。偏向シールドが激しい火花を散らす。ZIZZZZ!『ピガーッ! イタタタタ』トントの電子的悲鳴!『何やってるハヤト=サン! 撃て!』回線越しのリュウの叱声に、「アッハイ!」ハヤトは慌ててトリガーを引く。BRATATATA!

 タイミングずれの対空銃撃をやすやすと躱し、シュート・ガバナスは攻撃を続行した。BEEEEAM! リアベ号は再度の異常加速マニューバ防御! DDOOOM!「グワーッ!」『ピガーッ!』未熟な宇宙ニンジャ耐G力を振り絞り、ハヤトは必死に銃座を回転させた。「イヤーッ!」BRATATATATA! KABOOM! 撃墜!

 安堵する暇もなく次の三機編隊が接近する。BRATATATATA! KABOOM! ハヤトが墜とせたのは一機のみだ。残る二機がステー展開!『シンボウ、シロヨ』DOOMDDOOOM! みたびスラスター噴射! ナムサン! 不可視の巨人の手にシェイクされるが如き殺人的機動がハヤトを苛む!「グワーッ!」

 BEEAMBEEEEAM! 立て続けにビームを受け止めたリアベ号の船内計器が過負荷でスパーク!『ピガガガーッ!』「クソッ! イヤーッ!」ハヤトはトリガーを引き絞り、BRATATATA! 虚空に光弾を撒き散らし続けた。BRATATATATATA! KABOOM! KABOOOM! 連続撃墜!

「ゴボッ……!」血を咳き込むハヤト。Gのダメージが重い。一方リュウとバルーは第三波を相手に苦戦中だ。「アーッ畜生! 数が多すぎンだよ!」「AAAARGH!」逃れた六機がミサの船へ! ZAPZAPZAP! KABOOM! 追いすがるリュウが辛うじて一機を墜とす。「すまねえハヤト=サン! あとは頼む!」

「イ、イヤーッ!」BRATATATA! KABOOMKABOOOM! ハヤトの対空機銃が二機を爆発四散せしめた。残るは三機。だがトントの事前試算によれば、同時に防御できるのは二方向が限界だ。それ以上の高速機動は乗員の五体を引き裂き、無惨なネギトロたらしめるであろう! BRATATATATA! 機銃が吠える! 撃墜ならず!

「やれ、トント=サン!」ハヤトが叫んだ。「ミサ=サンを守るんだ!」『ソンナコト、シタラ、ハヤト、シヌ』「耐えてみせる! ゲンニンジャ・クランの名にかけて!」『……』ピボッ。コックピットのグリーンモニタに「><」のアスキーアートが灯った。DOOMDOOMDDOOOM!

 限界を超えた命懸けのマニューバ! だがそのさなか、KBAM! スラスターのひとつが過剰噴射に耐え兼ねて爆発した。バランスを失ったリアベ号はあらぬ方向にキリモミ回転!『ピガーッ!』「グワーッ!」ドクン……ハヤトの心臓が強く打ち、視界がスローモーションめいて鈍化した。

 BEAMBEEAM! BEEEAM! 回転する視界の中、シュート・ガバナス編隊から放たれた破壊ビームがミサの船に伸びてゆく。ナムサン! 彼女はこのまま宇宙の塵と消えてしまうのか? 地球との間に生まれかけた微かな絆は、ガバナスの暴威の前に無惨にも断ち切られる運命なのであろうか?

 否! その時ハヤトは確かに見た。ZOOOOOM……FIZZ! 小型船の姿が進行方向へ無限に引き延ばされ、放たれた矢のように消失する一瞬を! 寸前まで船が存在していた空間に、三条のビームがむなしく交差した。超光速ドライブがついに起動したのだ! ギリギリの瞬間で!

「よっしゃァ!」リュウが拳を突き上げた。彼の宇宙ニンジャ視力もまた、彼女の脱出を見届けていた。DOOOM! 大きく愛機の舵を切る。「こうなりゃ遠慮は無用だ! 思う存分暴れてやろうぜ!」「WRAHAHAHAHA!」バルーは呵々と笑いながら逆方向に加速、挟撃体勢へ! DOOOOM!

 ZAPZAP! ZAPZAPZAP! KABOOM! KABOOOM! 飢えた猛禽めいて、リュウ機とバルー機は次々と敵機を餌食にしていった。「ようし!」ハヤトがコックピットに駆け込み、操縦桿を握る。「僕もやるぞ! イヤーッ!」増設スラスターをパージして最大加速! ZZOOOOM!

 ZAPZAPZAPZAPZAPZAPZAP! リュウ機とバルー機のパルスレーザーが、リアベ号の船首機銃が、眩い光弾で宇宙空間を彩った。シュート・ガバナス編隊の生き残りは猛攻に晒され、爆発四散に次ぐ爆発四散! KABOOM! KABOOOM! KABOOOOM! KRA-TOOOOOM……!

 ……やがてエテルは凪ぎ、無限の大空間は静けさを取り戻した。「見ていてくれたかい、ミサ=サン」操縦席のハヤトが呟く。「地球に戻ったらみんなに伝えてくれ……これが僕らの戦いなんだ」ピボッ。直結状態のトントが、各機のグリーンモニタに「MISSIONCOMPLETE」の文字を送信した。

 三次元宇宙の人類に知覚できる超光速空間ハイパースペースの姿は、無限に続く青白い光のトンネルだ。DOOOM……その只中を小型船が巡航する。リアベ号のジェネレーターから充填された膨大なエネルギーを惜しみなく消費しながら、第1太陽系第三惑星・地球テラへ帰還すべく。

「ハヤト=サン、リュウ=サン、バルー=サン……命懸けで私を守ってくれたこと、決して忘れません」祈るように胸の前で指を組み、呟くミサの横顔は高次元の光に縁取られ、凛然と美しかった。「私は必ず戻ってきます。三つの惑星を助けるために、地球連盟の援軍を連れて」DDOOOOOM……。

「これからどこに向かう、リュウよ」リアべ号のコックピットでバルーが尋ねた。「アナリスの第5強制収容所だ」「ナンデ?」ピボッ。ハヤトの疑問に、トントが顔面をUNIX点滅させる。『アツメタ、ジョウホウ、ブンセキシタ、ケッカ。ガバナス二、サカラッタ、ヒトビト、クルシメラレテ、イル』

「カミジ=サンもそこにいるらしいぜ」「GRRRR……あの勇敢な男か」「勇敢っつうか危なっかしいンだよな、あの御仁は」リュウが苦笑混じりに言った。惑星アナリスのカミジは、旗揚げ間もない反ガバナス抵抗組織のリーダーである。「レジスタンスの頭目が真っ先にとっ捕まってりゃ世話ねェや」

「助けに行かなくちゃ!」「無論だ。カミジ=サンも俺達の数少ない味方だからな」リュウが号令する。「惑星アナリスに進路を取れ!」「アイサーッ!」副操縦席でペダルを踏み込むハヤト。ZZOOOOOOM……! リアベ号の武骨な船体は、イオン・エンジンの最大噴射で加速を開始した。

 リュウとハヤトが操縦桿を握り、その後ろでバルーが宇宙葉巻をくゆらせる。トントは頭部を回転させ、コックピットの片隅に据え付けられた装置を見やった。ミサの持参品、スペアの超光速通信機を。その装置が新たな地球からのメッセージを受信する日は、果たして来るのであろうか……。


【メッセージ・フロム・ジ・アース】終わり


マッシュアップ音源
「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」
第3話「地球の美しき使者」

「ニンジャスレイヤー」


セルフライナーノーツ

本エピソードのサブタイトル:映画「宇宙からのメッセージ」の海外用タイトル「Message from Space」より。

ジルーシアでの戦闘記録:映画の中盤で地球軍とガバナス軍が繰り広げた激闘をもとにしている。矢島信男特撮監督が「特撮人生後半の節目になった代表作」と自伝で語っているだけあって、アナログ特撮シーンの見ごたえはマジで凄い。機会があったら一度観てほしい。80's東映特撮ヒーローに受け継がれたミームが、それこそ山のようにある。
  映画とTVショウに直接のつながりはないけれど、本作ではガチの続編として扱うチャレンジをやっていきたい。ちなみに「惑星大要塞」とは、伊上勝=センセイが脚本を依頼された際の仮タイトルです。(諸般の事情で脚本はボツになったけど)

スターウォーズ用語:トントを「ドロイド」呼びしてるのをはじめとして、「宇宙戦闘機スターファイター」「超光速空間ハイパースペース」など、ちょいちょい取り入れてます。TV放送されたスターウォーズの字幕で「リフレクター・シールド」と表示されたら「『偏向ディフレクター』だろ!」とキレる程度には面倒なSWオタクなんでね!

画像生成AIさわりはじめました:大変たのしい。旧エピソードの挿絵も何点か差し替えてます。
 Midjourneyくんは絵心があるけど常識に縛られがちで、たとえば「宇宙空間を飛ぶ帆船」をオーダーしても頑なに水面を描き足してくるので困る。一方Bing Image Creatorくんは比較的素直で、突飛なモチーフを突飛なまま出力してくれる。なので、Bingくんの絵をMidjourneyくんに食わせてから同様のプロンプトで作画してもらうと、イメージ通りの仕上がりを得やすい……なんて事を書いても数か月後には環境が激変してしまうんだろうなあ。それを含めての「たのしい」ではあるが。

 いい感じで飛んでますね(ちょっと水面の名残がある)。

 これは同様の手法で「世界最大の未来派台形パワープラントが曇天の大都会にそびえ立つ」みたいなトンチキオーダーを出したら、思いのほかカッコよく仕上がったやつ。ガバナス宮殿のイメージ画像に採用しました。

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