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ニンジャラクシー・ウォーズ【メッセージ・フロム・ジ・アース】

◆はじめての方へ&総合目次◆

この宇宙に人類が生き続ける限り、決して忘れてはならない事がある。
本テキストは70'sスペースオペラニンジャ特撮TVショウ「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」とサイバーパンクニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」のマッシュアップ二次創作であり、(株)東映、石ノ森章太郎=センセイ、ボンド&モーゼズ=サン、ほんやくチーム、ダイハードテイルズとは実際無関係という事だ! ただしリスペクトはある!



(これまでのあらすじ)地球連盟第15太陽系の3惑星・シータ、アナリス、ベルダは、邪悪なるガバナス帝国によって無法にも征服された。ガバナス・ニンジャアーミーに父母と妹を殺され、自らも死の淵にあった青年ゲン・ハヤトは、謎の宇宙美女ソフィアに救われて九死に一生を得る。

 かつてガバナスから地球を救ったという伝説の宇宙船・リアベ号をソフィアから託されたハヤトは、宇宙ニンジャ・リュウ、宇宙猿人・バルー、万能ドロイド・トントと共にリアベ号に乗り込み、果てしない戦いの道を歩み出したのだった。ゲンニンジャ・クランの遺子として、第15太陽系に平和を取り戻すために。


◆#1◆

 第1惑星シータの屈曲した大地に、蒼い薄皮めいて貼り付く大気圏。その上方には漆黒の宇宙空間が果てしなく広がる。星々の中でひときわ輝く二つの光は月にあらず、第2惑星アナリスと第3惑星ベルダだ。ガバナス帝国の第1次侵攻作戦が完了した今、この星系は束の間の静けさを取り戻したかに見えた……だが。

 ZOOOM……小型宇宙船が一隻、シータ宙域を掠めるように飛び去った。極めて洗練されたそのフォルムは、辺境の植民星系にはおよそ似つかわしくない。ZOOM! ZOOOM! 帝国軍主力宇宙戦闘機スターファイター「シュート・ガバナス」の大編隊が、宇宙スパイダーの群れめいてその後を追う。

 BEEAM! BEEEAM! 六本の機銃ステーを放射状に広げ、シュート・ガバナスは次々と破壊ビームを発射した。『モシモシ! モシモシ!』小型船から呼びかける通信音声は若い女性のそれだ。『こちら地球連盟の偵察宇宙船! 国籍不明の戦闘機編隊に攻撃されています! 救援を……』

 KBAM! 蜘蛛の糸めいてうねる破壊ビームが偏向シールドを破り、小型船の外殻を一部吹き飛ばした。『ンアーッ!』SOSが悲鳴に転じたその時! DDOOOM! どこからか現れたハンドメイド戦闘機が二機、パルスレーザーを連射しながらシュート・ガバナス編隊に襲いかかった! ZAPZAP! ZAPZAPZAP!

 KABOOM! KABOOOM! 編隊の数機がたちまち炎に包まれた。『誰だか知らんがとっとと逃げな!』『ガバナスのクソ野郎共は俺達が引き受けた! WRAAAGH!』地球人の男と野獣めいた異星人類の声が、通信回線を震わせる。『感謝します!』小型船は煙を噴きながらシータ着陸コースへ!

「一丁やるか、相棒」「やれやれ、まだ慣熟飛行中だってのに」「そう言うなよ。あの地球の船、絶対美人が乗ってると見たぜ」「お前はすぐそれだ。GRRRR……」ジュー・ウェア風スーツの地球人リュウと宇宙猿人バルー……惑星シータの先住民族デーラ人のひとり……は、軽口を叩きながら散開した。DDOOOM!

『機影照合! ベイン・オブ・ガバナスの搭載機!』『何だと!?』『バカな!』『実在していたとは!』編隊の間に混乱した通信音声が飛び交う。数百年前に登録されたその忌まわしきコードネームは、かつて先代皇帝もろともガバナス帝国本星を壊滅せしめた一隻の戦闘宇宙船に与えられたものだ。

『とにかく迎撃せよ! 地球からの船を逃がしてはアバーッ!』KABOOM! 隊長機が爆発四散した。リュウ機とバルー機は宇宙暴走族めいた過剰な機動力で縦横無尽に飛び回り、シュート・ガバナスを容赦なく撃墜していった。ZAPZAP! ZAPZAPZAP! KABOOM! DOOMDOOOM! KABOOOM!

 一方その頃、彼らの母船・リアベ号は戦闘宙域の遥か後方で待機していた。「チエッ、僕だけ留守番か」操縦席のコンソールに肘をつき、ハヤト青年がふて腐れる。胸躍るビーム光も爆発も、この距離からでは微かな瞬きでしかない。ZOOOM……エテル越しに到達した衝撃波が船体をぐらつかせた。

「オットット」慌てて計器を調整するハヤトの背後で、万能ドロイド・トントが球形の頭部を回転させた。『ハヤク、センタイヲ、アンテイ、サセロ』「わかってるよ!」ハヤトは忙しなく手を動かしながら、前方の宇宙空間に目をやった。(……僕も早く、あの二人みたいなワザマエになりたいなあ)

「この有様じゃ生存者はゼロだな」「だが死体がないのは妙だぜ」リュウとバルーが狭い船内を検分する。ガバナス編隊を撃退したものの、惑星シータのとある湖畔に不時着した小型宇宙船は船体をひしゃげさせ、無残な姿を晒していた。……ガタン! 背後に物音!「誰だ!」リュウは反射的に身を翻した。

「アイエッ!?」ハヤトの喉元に、ジュッテめいた宇宙ニンジャ伸縮刀の切っ先が光る。「……チッ」リュウは舌打ちして刀身を引っ込め、衝動的に拳を振り上げた。「俺の後ろにノコノコ立つんじゃねェ、ガキが!」「よせ」その手首をバルーが掴んだ。「ヒヨッコ相手にムキになるなよ」「……」気まずい沈黙。

「で? どうかしたのか、ハヤト=サン」バルーは取りなすように尋ねた。「何かが……何かが来る」こめかみに指を当てて中空を睨むハヤト。「空からだ……アブナイ!」船外に飛び出した彼の目は異様な輝きを帯びていた。リュウとバルーが顔を見合わせる。「何だありゃア」「さあな。だがあの様子、只事じゃないぜ」

 ハヤトを追って走るリュウ達の頭上を、DOOOM! シュート・ガバナス三機編隊が通過、反転した。「クソッ、追手か!」BEEEAM! 機銃掃射が足元に砂煙をあげる。『ハッハハハハ!』隊長機の船外スピーカーからはニンジャアーミー副長・イーガーの哄笑!『死ね、リュウ=サン! 死ねーッ!』

 白昼の砂浜に隠れ場所などなし。リュウは走りながら状況判断した。「湖に飛び込めテメェら! イヤーッ!」「WRAAAGH!」「イ、イヤーッ!」SPLAAASH! 三人は湖水に身を躍らせ、その勢いのまま深く潜った。水面にぶつかって減衰した破壊ビームが、頭上でゴボゴボと蒸気をあげる。

 ZOOOOM……水越しの飛行音はやがて遠ざかっていった。「「「プハーッ!」」」一同はいまだ熱を持つ湖面に顔を出した。「GRRRR……ありがとよ、ハヤト=サン。命拾いしたぜ」「アー……ウン」正気に戻ったハヤトの記憶は曖昧だ。「イーガー=サンの詰めの甘さにも感謝せにゃな」リュウが笑った。

 ゴウンゴウンゴウン……無限の大空間を掻き分けるように、ニンジャアーミー旗艦「グラン・ガバナス」がシータ周辺宙域を航行する。第15太陽系への侵攻作戦が開始されたあの日、星系首都・アナリス中央都市を一瞬で焼き尽くしたその巨体は、占領下の住民にとって恐怖と圧政の象徴であった。

 広大なブリッジの艦長席に肘をつき、アーミー団長ニン・コーガーは沈思黙考していた。カシャッ、カシャッ、カシャッ。大型モニタが三つの惑星を映し出し、詳細データをスクロールさせる。「いい眺めだ」入室したイーガー副長が傍らに立った。「滅びるまでにどれだけ搾り取れるか、今から楽しみだぜ」

「彼奴らは始末したか」コーガーは振り向かずに尋ねた。「モチロン。地球連盟の船などベイビー・サブミッションさ」「ワシが聞いているのは、惑星ベルダでオヌシが取り逃がした宇宙ニンジャどもの事だ」コーガーの声が凄みを増す。「息の根を止めるまで戻って来るなと言うた筈だぞ!」

「99%確実に仕留めたぜ。なにせ俺みずから追撃に出たんだ」「バカメ! なぜそれを100%にしようとせぬ。私が完全主義者である事を知らぬお前でもあるまい!」「そりゃ只の心配性だよ、兄者」イーガーは肩を竦めた。「いまやこの星系は完全に俺達のものだ。たかだか三人の反逆者に何ができる?」

「オヌシ、どうやら心得違いをしておるな」コーガーの目がカタナめいて細まった。立ち昇るキリングオーラに、「アイエッ……」イーガーのニヤニヤ笑いが強張る。「この星系が帝国の版図となった以上、いかなる小さな抵抗も許してはならぬ。それが我等の責務であり、皇帝陛下のご意思なのだ!」

『左様。良い心掛けであるぞ、コーガー団長』ブリッジ壁面の黄金宇宙ドクロレリーフから嗄れた声が響き渡った。口内のスピーカーが、ガバナス帝国皇帝・ロクセイア13世の超光速通信音声を伝えているのだ。「ハハーッ!」コーガーはマントを翻してドゲザした。イーガーも慌てて跪く。

『余はこの星系に大変満足しておる』黄金ドクロの眼窩に埋め込まれたUNIXランプが点滅した。『惑星シータには豊富な労働力、惑星アナリスには生産能力、惑星ベルダには鉱物資源……理想的なバランスである。一片も余すところなく搾取し、我が帝国の糧とするがよい」

「お任せを!」コーガーが顔を上げた。「既に手練れのニンジャオフィサーを多数呼び寄せ、三惑星の要所に配置しております! 我らの行く手を阻むいかなる抵抗の芽も未然に摘み取れましょう!」「アナリス中央都市跡に、陛下に相応しい宮殿を建設する計画も進行中です」イーガーがすかさず追従する。

『それはチョージョー。完成を楽しみにしておるぞ。ムッハハハハハ!』「「ハハーッ!」」這いつくばる二人を見下ろす黄金ドクロ。その両眼から光が消えた。通信終了。「追従ばかりでアーミーのナンバー2が務まるか」コーガーが立ち上がりながら吐き捨てた。「政治力と言ってほしいね」イーガーは涼しい顔だ。

「オヌシはシータに戻り、改めて彼奴らの生死を確かめよ」「諜報部のクノーイ=サンにやらせるさ。あの女の方が適任だ」兄の追及を避けるように、イーガーはそそくさとブリッジを後にした。「……」コーガーは苦虫を噛み潰したような顔で艦長席に戻り、モニタを睨みつけた。画面には惑星シータの赤茶けた姿……。

 放棄された農園を鼻歌まじりに歩きながら、バルーはよく熟れた宇宙キウイを吟味してもぎ取った。主を失った収穫小屋のもとへ戻り、集めた果実を放置ドラム缶の上に広げる。そこには既に、宇宙ウイスキーボトルや宇宙ミネラルウォーターの缶、宇宙カボチャといった小屋の備蓄品が持ち出されていた。

「有難く頂戴するぜ」バルーは見知らぬ主に片手拝みした。焚火に屈み込み、グツグツと煮える宇宙ビーンズ鍋の調理を再開する。その隣で脂を滴らせる串焼き肉は、小型船を探す途中、現地のデーラ人からオスソワケされた宇宙バッファローだ。見返りを求めぬギフトエコノミーは彼らの大きな美徳である。

 小屋から持ち出した椅子に座り、リュウは宇宙ニンジャ伸縮刀を手巾で磨いていた。「リュウ=サン」思いつめた表情でハヤトが歩み寄る。「豆が煮えて来たぜ。いい匂いだなァ」リュウはとぼけた口調ではぐらかした。「肉にもありつけるたァ上等だ。ああ見えて味にはうるせえんだよな、バルーの奴はよ」

「どうしてリュウ=サンがそれを持ってるんだ」ハヤトの手には同型の伸縮刀が……ゲンニンジャ・クラン秘伝の武器にして父の形見が……握られていた。リュウはちらりと横目で見ただけで、視線を手元に戻した。「お前も手入れすンだよ。死にたくなけりゃな」「質問に答えてくれ!」

「お前いま幾つだ、ハヤト=サン」リュウが不意に尋ね返した。「エッ? 17だけど」「俺が17の頃は、もう随分人を殺してたよ。このカタナと我流のカラテでな」口元に自嘲的な笑いが浮かぶ。「お前はどうだ。ン?」「あるわけないだろ、そんな事」ハヤトが口ごもった。「ガバナスが来るまでは平和だったんだから」

「平和ねェ。表社会からはそう見えたのかい、このクソッタレな太陽系が」(((やめよ)))リュウのニューロンに響く声は、かつての師ゲン・シンのそれだ。(((左様にヨタモノめいた物言い、クランの品位にもとるわ)))(俺ァとうにクラン放逐の身だよ)(((破門した覚えはない。オヌシが勝手に出奔したのだ)))(……)

(そもそもテメェがインストラクションをサボったから、俺がアイツの面倒見るハメになってンだろうが)リュウは苦し紛れに言い返した。(((これからの宇宙ニンジャには航宙術が必要と思うた故、修行に先立ちパイロットスクールで学ばせたのだ。然る後に本格的なカラテを……)))(教える前にテメェが死んでりゃ世話ねェや!)

「アノ、リュウ=サン?」「ああ悪ィ」孤独な修業の副産物であるイマジナリー・センセイとの言い争いから、リュウは己を強いて意識を引き剥がした。「ンじゃ、ひとつ見せてもらおうか。クラン長の息子の素質ってヤツをよ」「二人とも、肉が焼けるまで腹を空かせて来な!」バルーが屈託なくオタマを掲げた。

「スリケンってのはな、何も速く投げるのが能じゃねェ。まずは正確に狙って、飛ばす。スピードを磨くのはその後だ……イヤーッ!」リュウの右手が無造作に閃く。岩の上に並べられた宇宙キウイのひとつを、ヤジリ状の宇宙スリケンが両断した。上半分は消し飛び、残る下半分の断面は瑞々しい。「見たろ。やってみな」

「エッ、それだけ?」手にしたスリケンと宇宙キウイを、ハヤトは交互に二度見した。(((なんたる粗雑なインストラクションか! 経験に乏しい者にはまずカラテ理論の基礎を……)))(そういうダルいのは好かねェ)ゲン・シンの叱声にもリュウはどこ吹く風だ。(経験不足なら、なおさら実践あるのみだぜ)

「イ……イヤーッ!」おぼつかなげに投擲されたハヤトのスリケンは標的を遠く外れ、KILLIN! 岩に跳ね返って鋭い音をたてた。「アイエッ!?」岩陰から何者かの悲鳴!「誰だ!」「待て待て」ハヤトを片手で制し、リュウが呼びかけた。「ゆっくり姿を見せな。妙な真似をしなけりゃ手荒には出ねェ」

「……ハイ」黒髪の女性が立ち上がった。背後に転がる球状の半壊メカニックは、地球製の一人乗り脱出ポッドと思われた。銀色の宇宙ボディスーツが流麗なプロポーションを包み、陽光を反射してきらめく。「ヒューッ」リュウは口笛を吹きながら、取り出しかけた伸縮刀をさりげなく懐に収めた。

「ドーモ、はじめまして。地球連盟の惑星偵察員・ミサです」美女がオジギした。「アノ、もしかして、貴方達は先程私を助けてくれた……」「ドーモ、リュウです!」リュウは食い気味にアイサツを返した。「アンタがあの船に乗ってたのか! いやァ、助けた甲斐が……じゃねェ、無事で良かったぜ!」

「アリガトゴザイマス」ミサは再び頭を下げた。「私はある使命を果たすために第2惑星アナリスを目指していたんです」「俺達が連れてってやるよ。何だい、その使命ッてのは」「途絶した超光速ホットラインの守護者に、地球からのメッセージを伝える事です……ゲン・シン=サンという宇宙ニンジャに」

「「……」」二人は顔を見合わせた。(リュウ=サン)(ヤだよ、お前が言えよ)背中を押されたハヤトがオジギした。「ド、ドーモ。ゲン・ハヤトです」しばし言い淀み、意を決して口を開く。「オヤジは……ゲン・シンはガバナスに殺されました。今は息子の僕がゲンニンジャ・クランの名代です」「エッ?」

◆#2◆

「バカな! 地球連盟は僕らを見捨てるって言うのか!」ハヤトは椅子を蹴倒して立ち上がった。「僕らの祖先は地球からの移民じゃないか! 同じ血が流れてるんだ! なのに……!」「確かに納得いかねェな」収穫小屋のテーブルに肘をつき、宇宙バッファロー最後の一切れを齧りながら、リュウが言った。

「何百年だか前に地球軍はガバナスに勝ってンだろ? いまさら何ビビってンだ」「……これを見て下さい」ミサはUNIXタブレットを卓上に置き、異星の荒野に広がる要塞都市の映像を映し出した。「これは地球連邦……つまり今の地球連盟の最高機密。当時のガバナス帝国首都、惑星ジルーシア大要塞での戦闘記録です」

 ノイズ混じりの星空を航行するのは、地球文明圏の守護神・テラグローリー級宇宙艦隊。艦載機テラ・スイフトが編隊を組み、ZAPZAPZAP! 地上のガバナス要塞に機銃掃射を浴びせかける。地上のレーザー砲台が応戦、上空を爆炎で埋め尽くす。BRATATATATA! KABOOM! KABOOOM!

 ピボッ。トントが横からマニピュレータを伸ばし、画面の一部を拡大した。『コノ、ヒトタチハ、ダレデス、カ』要塞周囲の荒野を、数千の群衆が逃げ惑っている。素朴な宇宙民族衣装の老若男女。明らかに非戦闘員だ。「ジルーシアの先住民よ。ガバナスから母星を取り戻すため、抵抗を続けていたの。でも……」

 カメラが切り替わり、DOOOM! テラグローリーの一艦が艦首を切り離した。「マジか」リュウの顔色が変わった。巨大なヤジリめいた艦首はイオン・エンジン噴射で加速、対空砲台群に着弾した。その瞬間、閃光! KRA-TOOOOM! ドーム状の爆炎が衝撃波と共に広がり、地上を薙ぎ払う!

「リュウ=サン、これは……」「ハイパー・ニューク・ミサイルだ」青ざめるハヤトに、リュウが苦い顔で答えた。「まさか、実戦でブッ放したアホがいたとはな」爆発に巻き込まれたジルーシア人は一人として……いや、塵ひとつとして残ってはいまい。「酷いもんだ」バルーが唸るように言った。

「見て」ハヤトが画面を指差した。ZMZMZM……爆心地の程近く、瓦礫に埋まる地面が一直線に割れ、ゆっくりと左右に開いてゆく。その下から現れた大空間は、シェルターを兼ねた地下格納庫だった。ゴウンゴウンゴウン……カンオケを二つ並べたようなシルエットの巨大戦艦が浮上する。

 DOOMDOOOM! グラン・ガバナス同型艦の双胴カタパルトから、戦闘機とミサイルの大群が撃ち出された。BEAMBEEAM! シュート・ガバナスの破壊ビームがテラ・スイフトを次々と撃墜、フォーメーションに穴を開ける。それを掻い潜り、ミサイルは地球艦隊の本体へ! DOOOOM!

 KABOOMKABOOOM! 迫り来るミサイルを艦砲射撃で防ぎきれず、直撃を受けたテラグローリーの一艦がぐらりと傾いた。それを待っていたかのように、ハイパー・ニュークの爆発を免れた対空監視塔群が一斉にプラズマ光を灯す。その輝きはみるみる膨れ上がり……ZAAAAP! 緋色の稲妻と化して迸った。

 ZZAAAAAAP! 稲妻が交錯し、テラグローリーの巨体を左右から貫いた。KRA-TOOOOM! 爆発四散! 幾条もの破壊エネルギーはなおも荒れ狂い、ジルーシアの暗い空をのたうち、地球連邦の誇る宇宙艦隊を無慈悲に破壊してゆく! ZAAAP! ZAAAAP! KA-BOOOM! KA-BOOOOM!

 最後のテラグローリーが燃えながら地面に激突した瞬間、艦首のハイパー・ニュークが圧壊、暴発した。KRA-TOOOOOOM……! 「これが真実の歴史です」再び現出するジゴクめいた光景に、ミサは目を伏せた。「罪なきジルーシアの人々を犠牲にしながら、地球連邦艦隊はガバナス帝国に敗北したのです」

「この戦いの後、ガバナスはさらなる凶行に出ました」ミサは新たな記録映像を再生した。DOOOM……! ジルーシアの地下サイロから離床する巨大な天体間巡航ミサイルISCМ。その向かう先は、地球の隣に浮かぶ白く美しい衛星だった。遠ざかる噴射炎が衛星の中心へと消えてゆき、そして……!

 ZGGGGGGTOOOOOOOOM! KRA-TOOOOOOOOM!KABOOOOOOOOOOM! DOOOOOM! DOOOOOOOM! DOOOOOOOOOOOOOOM!

 衛星が火を噴き、木っ端微塵に砕け散るさまを最後に、映像は終了した。「「「……」」」『ピガッ』銀河帝国の暴虐に、ハヤト達は言葉を失った。「当時のガバナス皇帝・ロクセイア12世は、地球の衛星“ルナ”を破壊して威を示し、無条件降伏を迫ったのです。返答の猶予はわずか3日」

「その後、地球がどのようにしてこの危機を脱し、ガバナス帝国を退けたのか……詳しい記録は残されていません。少数の民間人や退役軍人が、ジルーシアのレジスタンスに協力したとの不確定情報もありますが……」「“リアベの勇士”だ」「え?」ハヤトの呟きにミサが訝しんだ。

「聖なるリアベの実に導かれてガバナスと戦った8人の勇士だよ!」身を乗り出すハヤト。「アノ……ハヤト=サン、その話は私も知ってるわ。でもあれは単なる民間伝承で」「違うんだ! 僕らはいま、本当にリアベ号に乗って……グワーッ!」リュウの逞しい腕が伸び、背後からヘッドロックめいてハヤトを締め上げた。

(ヤメロ! 話がややこしくなるだろうが!)(ホントの事だろ!)小声でもみ合う二人をよそに、バルーが口を開いた。「つまりアンタは、遠路はるばる俺達に引導を渡しに来たんだな」声音に怒りが籠る。「先程お伝えした通りです」ミサは苦しげに答えた。「ガバナスの侵攻に対し、最高議会は不干渉の方針を採択しました」

『ニンゲン、カッテダ。ジブン、タチノ、ツゴウデ、オダテタリ、ミステタリ、スル』トントの顔面LEDプレートに「 \ / 」のアスキー文字が灯る。「GRRRR……俺達の運命もこれっきりのようだな」「死ぬまでガバナスの食い物にされるのか!」「待て待て、テメェら」悲嘆する仲間達をリュウが制した。

「そうあっさり結論を出しなさんな。地球のお偉方が腰抜けなら、そのケツを引っぱたいてやりゃいいンだよ。なァ?」リュウはミサに笑ってみせた。「でも、私には帰る手段が……」『トント、キミノ、フネ、シュウリ、シテ、アゲル』「本当に?」『カエッタラ、チキュウノ、ミンナヲ、セットク、シテ、ホシイ』

「せいぜいガバナスに見つからんよう祈るんだな」バルーが鼻を鳴らした。「途中までリアベ号で護衛しようよ」とハヤト。「ごめんだね。話を聞いてみりゃ、地球人はとんだ薄情者だ。そんな奴らの仲間を助ける義理はねえ」「ミサ=サンは別だよ! たった一人で危険を冒して、オヤジに会いに来てくれたんだ!」

「確かに容易なこっちゃねェ」リュウが同意した。「超光速航法のエネルギー消費量は、宇宙船の質量がデカいほど天文学的に膨れ上がる。だからってあんなチンケな船でここまで来るなんざ、手漕ぎボートで大海を渡るようなモンだぜ。おおかた地球連盟が予算をケチったんだろうが……」

「僕らの手で、無事にミサ=サンを帰してあげよう?」「GRRRR……だがなあ」「聞いてやれよ。ご贔屓のニュービーの頼みだぜ」「オネガイシマス」殊勝に頭を下げるミサが決め手となった。「……ARRRGH畜生! わかったよ!」バルーは宇宙ウイスキーの瓶を掴んで立ち上がった。「だが今日はもう寝るぞ、俺は!」

「行った事もない故郷でも、見捨てられると寂しいな……」

 ウシミツ・アワーの星空を見上げながら、ハヤトはひとりごちた。今頃ミサは収穫小屋で眠りについていることだろう。彼女に対するガバナスの追撃を恐れたハヤトは、自ら寝ずの番を買って出たのだった。バルーは宇宙ウイスキーを呷って、とうに小屋の別室で高鼾だ。

「……ト…サン……ハヤト=サン……」幻聴めいた微かな声が響いた。ハヤトの不可思議な時空間知覚力は、周囲の時間の流れが鈍りつつあるのを……ニューロン加速ではなく本来の意味で……感じ取った。眼前に光が凝り、何者かの実体を形作ってゆく。「諦めては駄目です、ゲン・ハヤト=サン……」

「貴女は!」ハヤトは瞠目した。完全に静止した時の中、ストレートブロンドの宇宙美女が純白の薄衣を纏い、彼の前に立っていた。「ドーモ。ソフィアです」アルカイックな微笑でアイサツする美女の頭上には、地球とガバナスいずれの文明圏にも属さぬ神秘的な宇宙帆船が、白光を放ちながら停泊していた。

 ガバナスが侵攻を開始したあの日。果敢にニンジャアーミーに立ち向かい、命を落としかけたハヤトに救いの手を差し伸べた者こそ、この宇宙美女ソフィアであった。「諦めてはいけません」ソフィアは繰り返した。「今は敵わずとも、小さな力を一つずつ集めるのです。ガバナスに打ち勝つ未来を確定させるために」

「教えて下さい! 貴女は何者ですか! なぜ僕らに力を貸してくれるんですか!」彼女に駆け寄ろうとするハヤトの肩を、「オイ」何者かが掴んだ。「放してくれ!」「オイ、ハヤト=サン!……チッ」もがくハヤトに舌打ちして、「イヤーッ!」相手はアイキドーめいて彼の身体を投げ飛ばした。「グワーッ!」

 地上に落ちたハヤトは上半身を起こし、自分を投げた相手を見た。「リュウ=サン? ナンデ?」時間の流れがいつの間にか戻っている。「目が覚めたか。立てよ」リュウは呆れ顔で手を貸した。「見張り番を代わってやろうと来てみりゃ、一人で何ゴチャゴチャ言ってやがる。ハッパとかやるクチか、テメェ?」

「違うよ! ホラ、そこにソフィア=サンが……」ハヤトが指差す先、彼女の姿は既にない。「いたんだよ確かに!」「バッカヤロ」リュウはハヤトの頭を張った。「寝ぼけてんじゃねェぞ。テメェがボンヤリしてたせいでミサ=サンに何かあってみろ、タダじゃおかねえ……ン?」

 リュウは上空の光に気づいて星空を見上げ、あんぐりと口を開けた。半透明のセイルを輝かせながら、宇宙帆船がしめやかに大気圏外へ飛び去りつつあった。「……何だありゃ」「ソフィア=サンの船さ」ハヤトが屈託なく答える。「バカ言え! あんな宇宙船がどこの星にあンだよ。おとぎ話じゃねえンだぞ!」だが現実だ。

 去り行く船をミサが目撃したならば、それがジルーシアの独自技術で建造された光子帆船の一隻であると、あるいは気付いたかもしれぬ。「……アレに乗ってンのか、例の宇宙大美人が」「奇麗な船だろ?」「まァな」リュウは肩を竦めた。「いつか俺もお目にかかりてえモンだな、そのソフィア=サンとやらによ」

「テメェは少し寝とけ。見張りは俺がやる」「待って」ハヤトはリュウを遮り、こめかみに指を当てた。「誰か来る……!」「何?」リュウが素早く周囲に目を配る。「フーン……お前、やっぱ勘がいいよ。さすがはゲンニンジャ・クランの跡継ぎってトコだ」軽口を叩きつつ、彼は状況判断した。

「行け、ハヤト=サン! ミサ=サンを守れ!」「ハイ!」ハヤトが小屋へと駆け出す。リュウは地面に耳をつけ、接近する匍匐前進音を数えた。「イヤーッ!」後方回転ジャンプ! 木の枝の上に立った彼の両手には既にヒカリ・ダマが握られている。「イヤーッ! イヤーッ!」連続投擲!

 KBAMKBAM! 炸裂する閃光が、匍匐前進中のニンジャトルーパー小隊を照らし出した。「発見されました!」「やむを得ん、突撃!」小隊長トルーパーが立ち上がり号令!「させるかよクソが!」リュウは一飛びで距離を縮め、「イヤーッ!」着地しざまに伸縮刀で斬り下ろす!「アバーッ!」正中線両断!

「イヤーッ! イヤーッ!」「「「グワーッ!」」」リュウの伸縮刀が次々と緑色の血飛沫を上げる中、斬撃を逃れたトルーパーの一群が小屋へ向かった。「地球からの使者を殺せ!」「ムーブムーブムーブ!」だが彼らが突入せんとした瞬間、CLAAASH! 木製のドアが吹き飛んだ。「AAAAGH!」酒臭い咆哮!

「やかましくて眠れやせんぞ! WRAAAGH!」「「グワーッ!」」毛むくじゃらの手が先頭トルーパー二人の頭部を鷲掴みにした。「死ねーッ!」赤ら顔のバルーは酔いと怒りにまかせてトルーパーの頭をカチ合わせ、フルフェイスメンポもろとも砕き潰した。CRAAASH!「「アバーッ!」」爆発四散!

「ミサ=サン!」バルーの背後をすり抜けてハヤトが小屋に飛び込むのと、トルーパーが床板を跳ね上げて侵入するのは、ほぼ同時だった。「「イヤーッ!」」斬り結ぶ両者! だがハヤトの身のこなしは精彩を欠く。修行の端緒を開いたばかりの彼にとって、狭い室内でミサを守りながらのイクサは荷が重いのだ。

「イヤーッ!」「イ、イヤーッ!」鍔迫り合う二人を尻目に、パープルラメ装束の女宇宙ニンジャが蛇めいた動きで床下からエントリーした。「アイエッ!?」「ドーモ、はじめまして。ニンジャアーミー諜報部のクノーイです」怯えるミサに、彼女は嗜虐的な笑みを浮かべた。トルーパーと戦闘中のハヤトには手が出せぬ!

「イヤーッ!」「ンアーッ!」当て身で気絶させたミサの身体を担ぎ上げ、「ゴキゲンヨ、ニュービーの坊や」クノーイはするりと姿を消した。「ミサ=サン!……クソッ!」ハヤトの怒りに呼応して、伸縮刀が超振動の唸りをあげた。チュイイイン! トルーパーの軍用ニンジャソードを火花と共に削り取る!

 守護すべき対象を失ったことで、皮肉にも彼のカラテは生来のポテンシャルを取り戻したのだ。KRACK! ソードが半分に折れて天井に突き立った瞬間、伸縮刀が翻った。「イヤーッ!」トルーパーを袈裟懸けに超振動両断!「アバーッ!」ハヤトはミサを追って床下へ飛び込んだ!「イヤーッ!」


◆C◆ テーテテーテテテー ◆M◆

◆C◆ テーテテーテテテー ◆M◆


◆#3◆


 暗い洞窟の奥で、クノーイは意識のないミサの身体を横たえた。息遣いは規則正しい。生命活動に支障なし。「仕事が済むまでは生かしといてあげるわ、地球のお嬢さん」彼女は懐からスライムめいた細胞塊を取り出し、膜状に広げてミサの顔に被せた。クナイの切っ先で、鼻に小さな呼吸孔を開ける。

 女宇宙ニンジャの両手が複雑かつ神秘的な「カ」「オ」「ウ」「ツ」「シ」のニンジャサインを組んだ。その動作に呼応して、スライムの表面に論理演算めいた複雑な凹凸パターンが走る……その活動が治まるのを見届け、クノーイは静かにスライムを剥がし、己の顔に貼り付けた。

 顔面をスライムで覆ったまま、彼女の両手が逆再生めいて動いた。「シ」「ツ」「ウ」「オ」「カ」。凹凸パターンの遷移が巻き戻り、黒く死滅した細胞がボロボロと崩れ落ちる。その下から現れたのは……おお、ナムサン!「フェイス・オフ・ジツ」クノーイはミサの顔で邪悪な笑みを浮かべた。

「オーイ、ミサ=サン! 聞こえるか!」「WRAAAGH! どこだハヤト=サン! 返事しろーッ!」渓流のほとりを下りながら、リュウとバルーは両手をメガホンにして呼び続けた。太陽は既に中天近い。「ッたく……ガバナスを追っ払ったと思ったら、今度は肝心のお嬢さんが行方不明かよ」

「心配するな。ハヤト=サンがついてる」「随分アイツに肩入れするじゃねェか」リュウは相棒を横目で睨んだ。「真の宇宙の男に肩入れするのは当然だ。むしろお前が冷淡に過ぎる」「うるせェ」舌打ち混じりにリュウが答えた時、「タスケテ!」岩陰からひらひらと細い手が覗いた。「私はここよ!」

「ミサ=サン!」「怪我はないか?」二人は岩にもたれて座るミサに駆け寄った。「ガバナスが襲って来た時、怖くてここまで逃げてきたの。でも足を挫いてしまって」「GRRR……世話の焼ける地球のお嬢さんだ」バルーは喉を鳴らして笑った。「ハヤト=サンは一緒じゃなかったのかい」

「ハヤト=サン? 知らないわ」ミサの口調は奇妙にそっけない。「フーン……ま、そのうち帰ってくるだろ」リュウは屈んで背中を向けた。「俺達も一旦リアベ号に戻ろうぜ」「アリガト」ミサに化けたクノーイは内心ほくそ笑み、おぶさった背中に豊満な胸を押し当てた。「……」リュウは立ち上がり、歩き出した。

「ハヤト=サンが一人で逃げる筈がねえ。絶対何かあったぜ」バルーはリュウに歩調を合わせながら言った。「だな」リュウがニヤリと笑う。「ヤバい時には逃げるどころか逆に首を突っ込んでいく奴だ。世話が焼けるぜ」「誰が世話が焼けるって?」大岩の陰からハヤトが姿を現した。

「なんだお前、そんなトコに隠れてたのか」「隠れてたのと違うぜ」答えるハヤトは得意げだ。「彼女を探してたんだ。出て来て」「ハイ」岩陰から現れたのは……宇宙ボディスーツに身を包んだ黒髪の美女!「アイエッ!? どういうこったい」バルーが目を白黒させて、二人のミサを交互に見やった。

「リュウ=サン! そいつはクノーイ=サンだ!」背負われた方のミサにハヤトが指を突きつけた瞬間、「「イヤーッ!」」二者は同時に動いた。隠しクナイに喉をかき切られるより早く、リュウはミサの腕を掴み、イポン背負いで投げ上げた。取り落とされたクナイを掴んで投げ返す!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」ミサに化けたクノーイは空中でキリモミ回避。クナイが身体を掠め、フェイス・オフ・ジツの副産物である疑似ボディスーツを切り裂いた。偽りの顔と衣装はたちまち雲散霧消し、着地したクノーイの姿は既に本来のものに戻っていた。パープルラメの宇宙ニンジャ装束が陽光を反射してきらめく。

「ドーモ、クノーイです」「ドーモ、リュウです。案の定だったな」二人の宇宙ニンジャはアイサツを交わし、カラテを構えて対峙した。(してやられたわね、あの坊やに)クノーイが内心で毒づく。ジツを維持するにはオリジナルの顔の持ち主を生かしておかねばならず、その脆弱性を突かれた形だ。

「リュウ=サン!」「来るな!」駆け寄ろうとするハヤトをリュウが制した。「ニュービーの加勢なんざクソの役にも立たねェ。そこで大人しく見てろ!」「そんな!」「ここは聞き分けな」バルーがハヤトの肩を掴んだ。「リュウが本気でやりあおうって相手だ。俺達じゃ足手纏いにしかならん」

「ニンジャアーミーの諜報部長じきじきにイーガー副長の尻拭いか。ご苦労なこった」リュウはクノーイを挑発した。「ケツモチ手当は幾らだい……」「知ったような口を利くんじゃないわよ、辺境星系の野良犬風情が」「その野良犬がテメェを噛み殺すかもしれんぜ?」両者の間に殺気が満ちる。

「……イヤーッ!」先にトビゲリで仕掛けたのはクノーイ! それをクロスガードで受け止めざま、「イヤーッ!」リュウは逞しい腕を跳ね上げた。膂力! 空中高く放り上げられたクノーイは「イヤーッ!」再度のキリモミ回転で姿勢制御した。「イヤーッ!」リュウが垂直ジャンプで追撃!

「イヤーッ!……何ッ?」真上から斬り下ろす伸縮刀とクナイが交錯した瞬間、リュウは目を見開いた。身体を丸めたクノーイは重い一撃に叩き落とされる代わりに、その場でジャイロめいて高速回転した。凡百の宇宙ニンジャには真似できぬ、早さと軽さに特化したカラテ体術だ。

 クノーイは巧みに自身の回転軸を捻り、下から掬い上げるようなクナイ斬撃に転じた。「イヤーッ!」「ヌウーッ!」防御するリュウの身体が僅かに浮き上がる。「上等だ、相手になるぜ! イヤーッ!」再び回転するクノーイ!「イヤーッ!」クナイを受けるリュウ!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」空中で斬り結ぶ両者の落下速度が鈍ってゆく。リュウの攻撃が生み出す運動エネルギーをクノーイが回転変換、反撃するたびに上向きの反作用が生じ、惑星シータの重力を相殺しているのだ。ゴウランガ! なんたる永久運動めいたカラテ循環機構か!

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」続けざまに攻め立てるリュウ。だがその表情には焦りの色があった。クノーイは受けた攻撃を体術でいなし、そのままリュウに返しているだけだ。故に消耗もダメージもなし。パンチ・アゲンスト・ザ・ノーレンの宇宙コトワザの如く!

「アッハハハ!」「クソが! イヤーッ!」クノーイの高笑いがリュウの不用意な一撃を誘った。ギャリリイイン! 渾身の運動エネルギーを余さず受け取ったクノーイの身体は極度高速回転。その速度を乗せ、「イヤーッ!」隠し持ったもう一本のクナイを投擲する。地上のミサめがけて!

「しまッ……」ドクン! 宇宙ニンジャアドレナリンがリュウの血管を駆け巡り、ニューロンが異常加速した。スローモーションの視界の中、レーザービームめいて一直線に、クナイはミサの眉間に飛んでゆく。だがその刹那!「イイイヤァァァーッ!」ハヤトが色付きの風となって割り込んだ!

「何ッ」「イヤーッ!」クノーイが狼狽した瞬間を逃さず、リュウは頭上から踵落としを叩き込んだ。「ンアーッ!」KRAAASH! 重い一撃を捌きそこね、彼女は地上に激突した。ウケミで衝撃を殺してもなおダメージは重篤。「オノレ……!」血混じりの唾を吐き捨てる。着地したリュウとの間合いは宇宙タタミ4枚。

 クノーイが投擲したクナイは、クロスガードしたハヤトの腕に突き立っていた。伝い落ちた血が岩の上に滴り、「クッ……」端正な顔が苦痛に歪む。「やってくれたなァ、クノーイ=サン」両目をカタナめいて細め、リュウが呟いた。「どうやらお前さん、今のうちに殺ッといた方が良さそうだ」膨れ上がる殺気!

「……フン、野良犬どころかとんだ狂犬ね。付き合いきれないわ」内心の焦りを隠し、クノーイは計算高く状況判断した。「イヤーッ!」KBAM! 足元にケムリダマを投げつけ、白煙とともに姿を消す。ヒキアゲ・プロトコル。撤退の作法を遵守した宇宙ニンジャは99.99%追跡不能となる……脅威は去った。

「ゴメンナサイ、私のために」「人として当然の事をしたまでさ」腕に包帯を巻かれながら、ハヤトはミサに笑いかけた。(カーッ! ニュービーのガキが吐くセリフかよアレが!)(生来の善性が発露したまでだ。邪推するな)(テメェこそ贔屓が過ぎるンだよ!)リュウとバルーがコソコソと言い争う。

「リュウ=サン?」「アー、いや、こっちの話」リュウはミサに肩を竦めてごまかした。「まあアレだ、その当然ってのがなかなかできねェんだよな、人間って奴はよ」「ハイ」ミサは俯いた。「本来ならば地球連盟は全力で第15太陽系を支援すべきです……最高議会の決定は誤りだと、私は思います」

「皆さん」顔を上げたミサの目には決断的な光が宿っていた。「改めてお約束します……地球に帰還したら、私はこの星系の現状を包み隠さず報告します。そして最高議会に訴えかけ、援軍と共に戻って来ます」「本当に?」ハヤトが顔を輝かせた。「ハイ、必ず!」

「そうと決まりゃ、何としても無事に地球にお帰り願わんとな」「現金だなあ、バルー=サンは」「GRRRR……細かい事言うなよ」呆れ顔のハヤトに身を縮めるバルー。一同は顔を見合わせて笑った。「これで地球にも、ひとり味方が増えたってワケだ」リュウがハヤトの肩に手を置いた。

 ZOOOM……ミサの小型宇宙船が、惑星シータの重力圏を脱した。

 出発の準備にはゆうに数週間を要した。トントが演算した宇宙船修復プランに則り、バルーとハヤトが資材集めに奔走する。ミサは寝る間を惜しんでトントの修復作業をサポート。宇宙船の周辺では、リュウが再度のガバナス襲撃に備え、昼夜を分かたず警護の目を光らせる……ハードな日々であった。

 ミサの船に随行するリアべ号は、既に両翼の係留アームを展開していた。KBAM! KBAM! エクスプロシブ・ボルトが炸裂、アーム先端から小型宇宙戦闘機を撃ち出す。「ぬかるなよ相棒!」「ガッテン!」リュウとバルーは愛機を加速させた。「そっちもいいな、ハヤト=サン!」通信機に呼びかけるリュウ。

「オッケー!」リアベ号のツインレーザー銃座でシートベルトを締めながら、ハヤトが答えた。『マカセ、トケ』トントの電子音声の出処はコックピットのスピーカー。自身のボディを電磁固定して、船体と完全直結中だ。各所に増設された急ごしらえのスラスターもまた、彼の制御下にある。

 ブガーブガーブガー! 船内にレッドアラートが鳴り響いた。メインコンソールのグリーンモニタがレーダー表示に切り替わり、整然と並ぶ数十個の光点を映し出す。その一つ一つが小さな「*」のアスキーアート……すなわち、シュート・ガバナスの宇宙スパイダーめいた機体を表しているのだ。

『オイ、なんだこの大編隊は! 話が違うぞポンコツ!』『シミュレーション、ヨリ、カズガ、オオイ。ナゼダ』『それだけ敵さんもマジって事だろ』リュウは通信回線越しにバルーとトントをなだめながら、操縦桿を握り直した。「とにかくプラン通りやるしかねェ。ミサ=サンには指一本触れさせンなよ」

「皆さん……ご協力に感謝します」小型船の操縦席でミサが言った。彼女は既に超光速ドライブの起動シーケンスを走らせている。だが、パーツ不足で修復が不完全なドライブが超光速空間ハイパースペースへ突入するには、いくばくかの時間が必要だった。その間はシールドも使用不能。一発でも被弾したら命はない。

『僕達がついてる。心配しないで!』ハヤトの通信音声がミサを励ました。『コノヤロ、美味しいトコ取りやがって』リュウが混ぜ返す。『いいか、ハヤト=サン。俺とバルーは一機でも多く敵を墜とす。そッから先はテメェの仕事だ』「ハイ!」『死んでも持ち堪えろよ!』「ハイ!」ハヤトは銃座で身を引き締めた。

『サクセン、カイシ、5ビョウ、マエ』トントが各機にカウントダウンを同期させた。『4』『3』『2』『1』……リュウ、バルー、ハヤトが緊張の面持ちでモニタの数字を見つめる。『0』!「イイイヤアアーーーッ!」「WRAAAAAGH!」リュウとバルーは叫びながら、愛機をトップスピードに叩き込んだ! DDOOOOM!

◆#4◆

 BEEPBEEP。シュート・ガバナスの航法UNIXが警告音を発した。レーダーモードのモニタ画面に二つの光点が灯り、二機のハンドメイド宇宙戦闘機がワイヤーフレームで描き出される。「……来たか」呟く編隊長トルーパーの表情はフルフェイスメンポに隠され、判然としない。

「各機に告ぐ」編隊長は通信チャンネルを開いた。「本作戦の標的はあくまでも地球の小型船だ。ベイン・オブ・ガバナスの妨害には構うな。ブリーフィング通り散開して敵機を回避、各個判断で標的を……」『編隊長!』パイロットの一人が遮った。『敵機の動きがブリーフィングの想定外です!』「何?」

 モニタ上の光点はいまだ直線軌道のまま編隊との距離を詰めつつある。事前シミュレーションではとうに左右に分かれ、挟撃体勢に入っているタイミングだ。何かがおかしい……編隊長が訝しむ。その時。『今だ相棒!』「ガッテン! AAAARGH!」バルーがリュウの合図に応え、愛機のコックピットで吼えた。

 毛むくじゃらの腕がコンソール右端のレバーを引いた。愛機に備わった最もクレイジーな武器の起動レバーを! DOOOM! 円筒形の機首が本体から切り離され、イオン・エンジン噴射で加速する。その正体は巨大な陽子魚雷プロトン・トーピドーだ! 敵編隊の只中に突っ込み、近接起爆! KRA-TOOOOM!

 爆炎とエテルの衝撃波が球状に広がり、機体の群れを瞬時に飲み込んだ。『『『『『アバーッ!』』』』』第一波全滅!「狼狽えるな!」編隊長が叫ぶ。「たとえ最後の一機になろうとも、必ず標的を……」ZAPZAPZAP! リュウ機のパルスレーザー機銃が閃いた。KABOOOM!「アバーッ!」撃墜!

「ヤッター!」『浮かれンな! これからが本番だ!』銃座で小躍りするハヤトをリュウが叱咤した。ZOOM! ZOOMZOOOM! 爆炎を抜けて飛び出した第二波の生き残りが、即席の三機編隊を組んで小型船へ向かう。「させるか!」「WRAAAGH!」リュウ機とバルー機が反転した。

 ZAPZAP! KABOOM! KABOOOM! 二機撃墜! だが残る一機のパイロットは動じない。編隊長の最後の命令に則り、いかなる犠牲を払っても標的を撃破すべし。獲物を狙う宇宙スパイダーめいて、シュート・ガバナスのレーザーステーが開いた。電子ターゲットスコープが小型船を捉える!

 ピボッ。『ソウハ、イカナイ、ゾ』DDOOOM! トントは瞬時に着弾座標を予測演算、増設スラスターを最大出力で噴射した。「グワーッ!」激烈なGにハヤトが苦痛の叫びをあげる。リアベ号の武骨な船体は捻れた3D旋回軌道をとり、敵機の正面に割って入った。次の瞬間! BEEEAM!

 船体そのものを盾にして、リアベ号は敵機のビームを受け止めた。偏向シールドが激しい火花を散らす。ZIZZZZ!『ピガーッ! イタタタタ』トントの電子的悲鳴!『何やってるハヤト=サン! 撃て!』回線越しのリュウの叱声に、「アッハイ!」ハヤトは慌ててトリガーを引く。BRATATATA!

 タイミングずれの対空銃撃をやすやすと躱し、シュート・ガバナスは攻撃を続行した。BEEEEAM! リアベ号は再度の異常加速マニューバ防御! DDOOOM!「グワーッ!」『ピガーッ!』未熟な宇宙ニンジャ耐G力を振り絞り、ハヤトは必死に銃座を回転させた。「イヤーッ!」BRATATATATA! KABOOM! 撃墜!

 安堵する暇もなく次の三機編隊が接近する。BRATATATATA! KABOOM! ハヤトが墜とせたのは一機のみだ。残る二機がステー展開!『シンボウ、シロヨ』DOOMDDOOOM! みたびスラスター噴射! ナムサン! 不可視の巨人の手にシェイクされるが如き殺人的機動がハヤトを苛む!「グワーッ!」

 BEEAMBEEEEAM! 立て続けにビームを受け止めたリアベ号の船内計器が過負荷でスパーク!『ピガガガーッ!』「クソッ! イヤーッ!」ハヤトはトリガーを引き絞り、BRATATATA! 虚空に光弾を撒き散らし続けた。BRATATATATATA! KABOOM! KABOOOM! 連続撃墜!

「ゴボッ……!」血を咳き込むハヤト。Gのダメージが重い。一方リュウとバルーは第三波を相手に苦戦中だ。「アーッ畜生! 数が多すぎンだよ!」「AAAARGH!」逃れた六機がミサの船へ! ZAPZAPZAP! KABOOM! 追いすがるリュウが辛うじて一機を墜とす。「すまねえハヤト=サン! あとは頼む!」

「イ、イヤーッ!」BRATATATA! KABOOMKABOOOM! ハヤトの対空機銃が二機を爆発四散せしめた。残るは三機。だがトントの事前試算によれば、同時に防御できるのは二方向が限界だ。それ以上の高速機動は乗員の五体を引き裂き、無惨なネギトロたらしめるであろう! BRATATATATA! 機銃が吠える! 撃墜ならず!

「やれ、トント=サン!」ハヤトが叫んだ。「ミサ=サンを守るんだ!」『ソンナコト、シタラ、ハヤト、シヌ』「耐えてみせる! ゲンニンジャ・クランの名にかけて!」『……』ピボッ。コックピットのグリーンモニタに「><」のアスキーアートが灯った。DOOMDOOMDDOOOM!

 限界を超えた命懸けのマニューバ! だがそのさなか、KBAM! スラスターのひとつが過剰噴射に耐え兼ねて爆発した。バランスを失ったリアベ号はあらぬ方向にキリモミ回転!『ピガーッ!』「グワーッ!」ドクン……ハヤトの心臓が強く打ち、視界がスローモーションめいて鈍化した。

 BEAMBEEAM! BEEEAM! 回転する視界の中、シュート・ガバナス編隊から放たれた破壊ビームがミサの船に伸びてゆく。ナムサン! 彼女はこのまま宇宙の塵と消えてしまうのか? 地球との間に生まれかけた微かな絆は、ガバナスの暴威の前に無惨にも断ち切られる運命なのであろうか?

 否! その時ハヤトは確かに見た。ZOOOOOM……FIZZ! 小型船の姿が進行方向へ無限に引き延ばされ、放たれた矢のように消失する一瞬を! 寸前まで船が存在していた空間に、三条のビームがむなしく交差した。超光速ドライブがついに起動したのだ! ギリギリの瞬間で!

「よっしゃァ!」リュウが拳を突き上げた。彼の宇宙ニンジャ視力もまた、彼女の脱出を見届けていた。DOOOM! 大きく愛機の舵を切る。「こうなりゃ遠慮は無用だ! 思う存分暴れてやろうぜ!」「WRAHAHAHAHA!」バルーは呵々と笑いながら逆方向に加速、挟撃体勢へ! DOOOOM!

 ZAPZAP! ZAPZAPZAP! KABOOM! KABOOOM! 飢えた猛禽めいて、リュウ機とバルー機は次々と敵機を餌食にしていった。「ようし!」ハヤトがコックピットに駆け込み、操縦桿を握る。「僕もやるぞ! イヤーッ!」増設スラスターをパージして最大加速! ZZOOOOM!

 ZAPZAPZAPZAPZAPZAPZAP! リュウ機とバルー機のパルスレーザーが、リアベ号の船首機銃が、眩い光弾で宇宙空間を彩った。シュート・ガバナス編隊の生き残りは猛攻に晒され、爆発四散に次ぐ爆発四散! KABOOM! KABOOOM! KABOOOOM! KRA-TOOOOOM……!

 ……やがてエテルは凪ぎ、無限の大空間は静けさを取り戻した。「見ていてくれたかい、ミサ=サン」操縦席のハヤトが呟く。「地球に戻ったらみんなに伝えてくれ……これが僕らの戦いなんだ」ピボッ。直結状態のトントが、各機のグリーンモニタに「MISSIONCOMPLETE」の文字を送信した。

 三次元宇宙の人類に知覚できる超光速空間ハイパースペースの姿は、無限に続く青白い光のトンネルだ。DOOOM……その只中を小型船が巡航する。リアベ号のジェネレーターから充填された膨大なエネルギーを惜しみなく消費しながら、第1太陽系第三惑星・地球テラへ帰還すべく。

「ハヤト=サン、リュウ=サン、バルー=サン……命懸けで私を守ってくれたこと、決して忘れません」祈るように胸の前で指を組み、呟くミサの横顔は高次元の光に縁取られ、凛然と美しかった。「私は必ず戻ってきます。三つの惑星を助けるために、地球連盟の援軍を連れて」DDOOOOOM……。

「これからどこに向かう、リュウよ」リアべ号のコックピットでバルーが尋ねた。「アナリスの第5強制収容所だ」「ナンデ?」ピボッ。ハヤトの疑問に、トントが顔面をUNIX点滅させる。『アツメタ、ジョウホウ、ブンセキシタ、ケッカ。ガバナス二、サカラッタ、ヒトビト、クルシメラレテ、イル』

「カミジ=サンもそこにいるらしいぜ」「GRRRR……あの勇敢な男か」「勇敢っつうか危なっかしいンだよな、あの御仁は」リュウが苦笑混じりに言った。惑星アナリスのカミジは、旗揚げ間もない反ガバナス抵抗組織のリーダーである。「レジスタンスの頭目が真っ先にとっ捕まってりゃ世話ねェや」

「助けに行かなくちゃ!」「無論だ。カミジ=サンも俺達の数少ない味方だからな」リュウが号令する。「惑星アナリスに進路を取れ!」「アイサーッ!」副操縦席でペダルを踏み込むハヤト。ZZOOOOOOM……! リアベ号の武骨な船体は、イオン・エンジンの最大噴射で加速を開始した。

 リュウとハヤトが操縦桿を握り、その後ろでバルーが宇宙葉巻をくゆらせる。トントは頭部を回転させ、コックピットの片隅に据え付けられた装置を見やった。ミサの持参品、スペアの超光速通信機を。その装置が新たな地球からのメッセージを受信する日は、果たして来るのであろうか……。


【メッセージ・フロム・ジ・アース】終わり


マッシュアップ音源
「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」
第3話「地球の美しき使者」

「ニンジャスレイヤー」


セルフライナーノーツ

本エピソードのサブタイトル:映画「宇宙からのメッセージ」の海外用タイトル「Message from Space」より。

ジルーシアでの戦闘記録:映画の中盤で地球軍とガバナス軍が繰り広げた激闘をもとにしている。矢島信男特撮監督が「特撮人生後半の節目になった代表作」と自伝で語っているだけあって、アナログ特撮シーンの見ごたえはマジで凄い。機会があったら一度観てほしい。80's東映特撮ヒーローに受け継がれたミームが、それこそ山のようにある。
  映画とTVショウに直接のつながりはないけれど、本作ではガチの続編として扱うチャレンジをやっていきたい。ちなみに「惑星大要塞」とは、伊上勝=センセイが脚本を依頼された際の仮タイトルです。(諸般の事情で脚本はボツになったけど)

スターウォーズ用語:トントを「ドロイド」呼びしてるのをはじめとして、「宇宙戦闘機スターファイター」「超光速空間ハイパースペース」など、ちょいちょい取り入れてます。TV放送されたスターウォーズの字幕で「リフレクター・シールド」と表示されたら「『偏向ディフレクター』だろ!」とキレる程度には面倒なSWオタクなんでね!

画像生成AIさわりはじめました:大変たのしい。旧エピソードの挿絵も何点か差し替えてます。
 Midjourneyくんは絵心があるけど常識に縛られがちで、たとえば「宇宙空間を飛ぶ帆船」をオーダーしても頑なに水面を描き足してくるので困る。一方Bing Image Creatorくんは比較的素直で、突飛なモチーフを突飛なまま出力してくれる。なので、Bingくんの絵をMidjourneyくんに食わせてから同様のプロンプトで作画してもらうと、イメージ通りの仕上がりを得やすい……なんて事を書いても数か月後には環境が激変してしまうんだろうなあ。それを含めての「たのしい」ではあるが。

 いい感じで飛んでますね(ちょっと水面の名残がある)。

 これは同様の手法で「世界最大の未来派台形パワープラントが曇天の大都会にそびえ立つ」みたいなトンチキオーダーを出したら、思いのほかカッコよく仕上がったやつ。ガバナス宮殿のイメージ画像に採用しました。


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