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ビジコピマガジンのまえがき

このマガジンは、あるWebサービスのプロダクトマネジャーである筆者が世にあるサービスやその機能のビジネスモデルを分析することで、今すぐにでもそのアイディアを真似して新しいサービスを始められるほど、具体的なビジネスの姿を明らかにしようと試みている読み物です。

現場では役に立たない「ビジネスモデル」

近年はWebサービスも多様化するユーザーのニーズに応えるべく複雑化してきており、大企業や老舗企業はもちろんのこと、スタートアップにおいてもシンプルな1つの収益源・1つのサービスで成功するという例は減ってきているように思います。

世の中にはそんな中で成功を収めたビジネスモデルについて解説した本やネット記事が溢れていますが、そうした事例を実際のビジネスの現場で当てはめようとしても、肝心な要素が書かれていなかったり、書かれている事業の範囲が広すぎたりして、全く役に立たないように感じます。

筆者はその原因が、サービス1つの境界線すら曖昧になってきており、どこまでを1つのビジネスモデルとして記述すべきなのかが分からなくなっていたり、注目したい革新的なシステムや収益構造にフォーカスするあまり、その裏付けとなっている堅牢な仕組みや革新的なシステムの副作用として生まれた制約に目が行き届いていないからではないかと考えています。

1つのビジネスモデルに書くべき範囲

ビジネスモデルとはあるサービスの事業戦略と収益構造のことを指しますが、これはあくまでも解釈なので、視点によって異なる見方がありうるものです。

Business Model Canvasはビジネスモデルを記述する統一的な形式として注目を集め、自社や競合のビジネスモデルを記述するワークショップがそこかしこで催されましたが、書き手によって注目する点やビジネスをとらえる粒度が異なるので、書かれたキャンバス同士を横並びで比較することは困難でした。

そこで、筆者はBusiness Model Canvasを用いつつも、1枚のキャンバスに記述する1つのビジネスモデルは以下の条件を必要十分に満たすものにするよう注意したいと考えています:

コピー可能: 記載する価値 (Value Propositions) の提供に必要な要素が全て揃っていること
マネタイズ可能: 継続的な収益源 (Revenue Streams)が存在すること
必要最小限: 価値を提供し収益化するため以外の要素は記述しないこと

筆者がこのルールを敷くのは、Business Model Canvasの各マスを埋めるだけでなくこの制約を満たしているかを確認することで、1つのキャンバスで注目したい事業の全体を俯瞰して見れるようになり、独りよがりにならない分析に繋がると考えているからです。

例えば、注目したい価値を記載しても、コストや収益源を記載しなければその事業が継続可能かどうかはわかりませんし、チャネルや顧客セグメントを記載しなければその価値がどれほどの大きさの市場に届けられているのかもわかりません。

また、逆にサービスの全要素を網羅しようと多くの価値やその他の項目を記載しすぎるとノイズが増えて全体を見渡しにくくなる上、先述の通り他のビジネスモデルとの比較が困難になってしまいます。

そのため、基本的に筆者は1つのサービスに対して複数のキャンバスを作成します。

他人のサービスをコピーすべきか

このマガジンでは、コピーできるほどにビジネスモデルを解説することを目指していますので、本当にコピーできるほど成長しているビジネスの姿が明らかになると、その事業を自分でもやりたいと思うかもしれません。

筆者は、他人のサービスをコピーすること自体が悪いことだとは思っていません。
メルカリはフリルと同じ顧客層を中心に同じモデルで始まったし、PayPayは親会社のソフトバンクグループの投資先でもあるAlipayを明らかに意識しており、noteもTumblerやMediumを引き合いに出されて全く影響がないと言い切ることはできないでしょう。
しかし、では、メルカリのフリマ市場に賭ける思いがフリルより劣っていたかといえば、むしろメルカリの方が勝っていたからこそより適切なマーケティングとプロダクトで市場を席巻できたのではないでしょうか。

コピーでも、本当に重要だと思う価値を継続可能な形でより効率的に提供すればオリジナル以上あるいはオリジナルと異なる方向に発展し、マーケットをプラスサムゲームにすることも可能なのだと筆者は考えます。
ただし、そこに相手の真似だけではない、対等な存在としての気概がなければ、マーケットのおこぼれを頂戴するだけの成長し得ないサービスとなりうるのではないかとも同時に思います。

このマガジンで記載するビジネスモデルが、新しいプラスサムゲームの火種となるサービスを始めようと考えている方や、既存サービスに新たな価値を追加しようと考えている方の一助となれば幸いです。

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