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花音痴の菖蒲田

城址公園の菖蒲田が見ごろを迎えている。とはいえ、いずれがアヤメだカキツバタだ、ショウブの行方はどこだとずっと言っている花音痴(覚える気がないともいう)なので、季節の薫りだけをいただいて通り過ぎる。だいたいアヤメはアヤメ科、ショウブはサトイモ科、それでいて漢字で書けばどちらも菖蒲でいいとは何事か。カキツバタはアヤメ科なれど漢字にすれば「杜若」。ややこしい。シーボルトや牧野富太郎、南方熊楠の観察眼の欠片でもあればもっと世界は広がったのにと思わなくもない。

菖蒲はその香りや薬効から浴用に用いられてきたほか、魔除けとして軒先に吊るすなど暮らしに深くかかわってきた。中国では古来より形が刀に似ていることから男子にとって縁起のよい植物とされ、日本でも奈良時代から端午の節句に使われ始めた。武士の世になると「しょうぶ」の音から「尚武」という字が当てられるようになった(とWikipediaにはある)。なるほどオトコ社会のアイコンのひとつでもあったと。いずれにせよこんなスッと美しい花をオトコだけのものにするのはもったいないと、オトコの私は思う。話はそれるが、「漢」をことさら強調するオトコはどうも苦手だ。この字を大書したバックプリントのTシャツとかを着ている人とはおそらくシュミが合わない。

あやめサミットなるものが茨城県潮来市をはじめ全国13の自治体で構成されていて、佐倉市もその一員らしい(市の花は花菖蒲)。以前開催されていた「菖蒲まつり」は今年も再開されないようだ。そんなことに関係なく、毎年こうして人々の眼を楽しませてくれるのも、土壌の管理、種付け、肥料などこまめな手入れがあってこそ。そんな人の姿に会うために、花音痴は時折シーズンオフに足を運ぶ。


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