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成田山で旬の鰻をいただく。

あまりの好天に誘われて、成田山公園に行く。となり町に近い感覚のはずだが、成田山に足を運ぶことは滅多にない。ジェフ・ベックを聞きながら30分で駐車場に到着。金800円也。うーん。もっとお得なところがあったのだが、あまりに久々なのですっかり失念していた。

境内の手前に円形の広場があり、広場をぐるりと長屋が囲み、いずれも肩を寄せ合うように土産物屋や食事処などが入っている。数十軒あるだろうか。平日なので半分はシャッターを下ろしたまま。一角を占い屋が占めていて一大勢力となっている。外で何人か待っている店もある。

広々とした境内には重要文化財の御堂などが立ち並ぶ。あっけらかんと開放的なその空間はおよそ厳かとはほど遠いというのが相変わらずの感想。寄り道をせず奥にある公園に向かう。

成田山公園は自然の起伏を生かして、四季折々の植物を楽しめる広大な公園。「仏教の生きとし生けるものすべての生命を尊ぶ」思想が組み入れられているらしいが、不信心者ゆえよくわからない。とりあえず適度なアップダウンと樹々たちに自分の生命は喜んではいるようだ。

公園の奥、池の端にある大正年間創業という料理屋に入り、鰻重を注文。天然物は冬眠前のよく太った今が旬なのだ。成田といえばうなぎで、参道には何件もの店があり味を競う。「蒸すのに30分ほどお時間がかかります」との事。しばしの後「増量サービス中です」と言って出されたそれは、なるほど四隅の端までうなぎがびっしり。ふんわりとした柔らかな焼き上がりは、こういう店でなければ味わえない。少しだけ贅沢。

うなぎといえば忘れられないのが、もう20年以上も前、秩父への道すがら埼玉県の小川町で食べた「女郎うなぎ」。何といっていいか、食べているときは淡白でどうにも物足りなさを感じていたのだが、終わりに近づいた時に口の中にあふれてきた幸福感といったら。こんなだましならいくらでも受けさせていただきたい。ちなみにその名の由来は吉原の花魁の悲話から。かって割烹旅館だったという店の雰囲気と相まって、ベスト・オブ・鰻重に認定したい。この小川町には、秩父の帰途にも寄って「女郎うなぎ」の店の裏手にあるこれまた老舗の店で「忠七めし」というのをいただいた。こちらはいわゆる高級茶漬けともいうべきものなのだが、これまた茶漬け侮るなかれの旨さで忘れられない味の一つ。

24節季の「大雪」に当たるこの日、さすがの千葉の紅葉ももう終わり。
冬紅葉 寺に詣でず 鰻食う



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