懐かしい色紙が出てきた。
サグラダ・ファミリア的整理を延々としていると、思いがけないものが発掘されてしばしば作業が中断する。押し入れなんかその代表で、何を放り込んだかわからない紙袋や段ボール箱を時限装置の有無などに気をつけながら片っ端から見ていると、その元凶が必ず出てくる。
この前は、初めて転職をするときに職場の人にいただいた色紙が出てきた。5年足らずの在職期間で、申し訳ないくらい立派な送別会を開いていただいたのを覚えている。200人足らずの社員の小さな会社で、4枚にわたって100人位の人がメッセージを寄せてくれた。プラザ合意から2年「この味がいいね」と君がいっちゃって、塀の外でも懲りない面々がこれから飛ばすバブルをせっせと膨らませている頃。色紙を見ても老いも若きも「おお、がんばれよ」な空気がただよっている。
仕事さえちゃんとしていれば、しかつめらしいことは一切言われない部署で編集や広告・企画のイロハを教えてもらった。上司は顔色を窺うものではなく、教えやアドバイスを請うあたりまえの関係があった。
色紙は真面目不真面目とりあえず、さまざまなコメントが書いてある。ほとんど会話を交わしたことがない人も、もちろんいる。読んでも「誰だっけ」という人はそれこそたくさん。それでも20代にもらった寄せ書きなんかを見ていると懐かしいやら、気恥ずかしいやら。
おめでとう、いい本をつくってください。これでカボチャコンビも解消だな
申し訳ない、広告ばっかりの世界に行ってしまいました。カボチャコンビだったんだ、そんな彼(先輩)も近年大病をした。生きてりゃいいさ。
新天地、果して天国か地獄か。どっちにしても頑張ろう。
なんだか「虎に翼」を思い出す。自分で選べば天国も地獄もそんなに変わらないさ。
人生に嵐が吹きおこったとき、我々が心にとめておくべきことは
たとえそれがどんなに激しくても雲のうしろにはいつも太陽が輝いて
いるということである。
うん。
私も「豚の角煮」が好きです。もっと銭があったら毎日でも食べたい。
そんなこと言ったのか。
あれはいつの日のことだったかしら。雪の降った寒い夜、私たちとうとう新宿♨にお泊まりしちゃったわネ。翌朝、通勤途上でスベって転んだのもいい思い出。私、けして泣いたりなんかしない。
誤解を避けると、この人は部署の先輩でしかも男です(避けてない?)。いえ、本当に何もなかったんです。って二人じゃないでしょ?
若いうちは苦労をしたほうがいいなんて冗談、まにうけちゃいけませんよ。その苦労が若いうちだけで終わりゃいいけど、ずっと続くんだよな、これが。だから、できるだけ楽な道、楽な方向へと流れたほうが賢明さ。他人事は他人事だから、他人のことはずっと後で考えればいいの。とにかく苦労しようなんて絶対に考えないようにね。
何やら経験を踏まえた深い言葉のようだが、楽をするというのもなかなか難しいことなのです。
ヘイの外に出ても懲りずにガンバッテネ!
やはりあそこは塀の中だったか。彼とは仕事を通じてまた顔を合わせました。
エディトリアルはともすればネクラになりがちです。あんまりネアカでもバカにされるのがオチだし。その辺のバランスが難しい。何でもいいから一芸に秀でたスペシャリストになること。
そんなバランス考えてたら疲れますわ。
時間の経過を心地良いノリとして感じる為には、自分でシチュエーションを設定するのがイチバンですよね。対価なんて結局付加価値で、良いセッション環境を積極的に求めたアナタのプロ意識がウラヤマシイです。
転職したかったからしただけ、ほんと軽いノリなんですよ。
などなど。なかでも多かったのは、この在職5年足らずに何キロも太ってしまったこと。入社時のスリムさは今いずこという体型に、何人もの人が「痩せろ」「間食をやめろ」と寄せている。そして色紙の似顔絵は・・・(顔バレ?)
似ていないと断固主張したいが、妻はイメージがあるという。こんな緊張感のない格好で原稿用紙に向かったりレイアウトをしていたのか。煙草の灰で商売道具を焦がしたことはあるが、おへそを出してはいなかったと思う。服装は、夏はこんなもんだった。
こうして整理はいよいよ年越しの気配が濃厚となっていく。
見出しのイラストは「ひろの」さんの作品をお借りしました。ありがとうございます。若い頃は「どこかに着くさ」と先も考えずに気軽に船を漕ぎ出したりするのです。