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戸隠五社参拝を目指す。はたして?

妙高に宿をとり、今回の旅のメインである戸隠へ向かう。クルマで約50分。高校1年の夏休み、学校行事で同じ北信五岳の飯綱山のハイキングに行き戸隠のどこかでキャンプをしたはずなのだが、どのあたりか全く思い出せない。戸隠神社は標高約1300m前後に点在する大小5つの社からなる信州屈指のパワースポット(と言ったはいいが、この言葉あまりに濫用されすぎてどうにも安っぽい)なのだ。地主神である九頭竜大神のほかは、各社とも天岩戸の神話にまつわる神が主祭神になっている。

まずは点在する五社の中央ともいえる場所にある中社に向かう。あまり丈夫とは言えない妻はこの日心なしか体調もよく、五社すべてをコンプリートして御朱印をもらうと張り切っている。階段を下りると樹齢800年の三本杉があるのだが、登りの労を惜しんで上から眺めるだけにする。慢性心不全の身には完投を目指すことが大事なのだ。高地の風が心地いい。

戸隠神社中社。
中社の御神木。

中社から長野方面へ向かって下る道は、その昔院坊が軒を連ねていたらしく今は多くが土産物屋や蕎麦屋が並びなかなか賑やか。ゆっくり散策したいが五社参拝を果たすことが優先事項なのでスルー。ほどなくして火之御子神社という小さな社に着く。ここの祭神は天鈿女命(あめのうずめのみこと)。あの天岩戸の前で踊った女神だ。

火之御子神社。
火之御子神社の夫婦杉。樹齢は約500年。

火之御子神社から下ること数分、宝光社という神社に出る。行く手に300段近い階段がそびえ立ち早くもコンプリートに暗雲が立ち込めるが、女坂なる迂回路を発見、ゆっくりのんびり登頂する。

宝光社の階段。燈篭を左に折れると女坂がある。
宝光社。祭神が女性と子どもの守り神なので「子引き龍」の彫刻が施されている。

残すは戸隠神社のシンボルともいえる奥社(隣接する九頭竜社と合わせて五社になる)のみ。下った道を再び上り駐車場にクルマをとめる。連休前の平日にもかかわらず大勢の人が来ている。オンシーズンはどうなるんだ。

大鳥居の前に立つと、先が見通せないほどまっすぐな参道が山に向かって伸びている。案内図を見ると、奥社まで徒歩40分の上り坂。途中にある随神門から先は徐々に急登になるらしいが、大丈夫か?か弱い心臓。

とにかくまっすぐ。
歩いてみるとなだらかなれどひたすらの上り坂。

ようやく随神門にたどり着く。ガイドブックにも紹介されているランドマーク的な建物なのでみな足を止めて思い思いに写真をとっている。この先の行程を考えて逡巡していると、ツレから有無を言わせず降板の指令が出た。確かに足は大丈夫といっているが心臓が駄々をこね始めている。残す9回は私がマウンドに向かうからベンチで待つようにと妻が言う。いやいやあなたもそんな丈夫じゃないでしょうと言うものの、テキはアドレナリンが出まくっているのであとへは引かない。リハビリの先生に教えられた歩き方を守りながら両手にストックを持っててっぺんに向かった。

随神門。ここから徐々に急登になる。
見事な杉並木。

妻を待つ間、清々しい空気を吸いながら門の脇のベンチで行き交う人の話を聞いている。なかなか楽しい。こういうところに来てもたいていの人が職場の愚痴や日々の暮らしのあれこれを話している。これは神々たちもなかなかに飽きないのではないか。

小一時間はたっただろうか、妻がへとへとになりながらも元気に下りてきた。さかんに「もう引き返そうかと思った。あなたには絶対無理!」という。なんだか悔しいが言い返すこともできない。大鳥居を出たところでとにかく休憩。熊笹アイスを頬張る。生き返るようだ。旅先で必ずといっていいほどソフトクリームを食べるようになったのは、学生時代の清里のブームなんかがあったせいか。かれこれ40年食べ続けているわけだ。

熊笹ソフト。昼食は定番・戸隠そばをおいしくいただいたのだが、一緒に頼んだ「そば団子」がそれはそれは美味かったことを追記しておきます。三連の串団子で、表はパリッと中は、フワッとしてあっという間に食べてしまい写真もないのでありました。
五社をコンプリートして御朱印をもらうといただけるしおり。妻のリリーフをあおいだので、この目で見ていない奥社と九頭龍社の写真は載せずに。

もとより修験の道とははるか遠くにいる不信心ものなので、最後に腹が満たされれば「ああ来てよかった」になるものの、こういうところは「清心」という言葉を思い出させてくれる貴重な場所であることに違いはない。だからこそ得体の知れないものに取り込まれてきた過去の歴史を繰り返してほしくはない。

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