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トーベ・ヤンソン あけぼの子どもの森公園

秩父への小旅行の途中に立ち寄った飯能市の公園。トーベ・ヤンソンの許可を得て彼女の世界観を取り入れたという話題のスポット。広すぎない園内は散策にふらっと立ち寄るのにちょうどいい。なにしろ無料なので気持ちもフラット。初夏の心地よい風が渡る中をのんびりと見て歩く。

奥に見えるのがトーベ・ヤンソンに関する資料が展示されている「森の家」。青い建物は「カフェプイスト」、「プイスト」とはフィンランド語で「公園」の意味。
「カフェプイスト」の窓。陽差しや角度で印象が変わる。
「カフェプイスト」の店内に貼られているポスターの一つ。このポスターはエリック・ブルーンというアーチストの1958年の作品。青と白を基調にフィンランドの観光をPRしている。

子どもたちが真っ先に向う「きのこの家」に、もちろんいい歳をしたオトナも入っていく。暖炉のある一階の広間から階段を上る。フィンランドの暮らしを彷彿とさせながら異世界に潜り込んだような不思議な空間。そこかしこに小さな隠し部屋(?)がある。一体何に使うのか。隅々まで見ていると何だか楽しくなってくる。1週間位は住んでみたい(それ以上はきっと飽きる)。もうすぐ65歳、大丈夫まだまだ子どもだ。

一階の広間には大きな暖炉がある。
階下を見下ろす。
そっと置かれたミニチュアの家具。小人が住んでいる?
地下のドアに、いた。
「きのこの家」から新緑を見る。
ミイの言葉。茨木のり子の「自分の感性くらい」を思い出してしまった。室内のそこかしこにこういうキャラクターの言葉などが置かれている。「そうそう」と思ったり「そうかな」と思ったり。着ぐるみのおもてなしでその世界感に触れられるわけじゃない。

「きのこの家」を中心にいくつかの個性的な建物があるほかは、アトラクションなどは何もない。自由に、気ままに時間をすごす。芝生に寝転がったり草を食んだり(は、だめだな)。コスパだタイパだとセコセコと気にすることはない。近頃はスペパ(しかし汚い言葉だな)なんてことまで言い出して「クオリティ・オブ・ライフ」の大事な構成要素らしい。なるほど生活の質はパフォーマンスの奴隷になってこそ保たれる、と。

煩わしさからはしばし離れて。
「危険!ヘビがいるぞ」カモシカなどは普通に見られるが近づかなければ危害はない。

丘の中腹にも遊歩道があり、森林浴や見晴らしを楽しめるのだがこの日は大雨などで一部危険な箇所があって立ち入り禁止。ぐるっと一回りして最初に昼食で入った「カフェプイスト」でアイスをほおばる。

ところでトーベ・ヤンソンという人の人生もなかなか興味深い。自らのセクシャリティの問題、女性アーチストの先駆けとしての苦難。概して資料館などは地味なものだが、ここでも彼女の資料が展示されている「森の家」に足を運ぶ人はほとんどいない。訪れる人の多くがリピーターだったとしてものひっそり閑ぶりだ。おかげで誰にも邪魔されることなく時間を過ごせたのだけれど。

美術工芸家の谷口千代さんによる紙粘土の作品。ムーミン童話の挿絵に基づいた作品を数多く手がけ高い評価を得ている。「森の家」ではその中から季節に合った作品が展示されている。
これから、お宿へ向います。

ふらっと立ち寄り3時間も過ごしてしまった。「何も足さない。何も引かない」シングルモルトの味わいの公園(飲まないけれど)。


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