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「軽音楽をあなたに」

高校・大学とこの番組なくして音楽とのつきあいは語れない。1977年に始まったNHKFMの「軽音楽をあなたに」は、まさにエアチェックのためにある番組だった。16時10分から18時までというそこそこに長い時間、1~数組のアーチストに絞る特集スタイル。アーチストについてと曲目紹介のほか、余計なMCは極力排する。なによりも素晴らしいのは、5~6曲をまとめて流すことで、90分のカセットテープへの録音もスムーズに行える。B面への移行も、MCの間にスルスルと早送りして備えればよい。聴いている間に曲目を書き、ラベルにタイトルを入れる。ぼーっとしてMCまで入ってしまった時にはあわてて巻き戻す。間に合わず次の1曲目が始まってしまい泣けない、という事も時には起こる。

ウィッシュボーン・アッシュや、レーナード・スキナード、ドゥービー・ブラザーズ、ムーディー・ブルース、10㏄・・・・・・カネのない食べ盛り、いや何でも聴きたい盛りの若者にとって、耳を肥やすのにこんなありがたい番組はなかった。身銭を切って手に入れられる音源は極めて限定されるのだ。ひょっとしてこの「軽音楽をあなたに」、いま朝ドラで話題の「カムカム英語」ならぬマイ「カムカムポップス」だったのではないか。ちなみに「ひるの歌謡曲」という番組もあり、こちらは45分と尺が短いものの同様の作りで、ニューミュージック系のシンガーのエアチェックに重宝した。

ほどなくレンタルレコード全盛となり、エアチェックをすることも減っていった。心頭滅却し(何を大袈裟な)1、2の3でボタンを押すあの高揚感を、40年後の指先はまだ憶えている。


見出しのイラストは「杉江慎介」さんの作品をお借りしました。


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