ニッポンの夏、かき氷の夏。
白地に赤く、一言「氷」の文字。意匠のバリエーションはあるもののほぼ完成された夏のイメージ。うだるような太陽の下、この文字を見つけた時の砂漠にオアシスの心強さといったら。それに比べて近頃は、焼酎飲んで結局は自分に酔っているだけだったりピクトグラムがいつの間にか難解さを競っていたり、アドもパブも一体誰に向けているんだろうな感じで訴求というものに「キッパリ感」がない。
あまりにも有名なこのフラッグは氷旗と呼ばれ、明治のはじめ粗悪な氷の取り締まりのために許認可制となった時、掲示を義務づけられたのが始まりらしい。氷旗はためくもとにだったら集ってもいい。
夏越の大祓に香取神宮へ行く。昨年のものをお焚き上げに、新たに茅の輪守をいただいてきた。参道をあぢーあぢーといいながら戻ってきて食べたのが参道にある亀甲堂さんというところの「厄落しかき氷」。肝心の厄落しはかき氷ではなく、土手っ腹に突き刺さっただんご。何でも香取神宮では12月7日の夜に「団碁祭」といわれる祭りがあって、近郷の氏子がその年の豊穣玄米からの団子をお供えするのだとか。この祭りは姫神様のお祭りで、御神酒をお供えしない奇祭なのだと店のHPにあった。いただき方として、食べる前には器を左に2度回しだんごの串が右斜め前になるようずらし、一礼してからおもむろに匙を右から入れ、一口氷を頬張る。それから器を右にまわし向きを戻しからだんごを一口食べてまた一礼をする。そのあとは思い思いの食べ方でいい。というような作法はまったくない。ワシワシと美味しくいただき生き返ったのであります。店頭では草団子や焼き団子など様々な団子が売られている。草団子と焼き団子ミックスの「甘辛セット」をお持ち帰りとして購入。
子供の頃、家庭用にかき氷機が普及してきてイチゴやメロン、レモンのシロップから好きな色(あくまでも味ではなくて色なのだ)を選ぶのが夏の楽しみのひとつだった。あれから半世紀、かき氷の世界も著しい変貌ぶりでもう映えでも萌えでもどうにでもしてのカオスぶり。炙って食えとかもうわけがわからない。わけがわからないけれどそんな氷山の一角に出会うことがあれば一度はお手合わせをするにやぶさかではない。
見出しのイラストは「定価3万円の女」さんの作品をお借りしました。ありがとうございます。
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