フェイクニュースとチョコレート

2015年にチョコレートにダイエット効果があるとの論文が発表されて話題となった。
しかし、これがフェイク論文であり、フェイクニュースに関する社会実験であったというタネ明かしがなされて改めて話題になった。
フェイクニュースの恐ろしさが示され、1つの教訓となったと言えるだろう。

さらに面白いのは、その後この件を引き合いに出して「チョコレートにダイエット効果はない」とするコメントが散見されるようになったことだ。
例の社会実験ははそもそもチョコレートのダイエット効果を問題としておらず、この一件からチョコレートのダイエット効果のあるなしを判断すること自体がそもそもナンセンスなのだが、今回は敢えてそこにフォーカスしてみよう。

最初に「チョコレートにダイエット効果がある」と言い出したのが誰なのかは寡聞にして存じ上げないが、少なくとも2014年発表の『The Bulletproof Diet』(日本語版は2015年)ではカカオポリフェノールのダイエット効果について触れており、件のフェイク論文が初出というわけではない。

件の論文がフェイクたる所以は被験者が少なくて検証として不十分であるにも関わらず被験者数を明示せず、統計的分析を列挙して大勢の被験者で十分に検証したかのような論調で書かれていたことだ。意図的に誤解を与えるようなかき方はしているが、嘘は書いていない。
つまり、検証が不十分ではあるものの、チョコレート摂取群の方が体重が減ったという実験結果自体は事実であり、反証がなされているわけでもない。

重ねて言うが件のフェイク論文の一件からチョコレートのダイエット効果を判断するのは適切ではない。
一連の流れを元に言えるとしたら「チョコレートにダイエット効果があるという話もあるが、十分な検証はなされておらず不明確である」ということだだろう。要するに「分からない」ということだ。
「チョコレートにはダイエット効果がある」は正確とは言えないが、同様に「チョコレートにダイエット効果はない」も正確とは言えないのだ。

ネットには真偽不明の情報が散乱している。その全てをいちいち検証するのは到底不可能だが、少なくとも自分にとって重要なものについては鵜呑みにせずにきちんと信頼できる情報ソースで確認することが必要だろう。
同時に、情報ソースの信頼性の低さが発信内容の反証になるわけではないということも併せて注意していきたいと思う。


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