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出町座について。または上映作品、企画、あれこれについて。

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出町座について書かれた記事や投稿を集めます。みなさん、書いてくれてありがとう。
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#映画レビュー

映画『ひとつのバガテル』感想

この文章はネタバレを含みます。敬称略 監督・脚本・撮影・編集:清原惟  2年前に『わたしたちの家』を観てすっかり「ひとめぼれ」してしまい、清原監督の他作品も観たいと思っていたのだが、このたび出町座にて本作が待望の上映となった(〈肌蹴る光線 -あたらしい映画- 特集〉)。  あらすじ。アキは古い団地のマリという老婦人の部屋を間借りしている。マリのことは好きではないが、昔からこの部屋にあるというピアノを弾くのは好きだ。ある日「あなたにピアノをあげる」という手紙を受け取るが、

『シーズン・イン・フランス』レビュー【未確認映画解放同盟】8/28-9/3出町座で上映!

7月に続き、「未確認映画解放同盟」第二弾! 今月は 8/21-27 『アット・ウォー』https://demachiza.com/movies/6893 8/28-9/3『シーズン・イン・フランス』https://demachiza.com/movies/6890 の2本です。 今回も、私たち、映画チア部京都支部が映画の鑑賞体験を手助けするためのレビュー、解説を書かせて頂きました! まとめて冊子になり、出町座で8/21より無料配布されますのでぜひ! 今回は、前回からパワー

『アット・ウォー』レビュー【未確認映画解放同盟】8/21-8/27出町座で上映!

7月に続き、「未確認映画解放同盟」第二弾! 今月は 8/21-27 『アット・ウォー』https://demachiza.com/movies/6893 8/28-9/3『シーズン・イン・フランス』https://demachiza.com/movies/6890 の2本です。 今回も、私たち、映画チア部京都支部が映画の鑑賞体験を手助けするためのレビュー、解説を書かせて頂きました! まとめて冊子になり、出町座で8/21より無料配布されますのでぜひ! 今回は、前回からパワー

『ソーリー・エンジェル』レビュー【未確認映画解放同盟】7/10-7/16出町座で上映!

7/10-7/16出町座にて、「未確認映画開放同盟」第1弾として『ナイフ・プラス・ハート』『ライト・オブ・マイライフ』『ソーリー・エンジェル』の3作品が上映されます! 映画チア部が紹介する3作品目はこちらです! 『ソーリー・エンジェル』 2018年/フランス/R15+/132分 英題:Sorry Angel 原題:Plaire, Aimer et Courir vite 監督・脚本:クリストフ・オノレ 出演:ヴァンサン・ラコスト、ピエール・ドゥラドンシャン、ドゥニ・

『ライト・オブ・マイ・ライフ』レビュー 【未確認映画解放同盟】7/10-7/16出町座で上映!

7/10-7/16出町座にて、「未確認映画開放同盟」第1弾として『ナイフ・プラス・ハート』『ライト・オブ・マイライフ』『ソーリー・エンジェル』の3作品が上映されます! 映画チア部が紹介する2作品目はこちら! 『ライト・オブ・マイ・ライフ』 2019年/アメリカ/119分 原題:Light of My Life 監督・脚本:ケイシー・アフレック 出演:アナ・プニョウスキ、ケイシー・アフレック あらすじ伝染病によって、ほとんどの女性がいなくなってしまった世界。生き残った

『ナイフ・プラス・ハート』レビュー 【未確認映画解放同盟】7/10-7/16出町座で上映!

7/10-7/16出町座にて、「未確認映画開放同盟」第1弾として『ナイフ・プラス・ハート』『ライト・オブ・マイライフ』『ソーリー・エンジェル』の3作品が上映されます! 私たち映画チア部は上映に先立って作品を鑑賞させてもらい、レビューを書かせて頂きました! noteは作品ごとに分け、3記事投稿します。 作品を鑑賞する際の何かしらの手助けとなれば幸いです! 『ナイフ・プラス・ハート』 2018年/フランス・メキシコ合作/R18+/102分 英題:Knife + Heart 原

『アイカ』 移民、貧困、女性、現実

東京フィルメックス-京都出張編- セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督『アイカ』(2018) ロシア、ポーランド、ドイツ、カザフスタン、中国の合作です。これはまた、非常にキツイ映画でした… 階級的弱者の個人を撮り、ハンディの揺れ揺れのカメラでその個人を追い続け、また音楽は全くなく、そしてあのスタッフロールの入り方。映画としてはジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ兄弟のものを彷彿とさせます。自分は彼らの『息子のまなざし』がとても好きです。 その一方内容的にはダルデン

『オールド・ドッグ』 時代の過渡期に消えていくことしかできなかったモノ

ペマツェテン監督『オールド・ドッグ』(2011) 第12回東京フィルメックスで最優秀作品賞を受賞した今作。チベット生まれの監督が作った、故郷の映画です。故郷を目的と言うか、テーマとして撮った映画というのはなんか名作が多いような…これも例にもれず、名作でございました。 中国も西欧的な近代化が進む中、チベットという特異な地域において、内地の富豪にバカ高く売れるチベタン・マスティフ泥棒が横行し、盗まれるならとある男がもっているマスティフを売ってしまい、知らずに売られた父親が怒っ

『タルロ』 無垢なおじさんが放り込まれてしまったただならぬ世界は私が生きるここ

ペマツェテン監督『タルロ』(2015) 小学校の時覚えた毛沢東の語録を丸暗記している程に記憶力がとてつもなく良いが、小学校しか卒業しておらず羊飼いをしており才能の無駄遣いと言われる。そんな「三編み」ことタルロが、必要性もわからないままにIDカードの写真を撮りに街に降ったが、成り行きで知り合った理容師によって見知らぬ世界に触れてしまい、と進む映画。 固定の長回しが特徴的で、会話のシーンにおいては明確な境界線が目立つ時が多い。音楽は薄〜く効果的な場面で鳴っていて情緒を引き立てま

『堀川中立売』ヒモとホームレスは式神の夢を見るか

東京フィルメックス-京都出張篇-『堀川中立売』(柴田剛、2010) 京都の堀川今出川、晴明神社のすぐ近く、かつて陰陽師・安倍晴明が自らの式神を隠していたという一条戻り橋…のその隣。 堀川中立売の堀川第一橋にも、人ならぬ何かが集っている…? そんな口上から始まる、SF×ファンタジー×陰陽師ムービー。 地球侵略をもくろむ大妖怪・加藤the catwalkドーマンセーマン(以下、加藤(笑))を倒すべく、密かに地球に降り立ったギャラクシー・フォースのリーダーは、阿部さんと名乗り、

『ファンさん』

ワン・ビン監督『ファンさん』(2017) アルツハイマー病で寝たきりとなり意思疎通もできないファンさんと、それを取り囲む家族等を記録したドキュメンタリー映画。寝たきりのファンさん、それを囲む親族、或いは電流を流す魚捕り等を長回しでひたすら撮影します。 ワン・ビン監督は『鉄西区』がめちゃくちゃ長いってことぐらいしか知らず、今回はじめての鑑賞でした。『鉄西区』は9時間10時間に及ぶそうですが、アレもこの調子なの…?だったらちょっと観たら気絶しちゃうかな。 死の際を撮ることがで

『フラワーズ・オブ・シャンハイ』 はしゃぐおっさん。映画の美。

ホウ・シャオシェン監督『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(1998) 『冬冬の夏休み』などで有名な中国の巨匠ホウ・シャオシェン監督による19世紀末の上海の遊郭で色々する人たちの映画で、原作は古典文学だそうです。上海花じゃなくて海上花なのが素敵です。『冬冬の夏休み』ではガキがはしゃいで楽しいという映画を撮られていたホウ・シャオシェン監督。今回も彼の映画はやっぱり無二だなあと感じました。 この映画では、なんと、全然大したことが起こりません!!いい身分のおっさん達が遊郭に集まって

失くした体の感想(ネタバレあり)

出町座で鑑賞。 前情報なしで観たけど、切断された手首の目線で広がる世界がとても幻想的で引き込まれる。 手首の動き方の「そう歩くんだ、、、」というキモ可愛い感じに何とも味わいがある。 鳩の首を絞めて殺す所とか何気にバイオレンスでかなりホラー映画っぽい。というか死霊のはらわた2の主人公の手が攻撃してくる感じに近い。 本体である主人公の方のキャラクターも独特で不穏で何考えているかあんまり分からなかった。というかはっきり気持ち悪い奴だなぁ、、、という印象が最期まで変わらなかっ

『昨夜、あなたが微笑んでいた』 カンボジアの若き監督が淡々と収めた生家の収奪

『昨夜、あなたが微笑んでいた』は、ニアン・カヴィッチ監督が、カンボジアはホワイト・ビルディングが日本の企業に買収されその取り壊しを前にした最後の時を撮ったドキュメンタリー映画で、東京フィルメックス2019において学生審査員賞、スペシャル・メンションを獲得しました。これは監督の長編デビュー作で、元はデビュー作にここを舞台にした劇作を作る予定が、取り壊しの予定が早まり急遽これを撮ったそうです。 自分はカンボジア映画は初めて観ました。そして日本という字を見るとは思わず驚きました。見