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場に立つとき、迷子にならないための秘密兵器 『FOR ART』(ただのシート)

VisualPracticeの現場について、1時間のセッションから丸3日の研修、2年間のプロジェクトなど、NPOの方や教育現場、組織開発や医療業界、メーカーなど、様々な場に入らせていただき、おそらく数百名のファシリテーターの方と場を共にし、10名以上のグラフィッカーの世話人役をしたり、私自身がファシリテーターとしてグラフィッカーの方を呼んで一緒にチームとして入ることも増えてきました。

まだまだ試行錯誤する中で、応援していただいたり、信頼して声をかけてくださる方のためにも、自分のためにも、一緒に成長していきたい仲間のためにも、描く前の事前準備と終わった後の振り返りを丁寧にするのは大切だなぁ、と感じるようになってきました。

場に介入せずに描くグラフィックレコ−ディング(記録)からファシリテーションしながら進行するグラフィックファシリテーター(本音を引出したり、対話を活性化させたり、次に繋がる会議にしたり)、ペンを持たずにファシリテーターとしてオーガナイズとファシリテーターをする案件、その他まで。どの時にも、どれだけ時間がなくてもコレだけは握っておいた方がいい。というものを突き詰めているうちにたどり着いたのがこの秘密兵器。と言いつつ、ただのシートなのですが、現在も進化中です!

 ご興味を持っていただけた方はふーん。と見ていただければと思います。

0    このシートについて 
1  会議の中で迷子になるときないですか
2  あれ、わたし何のために描いていたんだっけ! Outcome
3  向かう方向がわかっていれば、次の一歩を見失わない Outcome/Flow
4  プログラムを知っておく  Agenda
5  どんな人が集る場なのか Target
6  次に起きてほしいことを握る Future
7  「誰のための」「何のための」 Rule/Role
8  誰のために描くのかって大事(次回に続く) **

0    このシートについて 


『F O R  A R T』

Future・・・今回のOutcome(目的)の先にどんなことが起きてほしいか。どんな社会にしたいの?

Flow・・・1回だけの会なのか。何回かあるなら何回あるの?そのうちの今回は何回目なの?次回はあるの?

Outcome・・・今回の目的と目標。会議や場が終わった時に、参加者や自分たちはどうなっていてほしいか。

Role・・・私の今回の役割(ファシリテーター?記録する人?場を和ませる人?率直な意見を場に出す人?フィードバックをする人?)

Agenda・・・今回のアジェンダ(進行の流れ、プログラム)

Rule・・・ここにいる人の共通認識として大事にしていることは何か。ないなら、今回限りのルールをつくる?(ex.否定しない、良く聴く...)

Target・・・どんな参加者がいるのか。関係性やモチベーションは?

↓具体的に何を描くのかのガイドライン

↓実際に書いてみるとこんな感じ

↓グラフィックを描く時に何を気をつけるようにしようかをメモ。

実際の会議の様子。

このシートを描いておくと「うれしい」ポイント/メリット
・どこまで目的を達成すれば良いかが握れる
    (いざというとき手放して良いところがわかる)
・終わった後に「よかったね」ではなく、運営メンバー同士で振返る際にも、シートに描かれていることが達成できたかどうかの「軸」があることでより豊かに次に繋がる改善点について話せる
・役割が一旦明確化されることで、個々人の能力を最大限発揮し、チームとして機能しやすくなる
・ルールがあることで、お互いに大切にすべきことを共有しておける
…etc.

以下は、徒然と長ーい説明になるので、ここまでの文を呼んで「わかった」「OK!」という方は、ページの一番下に、普段使いできるようにシンプルな線で描いたテンプレートがあるので自由につかってください。

1 会議の中で迷子になるときないですか

突然ですが、こんな経験はないですか。ワークショップが今まさに終わろうとしているとき、会議に参加しているとき、話し合いをしているとき、1年のプロジェクトで10ヶ月までさしかかったとき、

「あれ、今回のゴールってなんだったっけ」という声がひそひそと聞こえてくる。頑張って運営や企画をしたのに、参加者がなんとなく腑に落ちていない顔。「無事に終わったね。」で、次に何も起きない現象

それぐらいならまだ良いれど、「こんな会議やってられん!」とか「社長からどんでん返しがきてどん底」「もやもやが爆発」など・・・

たくさんの会議やワークショップを経験してきた方ほど、こんな身の毛もよだつさまざまな経験をお持ちなのではないでしょうか。

はたまた、グラフィックを描き終わった後「すごい!ありがとう!」と感謝だけが宙ぶらりんで、活用されることもなく、その後グラフィックがどうなったのか誰も知らない。もよくあるストーリーではないかと思います。

 私はほとんどの経験をVisualPractitioner(話の見える化の実践者)になって1年目で経験しました。そして、あるとき、

「この起きている出来事は、私に責任がある!」と気づきました。

必要な情報を私から伝えられてない。(どのようにグラフィックを活用するのがこの場に合っているか、そのために何をすると良いのかを伝えられていない。対話のため?報告書に載せるため?フィードバックに活用するため?…etc)。
グラフィックの説明をパートナーさん(私に声をかけてくれた方)の先にいる上司やクライアントに説明できるようにサポートできていない。パートナーさんの思いが周りに伝わらず、「グラフィック」というよくわからないツールを持ってきた人という扱いを受けてしまっている。(どのようにグラフィックを説明すると、初めての方も安心して活用できるかを、パートナーさんが話せるように共有しておくことは大切)。
パートナーさんが安心して場に集中できるように貢献できていない。(この場で大切にされるべきことは何かを事前に聴いていない)。
自分の役割が明確になっていない(ファシリテーションお願いされていないのにファシリテーションしてしまったり、ファシリテーションを求められているのに、記録のグラフィックを描いたり)
その場の目的に合ったグラフィックが描けていない。(まちの未来についての話を描きたいと言われたのに、関係ない話ばかりを描いている。具体的な行動を描いてほしいと言われたのに、概念の話ばかりが描かれている)
自分の苦手なこと、得意なことが伝えられていない(共によりよい場を創っていくために、補いあえる関係性が築かれていることは心理的安全にもつながる)

マニアックな話になってしまいましたが、そんな悲しい事が起きないようにするために使うようになったのが、このシートです。


2  あれ、わたし何のために描いていたんだっけ! Outcome

Outcome:企画や会議、ワークショップなどの開催「目的」や「終わった時のありたい姿(参加者にどうなっていてほしいか。自分たちは何を手に入れていたいか。成果など。)」を明確にする。

「グラフィックを描いてもらえませんか」と声をかけていただいたとき、もしくは「この場にVisualPractice(グラフィックを使った場づくり)を取り入れよう!」と思ったとき、まず、開催されるイベント/会議/ワークショップの目的を握ります。

私自身も会議やワークショップを企画運営するので感じるのですが、ポイントは、はじめに「目的」と思っていることは、たいがい目的から"少しずれて”いたり、”手段を目的と間違えて”いたり、”メンバーと共有されていない”ことなどがあるな、と感じます。なので、「その目的は?」「というと?」「具体的には?」「本当に?」と質問しながら、主催者の意図や思いを汲み取りながらこのOutcomeが引出されます。さらに、チームの場合はそれをみんなで共有しておくと、メンバーがバラバラになるリスクを減らしたり、いざという時の判断基準としても役立ちます。

このとき、「①場の目的」と、「②VisualPracticeを取り入れる目的(期待)」の両方を明確にしておくと良いなぁとも感じます。
※②VisualPracticeを取り入れる目的については、後日記載したいと思います。

3  向かう方向がわかっていれば、次の一歩を見失わない  Outcome/Flow

Flow:1回だけの会なのか。何回かあるなら何回あるの?そのうちの今回は何回目なのか。次回はあるのか。

さぁ目的がわかった。どこまで目標を達成したいかもわかった。というとき、今回の会議(ワークショップ等)は1回きりなのか複数回実施されるのか、複数回なら、今回はそのうちの何回目なのかも大切になってきます。

例えば、八尾市産業振興会議の場合、「2年間」会議をほぼ毎月実施することになっていました。その場合、1回きりで実施する場合との大きな違いは、その会議に集るメンバーの関係性をはじめにしっかり築いておかないと誰も参加しなくなる恐れがあるということ。

言い換えると、始めの数回は、ゆっくり進んでいるように見えたり、会議の進行が遅く感じるかもしれないけれど「思っていることを言える関係性づくり」「安心して話せる場づくり」に重点をおいた、非構造、発散系のグラフィックの活用する方が機能するかもしれない。

もしくは、途中、ただただもやもやを受け止める時間をとるためにグラフィックを活用するかもしれない。一見ゆっくりに見えるけれど、「ゆっくり急げ」。その後のスピード感や一体感が変わってくる。

逆に、今回が2年間続いてきた最後の会議というときは、構造化してしっかりまとめて、これまでの話合いをまとめていく。

初めに言いたいことを言いあえる、聴いてもらえる関係性をつくらずに進めて行った場合、もうすぐ終盤・・・というときに、もやもやが爆発したり、迷子になったりする会議にも参加したことがあります。

もしくは、1回3時間しかない会議なら、15分とか30分とかに区切り、問いをあらかじめ考えておいて、リズム良く発散と収束を繰り返す必要があるかもしれない。そんな時は、初めから参加者に模造紙の前に集まってもらって、みなさんにワーっと話してもらった意見を構造化せずに描き出して、その後に、話しながらそのプロセスも眺めて、少し強引に感じるかもしれないけど、構造化したグラフィックを最後に描いて、「こんな感じ?」と当たりをつけて、早めに叩き台を出すことでゴールへの無駄足を減らす努力をするかもしれない。

ここまで全てをグラフィッカーが握る必要はないけれど、「Flow どのような流れの中でグラフィックを活用するのか」を知っているか知っていないかで、その場に立つときのあり方・心構えが変わるのではないでしょうか。

4  プログラムを知っておく Agenda

Agenda・・・今回のアジェンダ(進行の流れ、プログラム)

これは至ってシンプルです。
当日の進行プログラムを把握しておくことで、どのタイミングで何枚模造紙が必要かわかるし、グラフィックを参加者の前で描いた方がよいか、部屋の横で描いた方が良いか、ホワートボードを何枚か用意しておいた方がスムーズか、などなど考える事ができます。

ついでに模造紙の貼れる壁なのか、養生テーブもしくはマスキングテープはくっつくのかも確認しておくとGoodです。

5  どんな人が集る場なのか Target

Target・・・どんな参加者がいるのか。関係性やモチベーションは?

こちらも至ってシンプルです。
参加者は、
・毎日顔を合わせているメンバー?
・初めて会う方々?
・専門性の高い人たち?
・他部門にわたる人たち?
はたまた、
・モチベーションの高い人?
・やる気のない人?

参加者を知っていると、関係性や、話す言葉の難易度スピードも予測できるので、事前に準備したり、グラフィックの影響の仕方も変わってきます。他分野にわたる専門家が集る際は、それぞれの専門用語について勉強するだけでも何日もかかることもあります。

また、どのような話のされ方が繰り広げられるか把握していることで、事前に絵の練習をしたり、パートナーさんのロゴや、コーポレートカラーを準備する際にも役立ちます。


6  次に起きてほしいことを握る Future

Future・・・今回のOutcome(目的)の先にどんなことが起きてほしいか。どんな社会にしたいの?

会議やワークショップが開催された後、1年後や数年度、10年後にどのような未来したいのか。という長期的視点の話。未来をイメージしておくことで、その回での、場の立ち方が変わるかも。

マニアックな話ですが、今回の話合いの結果で、組織の10年後を左右する場なのか、それとも、家族の晩ご飯の具材が変わるの場なのかでも、グラフィックを描く時のイメージやスケールも変わってきます。


7  ルール/役割 Rule/Role

Role・・・私の今回の役割(ファシリテーター?記録する人?場を和ませる人?率直な意見を場に出す人?フィードバックをする人?黒子であることを望まれてる?)

Rule・・・ここにいる人の共通認識として大事にしていることは何か。ないなら、今回限りのルールをつくる?(ex.否定しない、良く聴く...)

8  誰のために描くのかって大事(次回に続く)

余談ですが、VisualPractitionerはファシリテーターの居る場に入ることが多いです。ファシリテーターはグラフィッカーを選べても、ほとんどの場合、私たちは、ファシリテーターは選ばない。どんな人と出会っても、その方と参加者を含めた場を、全力でホールドします。もし、ファシリテーターと参加者に乖離が起きていたり、緊張して上滑りしているように見えたとき、スピードがはや過ぎで参加者がついて来れなくなっていたら、あなたならどうしますか。

そこに正しい、間違っているはないし、その先のことを考えていく必要があると感じているのですが、現時点では、関係性ができている方ならその場で声に出して伝えたいと思うし、関係性のまだできていない方なら、休憩時間やタイミングを見つけて伝えたいと思います。場は生ものだから、予想通りにいかなくて当たり前。そして、そのときに感じた違和感は、私一人の声ではなくて、同じように感じている人がいるかもしれない時点で場の声だから。グラフィッカーは、様々な対話を判断せずに、話されたことをまずは受取り模造紙の上に描いていく、場のすべてを見ている存在なのではないのかな、と感じています。

ある時から気づいたのは、勘の良いファシリテーターの方は、模造紙の近くにきて、何度もグラフィッカーに相談したり、どう見えるか客観的な意見を求めたりします。参加者に「違和感ありません?」「次どうします?」とストレートに聴く方なんかは、本当気持ちいいな、と思います^^自分へのフィードバックをその場で受け取りながら軌道修正していかれるファシリテーターと一緒に場に入らせていただく時は、「共創」を感じます。


今回は「シート」1枚を通じて、いろいろと考えてみました。

自分の頭の中ではもう少しスッキリとしたイメージがあるのですが、言葉にしたり文字にすると、なんだかしっくりこなくて長くなる。もう少しわかりやすく文章を描けるようになりたいものです。もにょもにょしながら、読みやすい文章を模索していきたいと思います^^



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