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デジタル化は人のため

中国でテンセント・アリババと肩を並べて”三馬”と称される金融機関の代用がいる。
(※三馬=アリババの馬雲氏、テンセントの馬化騰氏、中国平安保険の馬明哲氏)

それが中国平安集団の馬明哲である。IT企業経営者と横並びになる理由は、旧態依然とした金融業界の中で、オンライン保険や、オンライン医療等、画期的なサービスを提供しつづけ、最もデジタル化に成功した企業の一つと称されるまでに成長したからだ。

2018年、その中国平安集団の内部に迫った、『平安保険グループの衝撃―顧客志向 NPS経営のベストプラクティス』が発刊された。

時価総額20兆円弱で、トヨタ自動車と肩を並べるこの大企業が、利益成長率ではなく、「顧客満足度」を絶対的な経営指標ととして扱っていることに衝撃を受けたのを覚えている。デジタルの顧客接点において細かくフィードバックを得ることで、サービスをスピーディーに改善し、時には、領域に特化した子会社を立ちあげてブルーオーシャンに切り込む。

この『平安保険グループの衝撃』の著者である藤井氏が、平安保険の事例も交えつつ、日本向けに「デジタル化の道しるべ」として発刊したのが『アフターデジタル』だ。

アフターデジタルとは何か?

アフターデジタルとは、「オフラインがデジタル世界に包含される」世界のこと。

あらゆる行動データ、思考データがオンライン上にあることが、オフラインでの体験・生活を豊かにするような世界である。

逆に、「オフラインの世界が中心で、そこに付加価値的にデジタル領域が広がっている」という日本人の捉え方は「ビフォアデジタル」と呼べるもの、との説明がある。

世界には、アフターデジタルを迎えている国がいくつかある。

ここでは詳しく触れないが、本書ではエストニア、スウェーデンの事例が触れられている。

デジタル化、というと、「面倒な作業をPCがやってくれる」とか「紙でのやりとりがなくなる」とか作業の効率化の面に焦点があたることも多い。

しかし、本書では、アフターデジタル時代のビジネス原理を以下の2つにまとめている。

多くの接点で行動データを集め、顧客体験の質を高め、さらに多くのユーザから行動データを集める、というループを回すこと
②ターゲットという大雑把な属性に対してではなく、顧客一人一人の性格や特性に適したタイミングで、適切なコンテンツを、適切なコミュニケーションで提供すること

つまり、「データを元に、一人ひとりに適したサービスを改善し続けること」がデジタル化であるという説明だ。

一つの部署単位で実行できる業務効率化の取り組みももちろん重要だが、『アフターデジタル』が示唆するのは、会社又は国全体で、オンラインでのデータ収集を中心に据えて、顧客又は国民の体験をどのように向上できるのか、という発想で考えるべきである、という抜本的なパラダイムシフトだ。

まだまだ、インターネットへのアクセス等をみてもITリテラシーの低い日本は、この大きな世界の変化にどう対応していくのだろうか。

何十年後か分からないが、きっと日本もアフターデジタルを迎える。

その時のため、またはそれまでに準備をするために、必読の一冊。



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