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エディ・ヴァン・ヘイレン(ギターヒーロー)の訃報に触れて

先日(2020年10月6日)エディ・ヴァン・ヘイレンが亡くなった。(享年65歳)

ロックギターの革命児の一人といえる、稀代のスパースターだ。

実は、note用に、あるロックバンドについて書いた記事が、あとヘッダー画像とタグをつけて投稿ボタンを押すだけのところまできていたのですが、このエディーという偉大なロックギタリストの突然の訃報に接して、予定を変えざるを得なくなった。

今日、既に洋楽ロックというようなジャンルは下火であることを承知の上で、このギターの革命児について自分なりに書こうと思ったのがこの記事のきっかけです。

とは言っても、noteの読者だと「誰それ?」状態の人も多いと思われますので、洋楽ロック好きの人の完全内輪話にならないよう、どんな人なのかの概略から

1955年にオランダに生を受けたエディーは、子供のころ一家でアメリカに渡ります。
エリック・クラプトンに影響を受けたエディーは、兄アレックス(Ð)マーク・アンソニー(b)デヴィッド・リー・ロス(Vo)の四人で1978年「炎の導火線」で鮮烈デビューをします。
これがヴァン・ヘイレンというバンドです。

何が鮮烈だったのでしょう。

当時、KISSという別の大物ロックバンドのジーン・シモンズのプロデュースという鳴り物入りでデビューした彼らは、その話題も騒然としたものでしたが、音楽と何よりそのギタースタイルが音楽ファンを驚かせました。

デビューアルバム「炎の導火線」(原題 Van Halen)の2曲目に"Erupution"というエディーのギターの独演曲があるんですが、当時としてはあり得ないスピードと疾走感があります。
この「メロメロリメロ、ペロペロリペロ~♪」という猛烈な疾走感には実は技術的な裏付けもありまして、エディーはライトハンド奏法の創始者でした。


ライトハンド奏法とはものすごく簡単に言うと、ギターで出せる音域は、普通弦を押さえる左手の人差指から小指がどのくらい開くか(ストレッチするか)に左右されますが、エディーは左手だけでなく、何音かに1音右手人差し指による押弦(タッピング)も混ぜています。
こうすることによって、すごい短い時間(秒コンマレベル)に幅広い音域をカバーできるのです。
慣れてくると、この「メロメロリメロメロリ、ペロペロ~♪」のどこが右手人差指によるものか大体分かってきます。

またピッキングハーモニクスという爪で何かを引掻いた様なトリッキーなノイズを出す奏法を広めました(詳しいやり方は省きます)

技術論のはなしはこの辺にして

さて、このものすごい疾走感の超な速弾き(当時としては)は果たして、エディーが尊敬する大先輩ギタリストのエッリク・クラプトンからは冷ややかなリアクションしかありませんでした。

クラプトンはエディーの衝撃のデビューに際して「何故、こんな速く弾く必要があるのか僕にはさっぱり分からない」というようなことを述べるだけでした。
エディーのいかにも「どうだぁ~!」と言わんばかりの圧倒的な速弾きは、大先輩クラプトンの機嫌をどちらかといえば損ねてしまったのです。
クラプトンはエディーの登場した70年代についていえば、「いとしのレイラ」で気を吐いたあとは、どちらかといえば、ドラッグなどで迷走気味の時期といってよく、まわりの人が助けないと死にそうな生活をしてる時期もありました(この迷走期のいなたいヨレヨレの枯れたクラプトンもたまらないという人も多いのですが)

とはいえ、エディーの功績は単に「よいレコードをつくった」というはなしではなく、シーン全体に波紋を投げたということでした。

エディーのこの疾走するスーパーカーを思わせる華やかかつ鮮やかなプレーは、80年代に興隆するヘビーメタルというジャンルの土台になりました(これには諸説あると思いますが、わたしは個人的にそう捉えています)
多くのキッズがエディーみたいなスーパーヒーローを目指したのです。

エディーの疾走は80年代も続きます。

82年にマイケルジャクソンが今日でも世界で一番の売り上げを記録してるモンスターアルバム「スリラー」をリリースしました。
このアルバムからは2曲のナンバー1ヒットが生まれていますが、そのうちの一曲“Beat It"でギターソロで参加しています。
スーパーカーが疾走するような派手なエディー節はこの曲のギターソロでも全開です。

84年になると、アルバム「1984」がリリース。このアルバムはエディーがギター参加したマイケルジャクソンの「スリラー」にチャート1位を阻まれて最高位2位に終わりますが、シングルカットした”Jump"がシングルでも1位になり、ヴァンヘイレンは音楽ファンだけでなく、一般世間(アメリカのはなしですが)にも浸透します。

ところが、このころヴォーカルのデイヴの脱退騒動がおこります。

一説には不仲によるものだとか

エディーのスター性ばかりがとりさたされるヴァンヘイレンですがヴォーカルのデイヴのエンターティナーぶりも実は相当なもの。

デイヴは「カリフォルニアガールズ」というビーチボーイズの有名ヒットのカバーを足掛かりに、ソロの土台を固めていき、バンドを脱退してしまいます。

エディーはエディーでデイヴの代わりにサミーヘイガーという既に結構名の知れていたロックシンガーをヴォーカルに迎えます。

「デイヴのいないヴァン・ヘイレンなんてあり得ない」という声も多く、このボーカル交代劇は賛否両論だったのですが、結果的にボーカルがサミーに代わったヴァン・ヘイレンはまったくパワーダウンしませんでした。


80年代はあらゆる意味で、このエディーというギタリストの黄金期といえました。(補足:80年代、実は速弾きのスピードみたいな観点からは、後続のギタリストたちにエディーは追い越されてしまいます)

エディーのすごいところは、ギターの奏法的な革命をもたらし、まったくあたらしいシーンの流れをつくりだしたことにもありますが、ルックスやステージパフォーマンスにスター性があり、あらゆる意味でヒーロー然としていることでした。実際はボーカルと喧嘩になることも多く気難しい人だったのかもしれませんが、人に見えるところでは常に笑顔でした。

98年には3人目のボーカルにゲーリーシェーロンを迎えてアルバムをつくりますが(原題Van HalenⅢ)、ここからしばらくニューアルバムは途絶えてしまいます。

さて2012年に、ようやく、ひさびさのニューアルバムがリリースされました。「ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース」です。
ヴォーカルに迎えたのは、初代Voのデヴィッド・リー・ロスでした。
もとのさやに戻ったのです。
ここでまったく個人的な話になりますが、わたしは前年(2011年)の震災のショックと年齢的なこともあって(40代に突入してました)ミュージシャンという志望をさすがに諦めかけていました。
そこへ、80年代の圧倒的なギターカリスマが初代のボーカル個性派エンターティナー、デイヴと組んでひさびさのアルバムを出すのですから、期待が膨らまないわけがありません。
あの圧倒的にきらびやかな頃がまた戻ってくる。
自分が年齢的にくたびれ始めてたのでなおさらです。
僕はもちろんCDを発売日に買ってプレーヤーのターンテーブルに載せました。
きっとまたあの頃が帰ってくる。
一聴した感想は、エディーのスピードや技術が衰えてしまったとは思わなかったのですが、全員が齢をとってしまったという印象は否めなかったのです。
ある意味ヴァン・ヘイレンは何も変わっていなかったのです。
ただ歳月はやはり流れてしまったという感は否めなかったのです。
全盛期があまりに素晴らしすぎたのかもしれません。
おまけにDVDインタビューがついていたのでそれも観ました。
お調子者のデイヴは相変わらずのようにおもえましたが、あれだけいつも陽気な笑顔を見せていたエディーが終始ニコリともしないのです。
複雑な気持ちでDVDをしまいました。
でも自分は結局、過去にあれだけ功績のあった人たちが、ちょっとイマイチな作品を出してしまったからといって誰に責められる必要があるんだ、これから先につくる作品が仮に全部駄作だったとしても、彼らの過去の功績に何の傷もつかないし、その栄光がかわることはない。そんな風に考えていました。
ただある種のモノ寂しさは否めませんでした。
これが直接因というわけではないのですが、ほぼ同じ時期にこれ以降自分のギターは完全に部屋の飾り物になってしまいました。


と、こう締めくくってしまいますと、彼らのことを知らない人にもネガティブなイメージが湧いてしまうと思うので最後に

誰かが、インタビューでギターでほんとに革新的なことをやったのは、ジミヘン(ジミヘンドリックス)とエディー(ヴァン・ヘイレン)のふたりだけだ、と言っていたのですが、わたしも同意でこのふたりこそは革命児だと思います。
ジミヘンがヒーローというより怪しいマジシャンのような風貌だとすれば、エディーはあらゆる意味でヒーロー然としてました。
笑顔を絶やさない、アメリカンなナイスガイだったと思います。


(あとがき)
役に立つ記事、読まれる記事という呪縛はもちろんあるんです。
「ロックのギターヒーローのはなしなんて、今どき誰が…」っていうマーケターの自分のつぶやきも聞こえてきます。
でも今触れないと、この先、この不世出のギタリストについて触れないで物書き人生終わりそうな予感がして、「役に立つ」「読まれる」みたいな座標軸の批判はねじ伏せました。
ギターヒーローなんかの時代ではないかもしれないから、余計に同時代的にそれを体験してる人が今日の人に伝えるべきだと思ったんです。
たとえ興味を持ってくれる人がほんのわずかだったとしても

今日は80年代に活躍して先日亡くなられたエディ・ヴァン・ヘイレンというギターヒーローのはなしでした。

御一読どうもでした。

(さらにあとがき)
音楽の記事に音源のリンクは貼らないと以前どこかの記事に書いたのですが、YouTubeのリンクの貼り方をようやく覚えたのでつけてみることにしました。

(参考音源)ヒマがあったら聴いてみて下さい。

①Van Halen 初の全米No.1ヒット "Jump"

②エディーのギターソロ曲 ”Erupution" (1stアルバム収録)

③ボーカル、デイヴ初ソロ曲 ”California Girs”

④マイケルジャクソンとの共演曲 ”Beat It"

⑤ボーカルがサミーに代わっての初ヒット ”Why Can't This Be Love"

(制作データー)
書き始め 2020年10月9日13時38分

(追記)
訃報に触れてとかいって御挨拶を欠かしておりました

偉大なギタリストのご冥福を謹んでお祈りいたします

空々しい感じですが、正直ショックでした

(合掌)🙏

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