見出し画像

意識高い系会社に低い系が入社したはなし④

未入金の取り立て

この仕事で最も嫌だったことは
実は飛び込み営業ではない。


未入金顧客への取り立てだ。


期日までに払わないクライアントが誰の担当の中にも必ず1人はいた(なんでやねん)。
そして締日までに必ず回収しなければいけなかった。

未入金はどう考えても払わない側が悪いと思っていたのだが、
この会社では全て“自責”と捉えなければいけなかった。
「お金を払ってもらえない側が悪い」という新たな価値観に震え上がった。

一度でも入金が遅れたことのあるクライアントには
入金日の前日に電話をするのだが、
まずはここでキレてくる輩が存在する。
幸い私はキレられたことはなかったが、
ものすごく鬱陶しそうに返されたことは何度もある。

鬱陶しいのはどっちやねん?
そもそもあんたが払ってたらこんな電話せんでええんやぞ?

と喉まで出ていたが、ぐっと飲みこんだ。

そして通常最終の締日までに入金が確認できなかったクライアントは
一旦契約解除になるのがルールだったが、
かなり大きな金額で契約している某クライアントに関しては
このルールが適用されなかった。

まさに社会の闇である。世の中金なのだ。

振り込まれるまで営業が何度も粘り、直接訪問しては催促し、
全額振り込まれるその日まで追い続けなければならない。

つまりそこの担当になってしまえば最後。
毎月必ず入金の催促をし、拒否をされ、上司を連れて直接赴き直談判をしなければならないのだ。
しかも社長はかなり気性が荒い。

担当になってしまった先輩は、直接訪問した際現金を投げられ拾わされていた。
信じられるだろうか?
そんな人間が社長をしているだなんて。
そしてそんなやつと契約しているだなんて。
即契約解除でええやないかと末端社員は思うのだが、
どうやらトップはそれを許さないらしい。

もっと信じられなかったのは、
その先輩がそれでもめげずに“自責”と捉えて毎月必死に取り組んでいたことだ。
完全に狂ってやがる。洗脳だ。
肩をつかんで
「これは!他責で!いいんです!!!!」
と言いたかったが、
まっすぐキラキラした瞳を前にそんなことはできなかった。


かくいう私もここまでではないがしっかり被害に遭った。
新規で高額契約をしてくれた際、
「毎月これだけかかるんですよ?毎月ですよ?年間契約ですよ?」
と念を押していたにも関わらず、
思ったより先方の商売がうまくいかなかったようで
支払ってもらえなかった。

電話も着信拒否されてしまえばやることはひとつ。
お得意の直接訪問だ。

だが扉を叩いても出てこない。
大声で呼んでももちろん出てこない。
お手上げだった。

闇金ウシジマくんのように
消火器を持って扉の隙間からまき散らしたかった。
そしてせき込みながらでてきた先方の髪を鷲掴みにして
「いるじゃねぇか」と言いたかった。

しかも夏休み前日だったので、
これが解決しなければ夏休み中も毎日電話をしなければならなかった。
わたしは何の仕事をしているのだろうと虚しくなった。

ここからはもう記憶がない。
無事に夏休みを迎えていたので一旦解決はしたのだと思う。
消火器は使っていなかったはずだ。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?