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創作大賞感想『眠る女』by吉穂みらい
正直に言います。私は感想文のたぐいが大の苦手です。
創作大賞の感想どころか、ふだんも読書感想文を書いたことがほぼありません。noteの町では、皆さん、すばらしい読書感想文を書かれていて、それをひたすら「すごいなあ」と拝読し、私の貧困な読書歴の水先案内人として参考にさせていただいていました。
ですから、今年も創作大賞の感想を書くつもりはまったくありませんでした。なにしろ、超遅筆の私は自身の応募作(『北風のリュート』)が締め切りまでに脱稿できるかすら怪しかったものですから。
でも。
ぜひとも『眠る女』を、いえ、アルデバランシリーズをはじめとする吉穂みらいさんの作品を読んでいただきたいなあ、と思い、読書感想の真似事みたいなものをしたためてみました。
☆
吉穂みらいさんについて、私がご紹介するまでもありませんよね。noteだけでなく、ご自身のHPもお持ちで、神保町Passageで『吉穂堂』を展開され、アルデバランシリーズをはじめとするたくさんの書籍を発行され、全方位的に活躍されています。
みらいさんを知ったきっかけが何だったか、もう思い出せないのですが。初めの頃は、その活躍がすごすぎて、私など及びもつかないので、陰からそっとうかがっていました。(←ほぼストーカーです)
実は、みらいさんとは6月の後半に京都でお会いしました。その折には、創作大賞には参加される気配がなかったので残念に思っていたのですが、その翌週には『眠る女』を投稿され、ちんたら書いている私を尻目に、さっさと脱稿されました。その鮮やかさ。もうまぶしすぎて。きっとみらいさんにとって「書く」ことは、ご飯を食べるのと同じくらい自然な行為なのだと羨ましく思いました。
☆
さて、その『眠る女』です!
『眠る女』は恋愛小説ですが、上質のミステリーでもあり、心理小説でもあります。
主人公の葵は、初めは不眠に悩まされ、不眠がたまると過眠に襲われる睡眠障害を繰り返しています。ある日、4日間眠り続けてめざめると、交際ゼロ日で結婚した夫が失踪している――。
夫の時生はセックスを拒否。眠り続けていた葵を発見したのは、夫ではなくセックスフレンドだったカオル。夫の行方は杳としてわからない。
もう、冒頭から謎がちりばめられます。
それだけでも読む手が止まりません。
終盤、次々に明らかになる事実は……驚愕と切なさが胸を締め付けます。
なぜ交際ゼロ日婚なのか。なぜ時生は失踪したのか。どうして行方がわからないのか。彼の想いはどこにあったのか。そして葵は――。
ね、読んでみたくなるでしょう。
もう一人、サブキャラクターとして登場する優佳里も象徴的です。
セックスレス夫婦であった葵の前に現れた優佳里は、妊娠中でお腹がどんどん大きくなっていきます。ところが……。
優佳里もまた切ない存在です。
子どもとは何か。夫婦とは何か。人を愛するとは何か。
本当はそういうことを、誰もが真剣に考えなければいけない。でも、私たちはそこをすっ飛ばしてしまいがちです。
みらいさんは、『ナユタ』(アルデバランシリーズ)でも、けっして都合のよい恋愛は描かれません。丁寧に心理を掘り下げ、ままならぬ人生を描かれます。その心の襞の描かれかたがすばらしい。
そうして、もう一つ。
この小説には謎が隠されています。その二重の意味に気づいたとき、私は思わず拍手をしました。ぜひ、皆さんも、それを探してください。
(※ヒントは……名前です。あ、これでばれてしまったでしょうか)
ばれてもいいですよね、みらいさん。
だって、その複層的な意味を皆さんにも味わってほしいですもの。
皆さん、ぜひ、『眠る女』を読んでみてください。
そして、それをきっかけに『ナユタ』をはじめとするアルデバランシリーズも、ぜひ。もう虜になることまちがいなしです。
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『ナユタ』をはじめとするアルデバランシリーズについては、こちらから。
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こちらの記事にも、まとめられています。
みらいさんの活躍の幅のすごさが実感できます!
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『吉穂堂』は、こちら。とてもすてきな本棚です。
新刊が入荷したそうです。早い者勝ちです!
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