大河ファンタジー小説『月獅』27 第2幕:第9章「嵐」(1)
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第2幕「隠された島」第9章:「嵐」(1)
海面はぴくりとも揺らがないほど平坦に凪いでいた。
張った弦のように空気がひりひりし、海猫の鳴き声もなかった。
あれが予兆だったのかもしれない。
その日は双子の二歳の誕生日でルチルは野ブドウのタルトを作っていた。
お菓子作りはルチルが唯一ディアよりもできることだ。
館にいた頃、料理人のハ