見出し画像

05 真面目な生活

第5話

化粧水はラベンダーとカモミールの香りのするスプレー式のものだ。
シュッシュッと3吹きくらいして、両手で馴染ませる。
良い香りだ。
香りに癒されながら、洗濯機の残り時間に目をやる。

"21"

化粧水の次は美容液。こちらも同じ香りのジェルで、良い香り。1プッシュして、指で伸ばしていく。
次はこっくりとしたクリームを指にとり、手のひらに広げて、顔を包み込むように優しく塗っていく。水分の蒸発を防ぐのだ。

"19"

今日は誰に会うわけでもないから、メイクは簡単に。
ひとまず下地の日焼け止めだけ塗ろう。
チューブに入った薄い肌色の日焼け止めを指で塗る。
こめかみあたりがムラになりやすいから、そこだけは丁寧に。
あ、眉毛も描いておこう。
パウダーアイブロウでパパっと描く。

"18"

髪を止めていたヘアバンドを取って、濡れた生え際を乾かすついでに、髪をセットする。
セットと言っても大したことでなく、ヘアミストを髪全体にスプレーして、ブラシでとかして、ドライヤーで乾かすだけだ。
乾かしたら、髪を一つに束ねて縛る。

"17"

最後に洗面台を拭く。
洗顔後に顔を拭いたティッシュを傍に取っておいて、それを使って拭いてゆく。
ホコリ、泡の残り、髪の毛やマサオの残していった髭の黒い点々、ハンドソープボトルの底のぬめりなど、サッと拭き取り、ゴミ箱へ捨てる。

顔をタオルで拭かず、ティッシュで拭くのは衛生的な面で譲れないが、エコ的な意味での罪悪感を感じる。
しかし、こんなふうに2度活用すればそんな罪悪感も薄れるというものだ。

最後に手を洗うついでに、水で流して終わり。

"15"

あと15分。
洗濯機が終わる前に、前日に干した洗濯物を取り込んでしまいたい。

窓を開けるのは冬だけで、毎日部屋干しだ。
ベランダにはほとんど出たことがない。
理由は、春と秋は花粉症、夏は虫が怖い。
仕方がないから、空気清浄機と換気扇でどうにか過ごしている。
その為、ベランダに洗濯を干すのをやめ、3ldkの部屋の一つを家事室兼、ウォークインクローゼットとして使って、そこに干している。
床と天井に突っ張り棒を2本立てて、そこに竿を渡している。
物干しの乾いた衣類を、すぐ横のクローゼットに移せるので、同線的にかなり楽で、快適にしている。
しかし、湿気は大敵なので、乾燥機を常につけっぱなしにしなければならない。

部屋干しの洗濯物を取り込む。
部屋に干してあるのだから、「取り込む」という表現は変かもしれない。
言葉はともかく、ハンガーにかかった衣類を外して、畳んで、しまう、ということをやる。
畳まないものはそのままクローゼットに移して吊るす。

ちょうど全ての洗濯物をしまい終えたタイミングで、洗濯機が洗い上がりを告げるブザーを鳴らす。

ふと「私は真面目に生きてるな」と思う。

毎日代わり映えしないようで、毎日少しずつ、あーでもないこーでもないと改善しようと試みている。
生活の些細なことではあるけれど、掃除の仕方から料理の味付け、洗濯や洗顔方法など、上手くいかなかったことを明日こそは!、と改善していこうというポジティブな思想の上に成り立っている。
洗顔と洗濯の時間配分のベストバランスもこういった毎日の小さな積み重ねで生まれたのだ。
工夫と前進。

ああ、真面目な生活。
誰の役に立つでもないし、自己満足に違いないけれど、今日も真面目に生きている。

第5話

朝の習慣を全10話を目指して書いています。
情景や心情を書く練習です。
スキやご感想、アドバイスなど頂けたら嬉しいです。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?