見出し画像

04 理不尽な洗顔

洗濯機をまわしているうちに、顔を洗ってしまおう。
朝一の洗顔を習慣にしている人も多いと思うけれど、私はまず朝ごはん、その後に洗顔だ。

これは幼少期の頃からの習慣だ。
食後にすることで、睡眠中の汚れや目脂と共に、パン屑やジャムでベタベタになってしまった子供の顔を、一度に洗ってしまうというのが、母の算段だったのだろう。
そして、それは大人になった今でも私の習慣となっている。
目脂のついた顔で朝ごはんを食べることには、多少の抵抗があるのだけれど、なかなか治せない。
夫のマサオも特に気にしていないようだ。

洗面所の鏡が、下の方だけうっすらと曇った。
蛇口からお湯が出始めたからだ。
築30年の分譲賃貸マンションの給湯器は、お湯がでるまで時間がかかる。

洗顔には人肌くらいの温度が良いと言うから、36度に設定してある。
流水のまま、両手にお湯をくんで、顔を濡らす。
冷えて強張った顔の筋肉が、緩んでゆく。
温かい。

洗顔ネットに洗顔フォームを少しとって、泡立てる。
時間をかけて、しっかり泡立てたいから、お湯はいったん止めた。
モコモコふわふわの泡にしてから、さらに泡立てて、もったりとへばり付く濃密な泡になったら、顔においてゆく。
包まれる。
目の周りと、鼻の穴だけ残して、すっぽりと顔が白いモコモコの泡に埋まる。

ざらついた小鼻周りをくるくると軽めに擦る。
雑誌やネットで、"洗顔はよく泡立てて強く擦ってはいけない"と書いてある記事をよく見かける。
しかし、いけないいけないと思いつつ、何度かに一回は強く擦ってしまう。
毛穴の角栓が気になってしまうからだ。
洗顔中やメイク中、いつももっと良い方法がないかと思うが、喉元過ぎれば熱さ忘れるのごとく、すぐに忘れて何もしない。

蛇口から再びお湯を出し、泡を流していく。
濃密な泡は落ちにくいため、念入りに流す。
生え際、小鼻周り、顎の下。泡の残りやすい箇所だ。
お湯でひと通り流したら、今度は冷水に変えて洗ってゆく。
毛穴を引き締める目的なので、時間はそんなにかからない。

最後は濡れた顔をティッシュペーパーで拭く。
この時も擦ってはいけない。
2、3枚に重ねたティッシュで、そっと押さえるように拭く。
洗顔の終了だ。
やっとだ。

鏡の曇りは既になくなっていて、自分の顔が映る。

これだけ念入りにやっても、肌が綺麗とはとても言えない。
毎朝、水でパシャっと簡単に済ますだけの、マサオの方がよっぽど綺麗な肌をしている。
結局は持って生まれたものが違うのだ。

理不尽。

洗顔後のまっさらになった肌に、化粧水をつけた。


第4話

朝の習慣を全10話を目指して書いています。
情景や心情を書く練習です。
スキやご感想、アドバイスなど頂けたら嬉しいです。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?