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血管を虚脱させるのは医療者の輸液!ピトレシンやノルアドレナリン投与の目的は血管を絞めることではない

ICUにおいてショック患者におけるノルアドレナリン投与は一般的に行われます。敗血症性ショックで反応が悪ければピトレシンを投与することも多いでしょう。
上記薬剤を投与する目的はなんでしょうか?血管を締めて血圧を上げることだと思っている方が多いと思いますが、正確には少し違います。
「ショックで末梢が締まっているのに、さらに上記薬剤を投与したら循環不全になる。まずはwetになるまで輸液だ!」と言う医師は比較的多いです。よって大量の輸液を優先しうっ血による臓器障害が進行した患者をよく見ます。

最近は電子光学顕微鏡での観察が可能となり、ショック患者で実際どのようなことが起きているのかがはっきりわかってきました。実は、血管を虚脱させていたのは医療者の輸液だったのです。血管透過性の亢進した血管では輸液は間質に漏れ、これが周囲から緊張を失った血管を圧迫していたのです。


ショックの総説(N Engl Med 2013;369:1726-1734)を読むと、4つのフェーズに分けてショックの循環管理について語られています。この中で、ショックの最初の蘇生期にまず行うべきは灌流圧の維持であると記載されています。輸液による流量の増加とは書いていません。これは上記の顕微鏡における所見を見ても理にかなっています。まずは灌流圧を維持し血管の緊張を保つことが重要なのです。さもなければ、血管虚脱による組織壊死を引き起こします。特に敗血症ではこの重要性が高いと考えられます。敗血症性ショックでは抹消血管抵抗(SVR)が低下しており心拍出量(CO)は増加します。つまり酸素供給量(DO2=1.34×CO×Hb×SaO2)が増加するので、酸素の需給バランスが崩れてショックになると言うのが納得いかない時期がありました。しかし、ホースで遠くの花に水をやることを考えると納得がいきました。いくら蛇口を捻っても水は手元にぼとぼとと落ちるだけ。ホースを絞ってやらないと遠くに水は届きませんね。これが灌流圧の維持による抹消組織への酸素の供給と同じと考えられるのです。いくらDO2の保たれた血液があっても末梢組織に届かないままシャントの状態で右心系に戻っていくため敗血症ではScvO2が高値になるのもご理解いただけると思います。

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