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読書日記「注文をまちがえる料理店」

同じく市民福祉大学福祉ライブラリーで借りた本です。
  


料理店の始まりは

 著者の小国士郎さんはテレビ局のディレクター。ある日、和田行雄さんが統括マネージャーをつとめるグループホームに取材に行きます。昼食は予定ではハンバーグ。でも出てきたのは餃子。

 別にいいんですよね。誰も困らない。間違えたって、美味しければ何だっていい。そう思ったそうです。
 そのグループホームに入居している方々は認知症の状態にありますが、買い物も料理も洗濯も、自分でできることはすべて自分でやります。

 そこから小国さんは『注文をまちがえる料理店」を思いつきます。認知症の方たちにホールスタッフとして働いてもらおう。プロジェクトが動き出し、たくさんの人の力が一つになって、企画を実現させます。
 プレオープンを経て、本開店が3日間行なわれました。

ホールで働く方々は仕事をして、とても楽しそうでした。注文をまちがえることはありました。でもなんとなく納まるのです。みんな笑顔です。お客さんも、いろんなことがあっても受け入れる優しさがありました。お給料ももらいました。

認知症の奥様の弾くピアノとご主人のチェロが店内に流れます。奥様は何度も間違えて止まるけど、ご主人が「こうだよ」と教えて再開します。

あたりまえですが、この料理店で認知症のさまざまな問題が解決するわけではありません。でも、間違えることを受け入れて、間違えることを一緒に楽しむ。そんな、ほんのちょっとずつの〝寛容さ〟を社会の側が持つことができたら、きっとこれまでにない新しい価値観が生まれるのではないかと思ったのです。

本中P203より

お年寄りの力

「認知症の人は、人をよく見ている」
以前高齢者支援の仕事していて、お年寄りの力を感じることがよくありました。人生経験もたくさんで、その言葉は「なるほど、そうなんだ」と思わされました。

認知症になっても、人柄は変わらず、気を遣う人も多いです。本の中でも、「美容院で働いていたから、立ち仕事はなんでもないのよ」という元美容師さん。今まで働いてきた気概を持っておられることが分かります。

もちろん、人や認知症ははそれぞれで、この料理店で働ける方は限られるかもしれません。もっと進んでしまえばできることも限られるでしょう。でも、その他の場面であっても、どんな方でも、できることはあって、少しの手助けがあればいきいきと生きることができると思います。

誰にでも役割があれば

先週の朝日新聞、松本先生のコラム。「その人にあった役割を見いだすことが大切な精神的サポート」と書いておられました。
年を取ると、手伝ってもらうことばかりが増えます。でもその人に合った役割があれば元気になる。この本とコラムとつながりました。


プロジェクトの力

「注文をまちがえる料理店」プロジェクトの人々の思慮深さと結束の堅さに感銘しました。新しいプロジェクトを立ち上げるのに、必要なのは仲間。今回小国さんの出した条件は、

①100%おもしろがってくれる人
②僕にできないことができる人
③自分の利益を捨てられる人

本文P179より

 こういうところ面白いですよね。よく考えておられます。そして、それぞれ得意分野の方々が協力していきます。デザインとかお金集めとかITとか介護の知識とか。

 そして大事にしようと決めたルールの一つが「料理店としてのクオリティにこだわる」でした。「レストランのおしゃれな雰囲気」「美味しい料理」

「間違ってもいいけど、間違わないための工夫」
「間違うのはつらいという認知症の人の気持ちも理解している」

認知症の方たちの姿を「当たり前の風景」と暖かく見守る視線。

細心の注意。そして一緒に間違いを楽しむ、そんな仲間とプロジェクトができたらいいですね。

プロジェクトの話から「仲間」について考えました。

厄介者から「あ、普通だ」

本の最初に出てきた名前。「あ!和田さんだ」と思いました。和田行雄さんのDVDを持っています。市場に出かけるところや、施設には鍵をかけないので、出てしまって行方不明になり心配するところも見ました。

買い物に出かける市場の人の話です。

最初は「大丈夫かな」と思ったし、(中略)「厄介者が来る」という人もいました。でも、和田さんたちのサポートを受けながら、おばあさんたちが普通にお買い物をする姿を見て、「あ、普通だ」と思うようになったんだそうです。

本文P168より

「普通だ」と受け入れる。ここが面白いし大きなヒントになると小国さんは言います。
 全部のグループホームが、和田さんのところのようにできるわけではない。でも、これからの介護のあり方を示唆していると思います。
 《諦めない心》

最後に

今回この本をたまたま選んだのですが、話があちこちつながりました。本とは出会いですね。装幀も、可愛らしいイラストもあり、素敵です。ちなみに「まちがえる」の「る」は横向きにひっくり返っています。間違っています。

  本の題名:注文をまちがえる料理店
  著者:小国 志郎
  出版:あさ出版 (2017年初版)


もっと詳しく「注文をまちがえる料理店」のことをお知りになりたい方は、You Tubeで見つけましたので、どうぞ。


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