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伊勢英子の世界~何かを探す旅

2ヶ月に1回、絵本を楽しむ会に参加しています。
絵でも文章でも、一人の作家の絵本や作品を集めてきて、それらを見ながら感想やら何やらをただしゃべるという、ゆるい会です。

ひとりの会員の方(80代)詳しい資料を作ってくれます。

今月は伊勢英子でした。絵本、挿絵などたくさんの作品があります。エッセイも書いています。

伊勢英子(いせひでこ、とひらがなのときがある)

1947年北海道生まれ。
母親は厳しく教育熱心で、バイオリンを習わされていた。その後チェロに変わり、佐藤良雄から指導を受ける。
子どもの頃、白い紙があればずっと絵を描いていた。大学は東京芸術大学美術学部。夫はノンフィクション作家、柳田邦男。

Wikipediaその他より抜粋

この人の生き方は、かなり刺激的です。
先日、NHKラジオの深夜便で、インタビューのアーカイブ放送がありました。なかなか興味深かったです。

思ったらすぐ行動している。大学卒業後、いろいろなしがらみから逃れようと、今までの作品を燃やして、フランスへ飛ぶ。幼い子どもたちを置いて、カザルス(チェロ奏者)のいたスペインに旅立つ、夕焼け(の向こう側)を描くために、子どもを連れて、急に電車に乗ってしまう。

宮沢賢治を探すために東北に行く。海の絵を描くために、水恐怖症なのにダイビングのライセンスを取る。


空と雲

絵本の会では、みんな「行動力の人」と言っていましたが、本人が著書の中で言っているように、「なにかに吸い寄せられるように」「なにかに引っ張られるように」行ってしまうわけです。行動を起こさせる「感性」「感受性」「熱情」が人並み外れていると思いました。

これこそ、アーティスト。芸術家ですよね。
「絵を描いていなければ、私はとうに死んでいた」と言ったのは、誰だったか。草間彌生かもしれない。

そうやって、こだわり抜いて描いた絵が素晴らしいです。デッサンが素晴らしいので、私は、子どもの絵とかが好きです。犬の話もいい。『グレイがまってるから』


宮沢賢治の絵本は、「よだかの星」「風の又三郎」とか素敵なのがありますが、ごめんなさいですが、好きなんだけど、ちょっと怖い。色使いとか。たぶん、それは「魂」に向けられた絵だから、かもわかりません。




夕焼け

この方はエッセイも卓越しています。
その中から、印象的だったが、柳田邦男さんとの共著『見えないものを見る』の中から。

ところが、見えないものっていうのがありますね。空気、時の流れ、匂い、音、光、それからまあ、霊的な世界とか精神の世界とかって。

P22より引用

まさに、「見えないものを見る」話は、惹かれます。見えるものも、その奥にあるものを見ている。

木とか空とか雲とか雨とかの自然から、そして人間からも、かすかな息づかいのようなものを感じ、受け取る感覚が半端ないと思いました。

柳田さんは、伊勢さんの宮沢賢治の絵をみて、是非この人に、自書の挿絵を頼みたいと思ったそうです。画家の目、作家の目に共通するものがあると書いておられます。

その後、お二人は結婚されますが、そのことを全然知りませんでした。改めて伊勢英子さんの世界が、繊細な色使いであることに驚きました。




最後に、代表作の『ルリユールおじさん』を紹介します。

パリのルリユールおじさんの仕事は、製本屋さん。ひとりの少女が、壊れた大好きな本を抱えて店にやってきます・・・。


この絵本を描くきっかけになった、フランスでのおじさんとの出会いのエピソードが伊勢さんを物語っています。どっかに書いてあった。
3.980円!高いぞ。定価1600円+税。



*ヘッダー写真はスーパーの階段の上にあったツバメの巣。
2,3日して見たら、からっぽだった。
みんな無事に巣立ったかな。

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