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ひとりの本好きが、本好きの友だちと交わす往復書簡。

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読んだ本について手紙を書く。本好きから本好きへと書く手紙。往復書簡。手書きの必要はありません。ここから始まった往復書簡がいくつもあります。あなたの手紙、待っています。
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#哲学

「ことば」という大河にたゆたう——ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』、ガブリエル・…

拝啓 一日の気温差はいまだに激しいものの、快い風がそよぐ時節になりました。窓を開けると金…

既視の海
8か月前
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刻々と変化し続けるもの、それでも変らないもの——小林秀雄『無常という事』『歴史と…

拝啓 九州の災害の報に胸をいためつつ、関東の酷暑も災害のようです。ただ、天気予報の「体温…

既視の海
11か月前
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同じ書物を読む人は遠くにいることを知る——岡崎京子「万事快調」、向田邦子「胡桃の…

拝啓 向暑のころとは思えない朝夕の気温差と、1日ごとの寒暖差です。それでも我が家の庭では…

既視の海
1年前
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言葉の力を信じる——ジル・ボム『そらいろ男爵』、鎌田實『雪とパイナップル』、アー…

拝啓 寒暖の差が大きく、薄暑というには朝の冷気が身にしみます。しかし、あなたからの手紙は…

既視の海
1年前
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エスプリのきいた愛の物語——ダヴィド・フェンキノス『ナタリー』【書評】

拝啓 足早に2月が逃げ去っていきます。忙しいとは心を亡くすことだとは、よく言ったものです…

既視の海
1年前
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つづれ織りのような人生と文章——パスカル・キニャール『約束のない絆』【書評】

拝啓 東京も明日は雪が降るというのに、今日は穏やかな青空がひろがっています。暖かさにくる…

既視の海
1年前
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骨董はいじるもの、欲望は愛でるもの——アントワーヌ・ロラン『青いパステル画の男』【書評】

拝啓 冬至からひと月近くたちますが、日は低いままですね。ただわが家では、その低い日差しが庭のオリーブの樹影をクリーム色のロールスクリーンに映し出し、部屋の内側から見ることができるのです。樹影は刻一刻と移りゆきます。丸谷才一『樹影譚』とはちょっと違った、冬ならではの楽しみです。 あなたが教えてくれるままに、日本人作家の随筆も読む一方で、発売を待って入手したものの、なかなか手に取れなかったフランスの小説をようやく読み終えました。アントワーヌ・ロラン『青いパステル画の男』です。

【第10信】「あわい」を見つめ考え続ける——吉田篤弘『雲と鉛筆』【書評】

拝啓 午後になり、西日が机のうえに差し込んできました。夏にはうっとうしい西日も、冬ならば…

既視の海
1年前
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【9通目】死を前にして人が求めるものは——宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くな…

拝啓 いつもは季節感のある書き出しをしようと心がけているのですが、今回は興奮か混乱か、ま…

既視の海
1年前
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【5通目】小説が先か、映画が先か——ジョルジュ・シムノン『仕立て屋の恋』【書評】

拝啓 昨晩は今年最後の満月でした。ご覧になりましたか? ただ正直にいえば、満月よりも、ち…

既視の海
1年前
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【4通目】静けさからうまれる愛——クリストフ・バタイユ『安南 愛の王国』【書評】

拝啓 一年でもっとも澄んだ空がみられる季節になりました。暖かさを求めてお日さまの方ばかり…

既視の海
1年前
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【3通目】空虚だからこそ悪がはびこる——アメリー・ノートン『午後四時の男』【書評…

拝啓 いくら師走になったからといって、そんなに急ぐことはないのにと独りごちました。窓の外…

既視の海
1年前
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読書と言葉が「生」を照らす——M・オンダーチェ『イギリス人の患者』

拝啓 昨夜は屋根に激しく打ちつけていた雨も明け方には上がり、いまはすっかり晩秋の日差しと…

既視の海
1年前
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ひとりの本好きが、本好きの友だちに出す手紙

はじめまして。 まだ名も知らぬあなたに、このような手紙を書く不躾さをお許しください。驚かれたでしょう。 庭のもみじは半分色づきました。週明けにはすべて赤く染まるでしょう。左後肢に障害のあるわが家の愛犬も、日なたぼっこが気持ちいいようです。秋も深まってきたのでしょう。 あなたにこうして手紙を書く理由。話せば長くなるでしょう。でも恥ずかしさを捨てて勇気を出して書くならば、きっかけは書評を書こうと思ったことです。 書評。読書家であれば、書こうと考えるのは一度や二度ではないで