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フードパントリーって知っていますか ?(前編)~板橋街かどフードパントリーに行ってみた~

研究員 寺田 奈津美

こんにちは。今回は板橋にある「街かどフードパントリー」という場所を見学させていただき、スタッフさんに活動の内容などについて詳しくお話を伺ってきました。実際に行ってみて、街かどフードパントリーは利用者にとっては既存のパントリー以上に便利に、安心して食品支援を受けることができ、行政側から見ると包括的・継続的な支援につながる取り組みだということがわかりました。以下では詳しい取り組みの内容についてご紹介します。
なお、流通経済研究所では、食品ロス削減の取り組みの一環として、フードバンク支援事業を行っています。

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1. フードパントリーとは?

 「フードパントリー」とは、企業、個人、フードバンクなどから食品の寄贈を受けて、必要としている個人へ食品提供を行う活動のことです。似た言葉として「フードバンク」は知っているという方は多いかもしれませんが、フードバンクとフードパントリーの違いは、フードバンクの食品提供先は子ども食堂や福祉施設、個人など多岐にわたるのに対し、フードパントリーは個人を対象に食品提供を行うという点です。どちらも、食品ロスになってしまいそうな食品を必要な人のもとに届けるという目的は同じです。
 では、板橋街かどフードパントリーは具体的にどんな場所なのでしょうか?

2. 板橋街かどフードパントリーの活動内容

 街かどフードパントリーは、板橋区の発表によると[i]、2023年6月28日に東京23区初の常設型のフードパントリーとして運用が開始されました。板橋区の「生活困窮者等食品・相談支援事業」として、パントリーを活用した食品支援と、生活の困りごと等を解決につなげる相談支援を併せた取り組みとして実施されています。パントリーの利用登録は、生活困窮者自立相談支援機関(いたばし暮らしのサポートセンター)が窓口となっており、パントリーの管理運営は板橋区社会福祉協議会が担っています。支援機関と連携することで、支援が必要な方へ食品面から的確な支援を行うとともに、困りごとを抱える区民の方との接点を増やし、幅広い支援に繋げていきたいという狙いがあるそうです。

  フードパントリーを利用できるのは板橋区にお住まいのひとり親家庭や生活困窮者支援を受けている方で、食品支援・相談支援の両方を希望する方が対象となっており、「いたばし暮らしのサポートセンター」の窓口で利用登録をする必要があります。利用は月に1回までで、登録は1年ごとに更新が必要です。配布される食品は、その時々によって量や種類は異なりますが、お米、カップ麺、レトルト食品、お菓子、飲料水、災害備蓄品等があります。

 運用開始から2023年11月までに113人が登録していて、現在は月90人の利用があり、利用者は月に20人程度のペースで増えているそうです。食品の寄贈企業・団体は主に板橋区の地元企業ですが、全国展開する外食チェーンや生協、保険企業など様々な企業が活動に参加しています。

3. 実際にフードパントリーを体験してみた

 外観は、街かどフードパントリーのロゴマークが目印になっています。中の様子は見えなくなっているので、周りの目を気にせずに食品を受け取ることができます。

 専用サイトで事前に利用日時を登録すると、事前にメールで入室番号の連絡がきます。9時から10時までは30分ごとに1世帯が専用で利用できる枠となっており、10時から17時までは入室番号は共通で、いつ受け取りに来てもよいフリー枠に設定されています。登録制なので、安心して利用できますね。

[写真左]フードパントリーを外から見た様子
[写真右]パントリーの入り口

 出入口はスマートロックとなっており、入室番号を入力して解錠します。中に入ると、かごを取り、棚から指定された数の食品を選んでいきます。お菓子や飲み物、お米、レトルト食品、カップ麺、冷蔵庫には冷蔵品など、様々な種類の食品が用意されていました。いろいろな食品を受け取ることができ、選ぶのも楽しかったです。

パントリー内の様子

 食品をすべて選び終わったら、レジ台で食品を登録します。家族で受け取りに来ると、子どもたちも一緒に食品選びや、レジ作業を楽しめそうです😃

レジ台はこんな感じです
加工食品やお菓子などをチョイスしてみました
選んだ食品は買い物カゴに入れ、レジ台で商品を登録します


 また、生理用品が置かれていたり、可愛いメッセージカードとともに飴が置かれていたりと、スタッフさんの細かい心配りがとても素敵だな、と思いました。

[写真左]衛生面、プライバシー面に配慮した商品陳列
[写真右]スタッフさんからのあたたかいメッセージ🍬

 登録が終わったら、食品をマイバッグに入れて、受け取り完了です。利用方法は壁やレジ台の上などにわかりやすく掲示してありますが、初めて利用する方や高齢者には利用方法がわからなかったり、戸惑ったりする方もいらっしゃるそうです。そのような場合は、レジ台の上のベルを鳴らせばスタッフの方に助けていただけるとのことで、安心して利用できそうです。パントリーの周りは壁で囲まれており、すりガラスや目隠しの布で外から見えないようになっているため、周りの人の目を気にせずに食品を受け取ることができます。

 [写真左]さまざまな業種の食品寄贈企業
[写真右]見学の様子(写真左は板橋社協の山田さん)

4. 運営スタッフさんから利用状況等のお話をうかがいました

 パントリーを運営している板橋社会福祉協議会では、寄贈食品の在庫管理、賞味期限管理、食品の補充作業、寄贈企業や社会福祉法人との連絡、利用予約等の対応を行っています。運営スタッフの方は食品がなくなったらその都度補充をし、月に一度棚卸を行うそうです。また、食品の十分な保管スペースの確保が課題となっており、パントリーの裏に補充用の食品の保管場所がありますが、すべての寄贈食品を置くことはできないため、協力して下さる区内6カ所の社会福祉法人の倉庫に食品を保管しているとのこと。倉庫からパントリーまでの輸送はパントリーの運営スタッフさんが行っているそうです。パントリー内の在庫も現在は運営スタッフの方がしっかり人手をかけてメンテナンスしているそうですが、こちらは現在導入されているシステムの活用によって効率化が進むのではないかと思いました。

 非対面式のパントリーのため、利用しているときには気づきませんでしたが、板橋社協のスタッフさんや、社会福祉法人、食品寄贈企業など裏方で支えてくださっている方がたくさんいるのだな、ということがわかりました。また、比較的省スペースでの実施が可能なため、ほかの地域でも設置することができそうだと感じました。

5. 他のパントリーとの違い

 街かどフードパントリーの特徴は、食品を受け取る人のプライバシーが守られているという点です。食品寄贈を受け取るときに、恥ずかしさや申し訳なさを感じてしまったり、周りの人の目が気になってしまったりする場合があります。街かどフードパントリーではそのような心理的負担が少ない環境で食品を受け取ることができる点が、食品配布会や他のフードパントリーとの大きな違いです。また、好きな時間に食品を受け取ることができる点も、利用者の利用しやすいポイントの一つです。

 支援を行う側のメリットとしては、継続的な支援を行うことで、食以外の生活の問題も把握し、支援のアプローチを広げることができるようになるということです。食品配布会などでは配布対象者は不問でイベント的な要素が強く、継続的な支援にはならないという問題がありました。フードパントリーでは利用者は登録した人限定で、定期的な食品支援を行うことで、生活困窮者の方との継続的なつながりを作り、家計や就労など別の面での支援も含めた多面的な支援を可能にしています。

6. 終わりに

 今回は板橋街かどフードパントリーにお邪魔して、その活動や利用方法について取材してきましたが、利用者側もより便利に、安心して食品支援を受けることができ、行政側も包括的・継続的な支援につながる取り組みだということがわかりました。

 この記事を読んで、フードパントリー活動に興味を持たれた方、食品寄贈をしてみたいと思われた方は、板橋街かどフードパントリーのホームページをぜひ一度ご覧いただければと思います。

※後編では、板橋フードパントリーを運営する板橋社会福祉協議会の活動についてご紹介します。

【板橋街かどフードパントリー】

設置場所:板橋区情報処理センター1階ロビー(板橋区板橋二丁目65番6号)
フードパントリー利用可能日時:平日9時から17時まで
(土日祝日・年末年始を除く、情報処理センターの開庁日)
板橋区ホームページ食品・相談支援事業 街かどフードパントリー👇

食品支援・相談支援窓口(いたばし暮らしのサポートセンター板橋本部) 電話:03-6912-4591

〈注釈〉

i  板橋区報道発表資料