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食のサプライチェーンのDXサービス最前線

こんにちは。食のサプライチェーンで実際に活用されているサービスをご存じですか?『流通情報』2023年9月号では、新しい技術を活用したサービスにフォーカスして、食のサプライチェーンのDX 動向を解説しています。
ここでは、そのポイントを紹介します。


「食のサプライチェーンのDXサービス最前線」のポイント

スマートフードチェーンプラットフォーム「ukabis(ウカビス)」

需要予測型自動発注サービス「sinops(シノプス)」

✔小売業・メーカー視点でみるリテールメディア~日本市場の特性~

✔加工食品流通におけるRFIDの活用~実証実験の結果から~

ここからは、『流通情報』2023年9月号に掲載の「特集にあたって」を《全文公開》します!

「食のサプライチェーンのDXサービス最前線」をもう少し詳しくご紹介します

(公財)流通経済研究所 農業・物流・地域部門 部門長/主席研究員
折笠俊輔
(『流通情報』9月号「特集にあたって」より一部加筆)

 デジタルトランスフォーメーション(以降、DX と記載)が叫ばれて久しい。IT やシステムなどの技術革新が激しい、いわゆる「テック系」については、よくバズワードと言われるような一時的に流行する言葉が生まれる。ここ最近でも、ビッグデータや、ブロックチェーン、AI、IoT など枚挙に暇がないほどの流行ワードが生み出されている。おそらく、DX もその一つかもしれない―と思いつつも、実は、これらの流行ワードにも大きな流れが見られるのである。

 およそ10年以上前、流行したワードはビッグデータであった。その後、IoT などが話題となり、現在はAI やDX などが流行している。ブロックチェーンにおいては、最近はブロックチェーンそのものよりも、NFT やDAO などが流行語となっている(それぞれのワードの詳細は、ここでは説明しない。
ぜひ流行ワードの一つであるChatGPT などに聞いてみて欲しい)。

 これらの流れから分かることは、一昔前は、「データの取得方法(例:ビッグデータ、IoT)」、「データの取り扱い方法(例:ブロックチェーン)」といった技術が流行ワードになっていたが、現在では「データの活用技術( 例:AI、NFT、DAO)」、「データの活用目的(例:DX)」などが流行ワードになっている、ということである。これはまさに、データの取得や取り扱いの技術が一般化したなかで、現在はその活用方法や、それによる事業革新(≒ DX)が求められていることの証左であろう。

 そこで、今回は特集のテーマを「食のサプライチェーンのDX サービス最前線」とした。単なる最新の技術紹介ではなく、新しい技術を活用したサービスにフォーカスしたいという意図である。新しい様々な技術は、食のサプライチェーンを構成する生産者、メーカー、卸売業、小売業といった各段階のプレーヤーにとって、手段であって目的ではない。最も重要なことは、「その技術を、どのように使って自社に便益をもたらすか」ということなのである。よって、本特集の各論説は具体的なソリューションやサービスとして利用できるもの、社会実装が進んでいるものを掲載している。最新の技術動向を特集することも、とても大切ではあるものの、DX サービスとして利用が進んでいくサービスやソリューションを特集し、実際の業務課題に対して、どういった技術が利用され、どういったサービスとして対応が可能であるかを知ることは、実務上、有用だと言える。

 では、ここでそれぞれの論文を紹介しよう。

○食のサプライチェーンのDX 動向とスマートフードチェーン

 まずは、拙著の「食のサプライチェーンのDX 動向とスマートフードチェーン」である。
 本稿では、食のサプライチェーンのDX 動向について、現在の食品流通の課題を確認したうえで、食のサプライチェーンのDXにおける技術開発の動向を、①データ連携、②履歴取得、③見えないものを見る、④自動化による工数削減、の4つの視点から、具体的なサービス名なども交えて整理を行った。これは、食のDXの全体像をとらえるヒントになるだろう。
 また、後半では、スマートフードチェーンプラットフォーム「ukabis」について具体的に紹介している。

○小売店舗の需要予測データを軸としたサプライチェーンの適正化

 岡本氏の「小売店舗の需要予測データを軸としたサプライチェーンの適正化」では、シノプス社が展開する需要予測型自動発注サービス「sinops」について、具体的に説明している。重要なポイントは、本稿では、値引き・
廃棄ロスの削減、利益率の改善といった効果にまで言及している点である。単なる技術の説明ではなく、ソリューションの紹介だからこそ、効果まで言及することができる。今後、同社が目指す小売企業の需要予測データを卸
売業や製造業までつなげることで「川上からの物流コスト削減」を目指す「デマンドチェーンマネジメント」(DCM)には、大きな期待が寄せられている。

○日本におけるリテールメディアの取り組み方

 望月氏による「日本におけるリテールメディアの取り組み方」では、日本ではデジタル広告のなかでも、取り組みが弱いリテールメディアを、①リテールメディアの場所がデジタル面、かつ主体が小売企業、②コンテンツ
および広告の配信管理が可能、③会員情報(ID-POS)との連携が可能(任意)と定義し、海外での活用動向も踏まえながら、日本市場において、どのようにリテールメディアに向き合うべきなのか、日本独自のリテール環境
も考慮の上、小売企業やメーカーの視点から考察している。

○RFIDを活用した加工食品流通の効率化の方向性

 田代の「RFID を活用した加工食品流通の効率化の方向性」では、具体的な電子タグに関わる実証実験の結果を踏まえたRFID の活用に焦点をあて、加工食品流通の効率化について整理している。さらに、RFID 等の新技術導入による効率化を図るために考慮すべき事項として、①コスト、②標準化、③導入のメリット共有の3項目を導出している。

 以上、本稿では、食のサプライチェーン全体のデータ連携を行うプラットフォームであるukabis、サプライチェーンの需要予測に基づく自動発注システムsinops、新たなデジタル広告として活用が進むであろうリテールメディア、中間流通における物流等でさらなる活用が見込まれるRFID について、詳細な説明と活用のメリット等について整理した。
 それぞれのサービスやソリューションの発展が、サプライチェーンの各段階のプレーヤーのDX を加速していくだろう。

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