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「ありがとう」が会社の何かを変えるかも!?~コミュニティフリッジ草加に行ってみた~

公益財団法人流通経済研究所
研究員 寺田 奈津美

 こんにちは。今回は、スーパーに併設されている「コミュニティフリッジ草加」にやって来ました。

コミュニティフリッジ草加 外観

コミュニティフリッジ草加とは?

 今回案内してくださるのは、草加商工会議所青年部の植田さんです。

―ここはどのような施設なのでしょうか。

植田さん:商工会議所が運営するコミュニティフリッジ(共同冷蔵庫)です。スーパーや百貨店などから食品を持ち込んでもらい、それを必要とする人が受け取りに来る場所です。食品の在庫管理や品出しは、障害者施設の方々にお願いしています。商工会議所や銀行からの寄付金なども財源としながら、運営しています。

コミュニティフリッジ 草加 入口

 コミュニティフリッジの中にご案内いただきました。
中にはコーラやおつまみ各種、冷凍ポテトなどがたくさん並んでいました。無償で持ち帰ることができる食品がこんなに多いのには驚きました。

充実の食品類

「SDGsや食品ロス削減のために何かしなければ」という気持ちから始めたコミュニティフリッジ

 この施設の管理にかかわっている植田さんにコミュニティフリッジを始めた経緯などをうかがいました。

草加商工会議所青年部 植田さん

―どのようなきっかけでこのコミュニティフリッジを作られたのですか。

植田さん:私はもともとスーパーマーケットの経営者でした。その当時からSDGsや食品ロス削減のために何かできないかと常々考えていました。スーパーでは実際に「フードリカバリースーパー」をコンセプトとして掲げ、規格外野菜や賞味期限が迫った食品の積極的な仕入れ・販売などに力を入れていました。
 一方で、そうはいってもロスは出ます。その際に、商品の受け手としてフードバンクなどがありますが、一定の賞味期限が残っている必要があるなど、われわれの売り場で出てしまう売れ残り品の持ち込み先にはなりにくいところがありました。そこで、店舗のすぐ脇にそうした寄贈食品を置くスペースを作ることで、ロスになりそうな食品を必要な人に届ける仕組みを作ることができるのではないかと考えました。

―SDGsのため、食品ロス削減のために貢献したいという気持ちがあっても、実際の行動に移すのは、簡単なことではありません。SDGsを自分事としてとらえ、実際に行動に移されている素晴らしい活動だと思います。
それでは、コミュニティフリッジの仕組みは、どのようになっているのでしょうか。

コミュニティフリッジを通じた人との出会いとたくさんの「ありがとう」

―ここにある食品はどこから来るのですか。

植田さん:ここにはコストコや高島屋、地元のせんべいメーカーなどから提供された食品が並んでいます。
 また、地元の提供メーカーをもっと増やしたいと思っています。それは、地域の取り組みである以上、地域の人々を支えるのは地域の企業の役割だと思っていて、そういう考え方に共感してくれる企業をもっと増やしたいと思っているからです。
 現在は、コストコなどを含めて、約30社からの提供を受けています。利用食数は、初年度(2022年度)は約19,000食でしたが、現在では利用登録世帯数が600世帯を超えるなど増加傾向にあり、食品提供量も確実に増加しています。また、1日平均20世帯ほどがフリッジを訪れます。

利用者からのひと言

―この取り組みをやってよかったことは何ですか。また、今後の夢はありますか。

植田さん:上記のメモは、食品を引き取りに来た人が書き残してくださるものです。「ありがとう」というような感謝の気持ちもたくさん書かれています。
 食品ロス削減ももちろん大事ですが、それ以上に人と人との出会いや、それに対する責任というものを感じることが多く、食品ロス削減を通じて人の出会いを作っていく活動を続けていきたいと感じました。スーパーの仕事をしていると、お客様から「ありがとう」とお声がけいただくことはそれほど多くありません。しかし、コミュニティフリッジの利用者の方からは、日々「ありがとう」という言葉をいただき、とてもうれしいと思うと同時に、必要としている人に食品を届けなければならいと感じています。

コミュニティフリッジ草加の今後の展望:誰でも無料で使えるコミュニティフリッジを全国へ

日本中にコミュニティフリッジを!

植田さん:現在、草加で日本フードリカバリー協会という団体を設立して活動しています。
 しかし、社会問題を解決するためには、草加という一つの地域だけでなく、どこの地域の人でも、誰でも、無料で使うことができるような、コミュニティフリッジの運用ができるシステム、仕組みの提供が必要です。私はそういったものを整備して、日本中誰でもコミュニティフリッジを使用できる状態を実現したいと思っています。

―システムを公共財として社会に還元していくという志の大きさに驚きました。この夢の達成のために今はどのようなことに取り組んでいらっしゃいますか。

植田さん:最も問題になるのは、フリッジに集める食品の保管と品出しです。品出しについては、障害者施設の支援を得て、現在軌道に乗っています。物流についても、われわれの取り組みに共感して、在庫や輸配送の協力を名乗り出てくださる物流会社があります。私はこうした物流会社に対して、メーカーが廃棄費用を負担せずに済んだ分だけの費用負担や寄付を行うことで、食品企業から物流会社を経由してフリッジまでのものの流れが確立できるようになれば、コミュニティフリッジの全国への普及(または全国展開)は成し遂げられると思っています。
 そのためにまず、埼玉県内のフードバンク10団体ほどを集めて説明会を開き、物流会社と連携するタイプの普及型公共冷蔵庫の構想を半年中にまとめて、物流会社と具体的な詰めの話をしていきたいと考えています。これが当面の目標です。

まとめ

 商工会議所の中でも、こうした植田さんの取り組みに共鳴して、協力企業が拡大すると良いですね。とくに、食品廃棄物排出企業が排出コストを削減できる分を寄付するということがもっと当たり前になるといいなと強く感じました。
 SDGsの取り組みとなると何にとりくむべきかわからないという食品小売企業も多いのではないかと思いますが、そうした場合、コミュニティフリッジやフードバンクなど、地域で意欲的な取り組みをしている企業や団体を支援することを検討してみてはいかがでしょうか。

 
たくさんの「ありがとう」が、会社の何かを変えるかも!?

お問い合わせは運営機関の草加商工会議所まで👇

草加商工会議所
TEL 048-928-8111

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