リボンナポリンはなんの味

せっかくnoteを始めたのに体調不良でだいぶ間が空いてしまった。

さて、北海道のソウルドリンクといったらリボンナポリンである。

リボンナポリンとはポッカサッポロが北海道限定で販売している炭酸飲料である。東京に住んでいても道外での認知度はどれくらいなのかはよくわからない。知る限り都内のアンテナショップや北海道物産展に行けばほぼ確実に置いてあるから、東京でも需要は高いと見た。しかし友人知人との間でリボンナポリンが話題にのぼったことはないし、北海道でも誰かが飲んでいるのを見かける機会はあまりない。だからなんとなく自分だけの飲み物のような感覚がある。

リボンナポリンは他に似たものがないため説明しにくい味をしていて、オレンジ色の甘い飲み物だが、オレンジ味ではない。個人的な感覚でいうと「夏の味」である。夏休みに北海道に行くと、祖父母がいつも車庫で焼肉をしてくれて、そのときによく飲んでいた(だから私はけっこうな年齢になるまで、焼肉は夏の食べ物で、庭先や車庫でやるのが一般的なものだと思っていた)。夕方まだ明るいうちから準備が始まる。車庫から車を出して家の前に停め、空いた車庫の中にじゅうたんを敷き、さらにその上に折りたたみテーブルを並べて、親戚みんなで囲むのである。祖母が台所で材料を仕込んでは勝手口から車庫へせっせと運び、祖父がそれを車庫の入り口に置いたバーベキューコンロでどんどん焼いてくれた。ジンギスカンもあったしそれ以外の肉も野菜もあったが、どれもこれもベル食品の「成吉思汗」(また別途書きたいがこれも道民のソウルフード)というたれにつけた。大人はビール、子供たちはリボンナポリンを飲みながら食べる。たくさん食べてえらいねと言われたいから競うように食べて飲む。焼き肉が終わると庭で花火もした。

さてそんな思い入れの深いリボンナポリン、前述したように北海道限定といいつつその気になれば都内でも比較的容易に手に入る。でも、なんでもない時に飲んでしまうと特別感が薄まってしまうような気がして、普段は極力飲まず、北海道に行った時だけ飲むよう努力している。東京で飲んでしまっては、東京でのさして趣もないしょうもない思い出が意図せず上書きされてしまいかねない。北海道に居さえすればなにごとも全部北海道の思い出だから、リボンナポリンの醍醐味もより豊かになるものと信じている。

だから道内で飲食店に入った時などは、ドリンクの選択肢にリボンナポリンがあればすかさず頼む。最近ではサッポロビール園でジンギスカンを食べた際世話になった。ソフトドリンクだが炭酸だし色もきれいなので、乾杯もそれっぽくなるし、なんとなく肉にも合う気がする(だから祖父母も焼肉のときに用意してくれていたのかもしれない)。そうやってリボンナポリンに北海道の良い思い出だけを少しずつ追加させていくのである。ちなみにサッポロビール園のメニューに「ナポリンサワー」なんていうのもあったが、私はアルコールがダメなのでそれは今後も試さないと思う。

なお、こんなに語っておきながら、今の私はリボンナポリンがどんな味か思い出せない。不思議なことに、少し離れただけですぐ忘れてしまうのである。レモンやワサビを想像しただけでよだれがたくさん出てくるように、大概の飲食物は味を思い出せる。妊娠中の悪阻なんかその最たるもので、食べ物の写真や映像を見ただけで脳内に味と匂いが忠実に再現されてしまい、勝手に気持ち悪くなったりした。なのにリボンナポリンだけはなぜか思い出せなくて、そのくせ飲んだら「あーこれこれ」と思う。そういう設計になっているのだろうか。ほかのリボンナポリンファンも同じだろうか。悔しいから、みんな同じであってほしい。

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