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超伝導体は世界を変えるのか? LK-99のポテンシャルとブロックチェーン技術への影響

韓国の量子エネルギー研究センター(Q-Centre)は7月下旬に、LK-99という物質が通常温度・圧力下で「超伝導体」になり得る可能性を発表し、科学界が震撼しています。

超伝導体とは、エネルギーの損失(抵抗)なく電力を伝送する物体のことを指します。しかし、これまでの超伝導体は極低温でしか機能しなかったため、その応用範囲は非常に限定的でした。

私たちの身近にある電線・家電のコードは電気を通しやすい銅が使用されていますが、電気抵抗があるため熱を発します。熱が発生すると、その分のエネルギーが伝わらずに損失されます。PCやゲームセットなど家電製品が時折熱くなるのも、このような抵抗が原因です。

しかし、常温での超伝導が可能になれば、その影響は計り知れません。エネルギーの伝送と使用の効率が大幅に向上し、電力消費を削減することが可能になります。そして海外のweb3コミュニティではもしこの技術が実装されれば、ブロックチェーンの効率・スケーラビリティなどが遥かに向上するのではないかという期待が高まっています。


ブロックチェーン技術への影響

エネルギー効率

ビットコインをはじめとする暗号資産のマイニングは、その高いエネルギーコストが長らく問題視されてきました。超伝導体を搭載するマシンによってマイニングプロセスの効率化だけでなく、ブロックチェーントランザクション全般のエネルギーコスト削減が期待されます。

速度とスケーラビリティ

ブロックチェーン実用化における問題点として度々引き合いに出されるのが、その処理効率性とスケーラビリティの難易度です。室温で機能する超伝導体実用化は通信を高速化し、これらの問題を緩和することに一役買うかもしれません。

量子コンピューティング&セキュリティ

量子コンピューティングの進歩は、現在の公開鍵暗号アルゴリズムが解読可能になるという新たな脅威をもたらしています。しかし、その対策の研究もいくつか進んでいます。すでに著名な研究機関では、「量子コンピュータ耐性」を持つ新しい暗号アルゴリズムの開発が進められています。さらに、暗号化強度を上げることで、一部の既存の暗号化技術も「量子コンピュータ耐性」を持つことが可能になります。256ビット以上のセキュリティを持つAES(Advanced Encryption Standard)暗号はその一例で、「量子耐性」があると言われています。

量子メモリ技術の応用

しかしその逆も可能で、超伝導体によって駆動する量子コンピュータは、量子暗号化によって既存の暗号化方法では不可能なレベルのセキュリティを提供することができます。すでに量子もつれの一過性を利用した「量子ブロックチェーンなるものが考案されています。

事例

イーサリアムは「量子コンピューターがブロックチェーンに脅威を及ぼし得るのは少なくとも数十年かかる」としているものの、すでに量子耐性を持った署名(signature)機能を開発しています。イーサリアム財団のJustin Drake氏は、2027年を目処にイーサリアムはzk-SNARKSからZK-STARKsプロトコルへの移行を完了(Ethereum 3.0)する予定だと話しています。両方ともゼロ知識証明を用いてトランザクションの匿名性を維持するメソッドですが、後者のZK-STARKsプロトコルは量子コンピューターが破れるような計算暗号システムを導入していないため、量子耐性が強いとされています。

(参考:https://bitcoin.dmm.com/column/0251

懐疑的な声

LK-99の話題は世界中から注目を集めていますが各所での再現実験は功を奏しておらず、科学誌Natureはその実証性を疑問視しています

中国の東南大学の研究チームは再現実験で、マイナス163°CでLK-99の抵抗がゼロになることを確認しましたが、とても「室温」と呼べる範囲内の温度ではありません。

LK-99については現在(8月8日時点)でも議論が紛糾していますが、専門家の見解を踏まえるとLK-99がそのまま実装可能な超伝導体になり得る可能性は低いといえます。

結論

室温で機能する超伝導体の発見は、ブロックチェーン技術を含むあらゆる分野でのゲームチェンジャーとなり得るものの、今回発見されたLK-99の室温超伝導性が実証されるかどうかは分かりません。

たとえ今回の実験に再現性がなかったとしても、LK-99は電気抵抗がゼロに近く磁気で浮く反磁性をもつ物質であることは確かなので、超伝導分野での大きな前進になったことは確かです。

超伝導体がもたらすイノベーションの数々は想像もつきませんが、その実現は遠くないようです。

ブロックチェーンや、その他web3事業についてお悩みのある方はぜひDeFimansへご相談下さい!

(勉強会:北野、文:山田)


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