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Galaxy Interactive Richard Kim氏が語る、web3ゲームエコノミーの十戒(part 2/3)

part1はこちらです。前回に引き続き、Richard Kim氏の"Can Joy be Financialized as a Positive-Sum Game?"の日本語まとめです!



4:フィアット交換解禁時点で、全てのゲーム内通貨がプレイヤーの手にあること

プレイヤーは、自分らや開発者の手の届かないランダムな外的圧力によって自分たちの体験が損なわれるということを嫌う。ゲーム内トークンがフィアットと交換可能になった時点で全てのトークンがユーザーに所有されていれば、その後に続く価格変動はユーザーの主体性を高めるものと捉えられる可能性が高い。また、ゲームワールドに積極的に参加しない初期投資家の取引フローがユーザー体験に悪影響を与えるリスクも軽減される。

ゲーム環境が面白みを生むために必要なのは、複雑すぎない、プレイヤーの興味を惹きつけるゲーム内タスクの存在だ。これらのタスク(スキル進捗、アイテム獲得)を成し遂げていくことこそがユーザーにとっての幸福体験である。

オープンエコノミーがゲーム体験にもたらすランダム性が高すぎる、スキル進捗が進まないとプレイヤーが感じれば、外へ逃げてしまう。そのため、初期の段階においてはトークン取引を 「インワールドの人物(=プレイヤーと運営)」に限定することが鍵となる。

5:健全なゲームエコノミーを保つために、全てのゲーム内プロダクトはプレイヤー側によって制作されるべし

暗号資産のやり取りによって生じるユーザー軋轢を避けるために、吊り上げられた値段で販売しているトークンやNFTの使用を任意とする(と同時に主要な収益化メカニズム としてフィアットによるアプリ内購入を維持する)ことは初期のweb3ゲームが犯した致命的な間違いだった。これはフィアットおよびトークンの悪いところ取りとなってしまっている。

また、開発者側の過剰介入も大きな問題だ。運営がゲーム内プロダクトをどしどし直接販売するようになった場合、プレイヤー主導型経済の没入感をどのように維持するかという問題が生じる。

販売されているプロダクトがゲーム内土地などの生産手段である場合には、なおさら注意が必要だ。個人的には、戦闘こそ最高の仲介者だと考えている。土地をはじめとする希少な資源を戦争によって奪い合うのはある意味、人間の本質だ。

6:マネタリーポリシーを徹底せよ(中央銀行とトレジャリーの役割分担)

web3ゲーム運営における大きな間違いの一つは、トレジャリーと中央銀行の役割をごちゃ混ぜにしてしまうことだ。

トレジャリーは、マーケットプレイスでの取引の一定割合を収益化する。トークン・NFT・その他ゲーム内プロダクト、いかなる形態の「Pay to Win」プログレッション(勝利報酬)やパワーバフも販売しない。なぜなら、これらのアクションはプレイヤー主体のエコノミーを邪魔してしまうためだ。米国財務省が国債の入札を募るのと同じように、収益化された利益分は、逆ダッチオークション(極端な低値から開始されるオークション)を通じて定期的にフィアットに戻される。この資金によって開発側はゲームのサービスを継続し、コンテンツの R&D に投資することができる。

中央銀行は、安定した金融政策を追求するよう努め、プレイヤー基盤の収縮と拡大に伴い、投資ルート(ゲーム内トークン・プロダクト購入)から出資ルート(トークン・プロダクト消費)までの資金フローが一貫している状態を維持する。新規発行されたトークンおよびゲーム内プロダクトが全てユーザーに分配されることにより、トークンとそれに紐づくプロジェクトの成長を期待する投資家を引き寄せることができる。

なお、これは言うほど簡単なことではない。オープンエコノミーゲームの開発者は、発行初期から自社トークンがフィアットと変動相場を保っているかのように振る舞う必要がある。

私が注目しているのは、スキルベースのゲームや賭けループ、あるいは災害や戦争に繋がるような条件など、ゲーム内における破壊的な出資ルートの存在である。数十年にわたって最も強力な出資ルートを持つゲーム(「EVE Online」)が、次の火山噴火による存亡の危機に常にさらされている国で生まれたことは偶然ではないだろう。

一つ確かなことは、ゲーム内トークン・プロダクトの利用を任意にしてユーザーにフィアットでのゲーム内アイテムの購入を許可すれば、そのゲームのトークンエコノミーは死ぬ運命にある。トークンに持続的な価値が付加されないことがそこで決定してしまう。

7:法的認可の対象となる、デジタル空間上での組合を形成せよ

理論上は、デジタルスペース上で生まれた利益を、組合を通して個々のメンバーに還元することは可能である。組合は、証券法に違反することなく(合法的に)ユーザーに経済的・ガバナンス権限を還元する手段としての可能性を大いに秘めている。

現実世界における法的強制力を持つ、バーチャル空間での組合を構築できれば多くの副次的要素を解き放つことができる。ゲーミングギルドは緩い結びつきで保たれているバーチャルな社会的集団から、ゲームリソースの自動的分配を行う組合へと変身を遂げることができる。運営側における人材、バランスシート、損益計算書などを通常企業のように調達できるようになる。


→part3に続きます!

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原文:Richard Kim、翻訳・編集:山田

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