円満退社に至った、2つの事例
ストレスチェックシステム「LONTA」の導入目的として、
離職を減らすこと、があります。
今の時代、同じ会社で生涯働き続ける人の方が
少ないわけで、多くの方が転職を経験します。
私自身も起業前に2回、転職を経験していますし、
多くの方々の離職にも関わってきました。
今回は、「離職」について、私の実体験からの
学びを書かせていただきました。
■ 転職希望者数が増えている
弊社は、企業研修を提供し、人の成長を支援しています。
研修提供後、しばらくして、
参加してくださった社員の方から、
「退職します」
と連絡を頂くことがあります。
2020年はコロナ影響で先行き不安もあるためか、
私の周りでは、社員の退職といった、
人の動きが少なかったように感じています。
ところが、在宅ワークで、
自己内省したり、情報収集する時間が増えた影響なのか、
ここ最近は、そういった退職の話を聞く機会が増えてきました。
調べてみると転職希望者の数が、
前年同月対比で、107.4%と増加していました。
ちなみに求人数は前年同月対比で、70.4%と
回復傾向にはあるものの、まだまだです。
退職者が増えてくると、人事は、
「なぜ退職するのですか?」
という面談機会を増やし、対策へと動きます。
しかし、
・退職意思が高まってからでは本音が出にくい。
・1人の退職理由ですら、複雑に要因が絡まっている。
といった、ぶ厚い壁にぶち当たり、
なかなか課題抽出が進まないものです。
<参考資料>
2020年10月度 転職求人倍率レポート
■ 人が最短で我慢できなくなるもの
退職理由の圧倒的第一位は、
「人間関係」
です。
よくある話ですが、
退職を決意した人に理由を聞くと、
「新しいことにチャレンジしたくなったんです」
と言われるのですが、
退職後しばらくしてお会いすると、
「実は、職場の人間関係で悩んでいて、
それが引き金だったんです」
といった話を聴くことが何度もありました。
心理的にも、
人は仕事の大変さ、給料の安さ、仕事のやりがい
などは多少我慢ができたとしても、
『人間関係から生まれる強烈なストレスは、
最短で我慢できなくなる』
と言われています。
しかしながら、私自身の会社員時代の退職理由は、
2回とも、「人間関係」ではありませんでした。
どちらも
「今の働き方では、自分のやりたいことができない」
と感じてしまったことでした。
1回目は、心理学の資格取得のための時間を取りたい。
2回目は、起業したい。
でした。
どちらも人間関係には全く不満がなかったので、
むしろ私のわがままで職場の方々に
たくさんご迷惑をかけたと思っています。
思い返すと、「人間関係が原因」と一概には言い切れず、
人の退職理由は本当に様々だと感じます。
では、離職阻止について、
何が具体的な対策として有効なのでしょうか?
(写真:退職の意思を伝えたときの上司の笑顔は怖い・・・)
■ 円満退社、2つの事例
今の時代、生涯同じ会社で働き続ける人の方が
割合として少なく、多くの人は転職を経験しています。
ただ、企業にとっては従業員の退職は痛手であり、
一緒に働いてきた同僚は胸を痛めることもあります。
私自身、マネジメントを経験してきた中で、
円満退社と感じたケース、2つありました。
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<ケース1:キャリアプランや働き方について話せている状態>
日頃から、その人のキャリアプランや
理想の働き方について、話ができているかは重要でした。
そういった話をしていく中で、
「~~を完遂できたら退職したいです」
「退職は◎年後」
と目標や期限を設定してくれる人もいました。
そうすることで、本人もゴールを見据えて、
より全力で仕事に取り組んでくれますし、
周りのメンバーも引継ぎや仕組み化を進めてくれます。
そして、心の準備もできます。
結果、円満に退職され、その後も前職と良好な
人間関係を築く人をたくさん見てきました。
(写真:キャリアプランを掲げることは、そびえたつ城へ挑戦し続ける
ようなものだ。ん・・・ホグワーツ?)
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<ケース2:普段から「辞めたい」の声を聞けている状態>
変な感覚かもしれませんが、普段から、
「もう辞めたい」「転職したい」
と言っている人のほうが、安心できます。
言わない人のほうが、ある日突然退職を決意し、
そこからの引き留めは不可能でした。
退職意思を変えることはできなかったのです。
自分の精神状態、逃げ出したくなる気持ちを
周囲の人に素直に言えている人は、
すぐに退職しない人が多かったです。
心理的にも、人の行動のほとんどは
無意識の衝動に突き動かされています。
「退職したい」
という気持ちを周りに話すことによって、
「退職衝動」を抑えることもできていました。
ケース2の人が、次第にケース1へと移行ができ、
円満退社につながった経験があります。
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このケース1と2の共通点は、
「日頃から話せる相手が職場にいる」
です。
(写真:話せる相手がいつもそばにいた結果、悟りを開いた方の絵)
■ 本音を引き出す仕組みは必要か?
「話せる相手が職場にいる人ほど辞めない」
という僕自身の経験から、
コールセンターのセンター長時代は、
「クロス面談」
という取り組みをやっていました。
3~4か月に1回のペースで、直属の上長とは
別のマネージャーと「1対1」で話す場を用意します。
そこで仕事の悩み、将来のことなどを
自由に話してもらい、ときにはそこから、
直属の上長へ共有していました。
また、毎月『One on One』も行っていました。
『One on One』は、シリコンバレーでの事例から
注目され、今では多くの企業が取り入れています。
しかしながら、
・急成長企業は忙しい。そういった時間を確保することすら難しい。
・1対1だと本音を話せない。
といった声も出ていました。
起業して、様々な企業へ教育研修をご提供する中で、
同じような悩みをよく聞きます。
心理カウンセラーや外部コーチの役割が
ますます求められていると感じています。
しかしながら、ときどき、
「愚痴や不満を吸い上げても仕方ない」
と考える方もいらっしゃいます。
セールスフォースの創業者、マーク・ベニオフ氏の
エピソードでなるほど、と思うことがあったので、
最後にご紹介させてください。
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私はリーダーとして、みんなが言っていることよりも
言わない内容を気にすべきだと思っていた。
本当に憂慮しなければならないのは、みんなが不平不満を
口にしなくなるときだ。
それは、問題が隠蔽されている最初の兆候となる。
出典:「トレイルブレイザー」 マーク・ベニオフ著
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(写真:セールスフォースのマーク・ベニオフ社長。
トレイルブレイザーは、たくさんの学びがある本でした)
ふだんから、一緒に働く仲間の信頼関係を尊重すること。
ときには、愚痴や不満も貴重な意見として、
受け止めて、変えていこうとする組織力が
今の時代には求められている、と考えています。