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高齢者にとって一番のデンジャラスゾーンは自宅かもしれない

仕事を辞めて、昼間も家にいるようになって一番驚いたのが、セールスの多さ。先日、高齢者の名簿が9万件流出したとニュースで流れていたが、さもありなんという感じ。こんなにひっきりなしに電話がかかってくるのなら、判断力が低下している人は一発でやられてしまうだろう。

同居の父はいたって健康体だが、自分は頭がいいという変なプライドがあるせいか、すぐにコロリと騙される。

昨日も「NTTの委託業者のカネミツさんて人から電話があった。無料でネットの通信速度1MGを10MGに変更する工事をするから立ち会ってだって。契約者は娘だと言ったら、明日また電話してくるって」

「了解。その人が本当にNTTの委託業者かはわからないから、この手の電話がかかってきたら、とりあえず一旦、書面で資料を送れって返してね」と言ったら、短気な父はイライラし始めた。

父がイライラしだすと、性格がそっくりな私はすぐ伝播して、イライライライラする。

要は(前科がありすぎて)、また自分を疑った、このおいぼれめ、と思っているんだろうというのだ。いや、そんなこと思ってませんよ(ホントはすぐ騙されるしょーもない爺さんだと呆れてはいるけれど)と。

「この手の電話は、一度も書面を送ってきたことがない。どっかのプロバイダーが契約先を変えさせるのが目的でしょ」と私。

「カネミツさんはまともな人だったよ、説明もしっかりしていた。そんなに疑うなら、これからはお父さんが契約する。通信費も光熱費も水道も全て引き落としは僕の口座に今すぐ変更してくれ!」と怒りだした。

そりゃラッキーとは思ったけれど、火に油を注ぐだけなので、「カネミツさんが悪い人かは知らないよ。ただ、この手の電話は詐欺も多いからとりあえず、注意して」

何が不満なのか、爺さんもヒートアップして、なんだかんだと文句を言ってくる。

「ただ書類を取り寄せてって頼んだだけでしょ。じゃあ何? 電話で名乗っただけの人を家に上げて、詐欺にあったらどうするの? 警察に『誰が工事に来たのか』と聞かれたらカネミツさんと名乗っていた知らない人っていうわけ」と私も超トゲトゲ。

あとで娘に「ママも本当に大人げない。お爺ちゃんも優しく説明すればわかるんだから、そんな言い方するのやめなよ。あんまり怒ると、隠れてコソコソ契約しだすよ」とたしなめられた。

そうなのだ。父は一時期、PCの画面に「あなたのPCがウィルスに感染した」などと表示されると、すぐにうろたえてカード番号を入力してしまっていた。何度、カードの解約手続きを代行したことか。あまりにもすぐに騙されるので「何で学習しないかな」とキレてしまい、以来、変にコソコソしだした。自分ではニッチもサッチも行かなくなってきてから、ヘルプ要請をしてくるので、余計に大変だった。(一応、黄色信号は点滅するようで、大きな事故には至ってないのが幸い。いや、知らないだけで損害は出ているのかも)

不愉快だとプリプリ怒りながら自室に戻った爺さんは、自分が間違っていないことを証明しようとしたのか、NTTのお客様センターに電話をしていた。

一夜明けて。いつもは書斎にいる父が、今朝はずっとリビングで時間を潰している。さっきから何してるの?と聞いたら

「ハナコの言う通りだった。NTTに電話したら、NTTが無料で工事をすることはあり得ない。お嬢さんのおっしゃっていることが正しいだって」

ホレみたことか、とは言わずに「すごい、よくNTTの電話先がわかったね」とおだてたら、「お客様センターに電話すればいいんだよ」と得意げだった。騙されすぎて、少しは知恵がついたようだ。

というわけで、朝から父は「ふざけたことするな、と一言、怒ってやる」と、電話の前でカネミツさんを待ち構えているのだ。ヤレヤレである。
 


危険は電話だけではない。先日、わが家に蓄電池のセールスがきた。母が何度断っても、しつこくピンポーンと鳴らしてくる。私は自室でリモートワーク中だったが、母がすまなそうに「ちょっとしつこいから、出てくれない」と呼びに来た。

ドアを開けたら、若いあんちゃんが、げっという顔をした。高齢者だけの世帯だとおもったのだろう。「さっきから何回、インタフォーン鳴らしてるの?名刺は?」と言ったら、そそくさと帰って行った。

証券会社も要注意である。父に何度もしつこくセールスが入り、根負けして小口の契約をしていた。父はもう20年以上ネット証券で取引をしているから、セールスマンを介して取引する必要はないのだ。

「しつこいんだ」とぼやいているから、名刺の番号に「営業努力はわかりますが、高齢で日常生活以外の判断をすることに本人がストレスを感じている。セールスはこれきりにしてほしい」と電話した。

支店長が「急に電話しないのも、お父様がご心配されるといけないので、季節ごとのご挨拶はさせていただきたい」というから、「いえ、結構です。次にセールスしていると認識したら、即、消費者センターに通報しますから」と脅かした。

そしたら、この間、シレッと家に岡〇証券のウチワやティッシュが転がっていた。またセールスに来たというので、本店のお客様センターと消費者生活センターの両方に電話をした。おそらく、私が同居と知らずに、バレないとたかをくくったのだろう。

私の日常は、まるで番犬である。あっちこっちからくる怪しい電話やインタフォーンにワンワン ワンワンと吠えまくっている。正直、キリがない。高齢者だけの家庭は本当に大変だとおもう。

諸悪の根源はこの固定電話だと、廃止を宣言した。が、両親は「スマホの番号をしらない人から、かかってくるかもしれないから」「自治会は固定電話にかかってくるのよ」と、取り外すのだけはやめてくれ、という。確かにまだ両親あてに固定電話は日々鳴るのだ。

はぁぁ。

よくスーパーのソファで時間を潰しているお年寄りをみる。なんだかもの悲しいなぁとおもっていたけれど、最近はそうだよね、スーパーの方が安全だよね、と。






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