夢を叶えた五人のサムライ成功小説【川端雄平編】5

この作品は過去に書き上げた長編成功自己啓発ギャグ小説です。


数日が経過した。
今日は柴田の提案で雄平は彼女の由里と一緒に駅近郊のバーでディナーを楽しんでいた。


店内はシックな装いで洒落た外観が心を落ち着かせ、しんみりと夜を感じさせてくれる。

この日、初めて柴田は自身の身分を明かした。
名刺を受け取った雄平は、彼の肩書きを眼にして驚愕した。


そこにはこう記載されていて、雄平は()内の言葉が妙に気になって仕方がなかった。

アスカプロダクション

代表 サマンサ・柴田
(その他社長業様々 趣味 人助け)

アスカプロダクションといえば、スマッフや台風、タトーンなどといった人気アイドルグループを、次々と世に輩出させている有名な大手一流芸能プロダクションだ。


雄平と由里はキョトンとなり、目を見合わせた。


『雄平くん、由里ちゃん。この店の料理はどれも一品だが、ここに来る客たちはそれだけが目的でここに来ているわけじゃない』
ハァとだらしなく頷くだけの雄平。
素敵な人!と目を潤ませて柴田を見つめる由里。

『これから演奏が始まる』
『・・・演奏・・・ですか?』
『そうだ』
ナポリタンを頬張る。


MCの巧みなトークによる紹介で、音楽を純粋に愛するミュージシャンたちの演奏がまもなく始まる。


けして陽の目をみず、それでも表舞台や華やかなステージで歌う日が来ると信じて、懸命に歌い続ける六人の生歌が演奏される。

柴田はただ、しっかりと見ておけとだけ雄平に伝えて、ジントニックの注がれたワイングラスを握りしめ、小指をピーンと立てて飲み干した。


その飲みっぷりは乱暴ながらもどこかに知性が漂い、公園で初めて接した柴田とはとても同一人物だとは思えなかった。


その姿を見てまたまた由里は、憧れを見る眼差しで柴田をうっとりと見とれていた。
少しジェラシーを感じた雄平は、由里の肩を掴んで軽く頭をしばいた。


本当はしばき倒したいほどの衝撃と勢いに刈られていた。

しばらくすると演奏が始まった。
どうやら中央に立つ不細工な面構えの三重苦男が一番手のミュージシャンらしい。


それにしても見事なチビ・デブ・ハゲの揃った男だ。

こうまで最悪な容姿的な部分が備わっていながら、何故、彼はここまで視線を浴び、スポットライトを浴び、脚光を浴びるミュージシャンという道を選んだのだろう。


思わず、雄平は柴田に感じたままを伝えた。
『彼、凄いですよね。ミュージシャンになろうって人間があんなブ男じゃ話しになりませんよ』

柴田は沈黙のままだった。
やがて舞台に立つ彼の紹介が始まり、名前を告げられると右手を口に当て、客席に向けて投げキッスを連発し始めた。


『う~ん、なんて身のほど知らずの自信家なんだ』

雄平は苛立ちを隠せぬまま、様子を眺めていた。

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