夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】13

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

旅館最終日の朝。

思わぬ男の出現から京子の出版に向けた取り組みが始まった。


結局、啓太は今回の旅行に関しては疲れに来たようなものだった。

京子は今日までこれといったものがなかった。
魅力は充分にあるものの、持てる力を発揮する機会に恵まれなかった。


柴田の存在と京子の一言が、今のありのままの京子であらたな挑戦の場所へと導き出した。
それは京子の出版つまりは作家への道であった。

最終日は旅行を楽しむというより、京子の出版に向けた打ち合わせとなった。


せめて旅に来ている実感に触れようと三人は、いつものように温泉に浸かり、満喫しながら出版への戦略を立てた。

京子と柴田だけが燃えていた。
啓太は半ば死んでいた。


啓太を突き動かしていたものは、柴田への闘争心と京子への労りだった。
啓太はもはや、プロでありベストセラー作家であることを完全に忘れていた。


そして彼がベストセラー作家であることを忘れていなかったのは、啓太以外の人間だった。

京子は今の実力のままで競り合う場所を変えた。
京子の気持ちが高揚し、やる気がみなぎってくる。


柴田との出会いが起爆剤となって点火し、爆発した。

いつもは葉巻に火を付けたもらっていた柴田は、これまでとは違って京子の心に火を付けた。


話が進んでいく。
その度に京子のやる気はどんどん引き出されていく。


啓太は柴田が出会った当初、名を名乗る時に言っていた夢を叶える男です!といった言葉を思いだし、それを強く信じて疑わない。
そして柴田に対して感謝の気持ちも膨らんできた。


啓太は必ず、彼のスペクタクル大長編小説を読んで、添削までしてやろうとこの瞬間、心に誓った。

京子に対しても同様の気持ちに奪われた。
出会った当時は本当に憤りのが大きくてならなかった。


自己中で相手のことなどお構いなし。
たが京子なりに啓太の気持ちに応えようとする努力は今の彼女を見て認めざるをえなかった。

啓太は心のなかで京子を強く抱き締めた。
心のなかで感謝を伝えた。


京子、私の気持ちを汲み取ってくれてありがとうと。
今では出版に対して前向きに協力姿勢を買ってでた。


ほんの一時間足らず前の心境とは、ひっくり返るほど雲泥の差だった。

他の利用客の存在など視野に入らなかった。
懸命に打ち合わせを重ねた。


途中、一瞬だけ打ち合わせの相手が何故、編集者たちではなく、柴田かと思ったがそれは考えないことにした。


自分たちに気づいてか、啓太が作家であることに気づいたらしく、サインをせがむものまでもが溢れ返った。

タオルに書いてくれと強引にせがむものが多かった。
何故か、みんながマジックインキを持っていた。


ご丁寧にそのマジックインキには【世界が誇る癒しの露天風呂 ごもく旅館】と記されていた。
ボールペンには日本が誇ると書かれていたが、どう違うかは統吉に聞けば分かるかもしれない。

ここでは打ち合わせが出来ないし、顔も茹で蛸状態になってきた。


三人は温泉からあがり、柴田の宿泊する部屋へと移動した。

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