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デレラの読書録:千葉雅也『勉強の哲学』


『勉強の哲学』
千葉雅也,2020年文庫(2017年単行本),文春文庫

近刊『センスの哲学』を読むために再読。

勉強とは何かをラディカルに問う本書。

勉強とは何か。

一言で言えば生成変化(p.212)である。

今いる環境から外に出て、自分の享楽的なこだわりを見つめ直し、こだわりを造り直す。

勉強はスクラップ&ビルドである。

補章のタイトル「意味から形へ–楽しい暮らしのために」にもある通り、本書で提示される勉強論は暮らしを楽しいものに変えてくれるのではないかという期待を与えてくれる。

ワクワク感。

そうか、今自分の思考や行動は習慣化された環境のコード(ルール)に従っているだけなのだ、という解放感がある。

しかし、事はそう単純ではない。

環境のコードから出たとしても、それは「今いる場所のコード」でしかなく、移動先には「移動先のコード」があるのだ。

そこで本書では重要なのは移動の途中にある「違和感」だとされる。

環境と環境の間にある、新しいものに出会った時の「不気味さ(p.45)」である。

本書では、その不気味なモノは「器官なき言語(p.43)」と呼ばれる。

ようは、器官としての目的が設定される前の言語である。

ふと、日々、子どもがオモチャで遊ぶのを見ているときのことを思い出す。

彼らはそういう「不気味さ」に日々触れながら遊んでいるのだなと。

ここにオモチャがある、ここで遊べ。

本書の勉強論は、そういう日々へ帰還するための道筋を書いた地図でもある。

とは言え、実践編では、専門分野の研究こそ、勉強理論の実践の場であるとされる。

やや日常からの飛躍を感じるが、一般的な会社員のわたしにも参加可能な範囲で研究を覗き込みたい。

実際、わたしはnoteで読書録を付けている。

それは本書が単行本で発売された当時に初めて読んだときのあのワクワク感に端を発している。

ザクザク読んで、ザクザクメモして、ザクザク書いていく。

わたしの享楽に触れる。

本書は、その方法論がコンパクトにまとめられている。


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