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ASDの強い思い込みをウォーキングで解消した話

自閉症スペクトラム(ASD)がある人は、こだわりが強いと言われています。ASD当事者である私も、わりと思い込みが激しい方です。

今回は、「やっているつもり」「わかっているつもり」「がんばっているつもり」のことでも、我に返れば、もっと世界が広がるかもしれないというお話。運動しているつもりだった私が、ウォーキングをはじめて気づいたことをお伝えします。

運動しているつもりだったけれど…

私は約7年前、頸椎椎間板ヘルニアを患って、自宅療養をしていた時期があります。

ASDについて相談している診療所で、たまたま主治医に首の痛みを打ち明けたところ、話は思わぬ展開に飛んでいきました。以下、主治医と私の会話文です。

私 「整形外科で診てもらっているんです。首を痛めているはずなのに、背中や手足の方がすごく痛くて」

先生 「それだったら、運動した方がいいんじゃない?」

私 「へ?運動ですか?やっているつもりですけど……」

当時の私は、確かに運動しているつもりでした。自宅療養をはじめる以前に勤めていたコールセンターには、自転車で片道30分かけて通勤していました。休日も家にこもることなく、外で動き回ることが多かったです。それでも頸椎を痛めてからは、あまりに全身が痛くて、とてもじゃないけれど激しい運動ができなくなりました。そう思い込んでいる私に、先生は話を続けます。

先生 「西洋医学だと、整形外科と神経科って分離していて、それぞれ縄張りがあるのね」

私 「縄張りって(笑)」

先生 「整形外科では骨のことは扱っても、神経の痛みとなると神経科の縄張りになるから、ノータッチなわけ。それだったら、東洋医学的なアプローチで、全身を動かしてバランスとっていった方がいいんじゃないんかなあ」

私 「全身運動ですか」

先生 「たとえば、ヨガとか、太極拳とか……コブドウとか」

私 「コブドウ!」

「コブドウ」と聞いたとき、古武道であることに気づくまでにタイムラグがあって、思わず笑ってしまいました。

西洋医学がメインである先生が、東洋医学のことを話すことは意外だったものの、なるほどと思いました。東洋医学は自然との調和や、体質改善を重んじます。全身運動、いいかもしれません。

ウォーキングをはじめて気づいた3つのこと

主治医の言葉を受けて、私は今すぐできる全身運動をあれこれ考えました。そしたら、ふと、ウォーキングをやってみようと思いました。ウォーキングも意識してやれば、立派な有酸素運動です。頸椎椎間板ヘルニアの症状で、背中が痛くて呼吸が苦しくなっている私には、ちょうどいいかもしれません。

天気のいい日に15〜30分ほど、ウォーキングをしてみたところ、気づいたことが3つありました。

1.ウォーキングは全身運動である

1つ目は、ウォーキングがまさに全身運動であること。ウォーキングは脚の筋肉だけ使うのかと思ったら、意外と腹筋や背筋も使います。腕を振って歩いていると、自然と肩が広がって、肩甲骨の辺りの筋肉も動いていることが感じられて、びっくりしました!しかも深々と呼吸しているから、内臓の筋肉も動いているはずです。

今まではカバンを背負って通勤していたから、そこまで背中や内臓を動かすことはありませんでした。私は意外と、全身運動していなかったんですね。

2.ウォーキングをすると景色や季節を新鮮に感じられる

2つ目は、ウォーキングをすると、景色や季節を新鮮に感じられること。私は長年この街に住んでいたものの、近所でまだ歩いたことがない道は、たくさんありました。そのような道にいざ足を踏み入れてみると、まるで冒険をしているような気分です。

たとえば、自宅から徒歩5分のところで見事な梅林を発見したときには、目から鱗が落ちそうになりました。時は初秋。赤い実や青い実が、道にぽろぽろとこぼれていました。眩しい日差しが腕にからみつくものの、風はどことなく乾いています。

今までは自宅と最寄り駅を往復してばかりいました。だから身近にある植物や、季節のめぐりにまで、気が回らなかったのですね。まさに灯台もと暗しです。

3.ウォーキングをすると思い込みから楽になれる

3つ目は、ウォーキングをすると、自分を縛る思い込みから楽になれること。これに気づいたのが、何よりも収穫でした。

自宅療養中は部屋に引きこもってばかりいたから、どうしても嫌な思いが頭をめぐりました。「このまま仕事が見つからないんじゃないか」「このままヘルニアが治らないんじゃないか」……って。それでも、手足をのびのび動かすことにより、その思い込みからふっと解き放たれました。

ウォーキングに限らず身体を動かすことは、ネガティブな思い込みで頭がいっぱいになっているときの特効薬ですね。スポーツはもちろん、簡単な家事や仕事でも、同じような効果が期待できると思います。

まとめ

以上、「運動しているつもり」だった私が、主治医に勧められて、ウォーキングをはじめたころの思い出です。ウォーキングは全身運動で、景色や季節も感じられて、何より思い込みから楽にしてくれることに気づいて、びっくりしたのを覚えています。

「やっているつもり」「わかっているつもり」「がんばっているつもり」でも、「本当にそう?」……って自分に問い正したら、思いがけない発見があるかもしれません。西洋医学のように局所を治すことだけにこだわらず、東洋医学のように全体のバランスをよくするのが、大切なのだと思います。

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