第2回 『うつは体の病気 〜うつ状態でも笑うことはある〜』

割引あり


はじめに断っておくが、わたしは医者ではない。

医療従事者でもないし、医学系の大学、専門学校に行ったわけでもない。
(ある大学の教育学部社会学科、というところにいた、文系の人間だ)

したがって、以下に記すのは、あくまで患者から見た感想である。

一患者として、「うつは体の病気である」「うつ病患者も笑うことはある」という主張を記すものである。

「うつ状態」は、「結果」であり「原因」ではない

「うつ状態」の原因は診断できない

わたしの診断書には、「病名 うつ状態」と書いてある。

これは、単に「あなたはうつ状態です」という事実を述べているだけである。

「あなたは熱があります」「あなたの足の骨は折れています」などというのと同じだ。


これとは別に、「傷病手当申請書」という書類も医師から毎月発行してもらっている。

簡単にいうと、「病気で就業できない期間、保険組合からいくらかお金をもらえる」という制度に関わる書類だ。
参考:
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/

そこには、「病名」欄とは別に「原因」という欄がある。


わたしの場合、原因は「不詳」だ。

今現在、脳の中身をのぞく方法がないため、
「うつ状態」が何によって引き起こされたか、明確に診断する方法はないのである。

適応障害とうつ病

「うつ状態」を引き起こす原因として有力だといわれているのが、「適応障害」と「うつ病」である。


「適応障害」とは、ある特定のストレスによって引き起こされる病気だ。

「過度な残業」「上司のパワハラ」みたいなものが原因で「メンタルをやられる」場合、
大抵は「適応障害」と診断されることが多いそうだ。


この場合の原因は、「特定のストレス」だ。

投薬や自宅療養をしつつ、異動や転職によってストレスそのものを取り除くことが必要になる。


対して「うつ病」は、脳の機能障害である。
脳内の神経伝達物質の分泌がうまくいかない、という病気である。


この場合の原因は、「脳機能の障害」なので、投薬治療が主になる。


また、うつ病と適応障害の違いとして、「趣味を楽しめるかどうか」というものもあるらしい。

適応障害の場合は、ストレスの原因以外のもの、簡単にいえば趣味に接したときに問題なく楽しめるそうだが、
うつ病の場合は趣味はじめ、あらゆることに興味関心が持てなくなる。

参考:
https://www.iidabashi-mental.jp/information/archives/post-450.html


私の場合はどうなのか、というと

・繁忙期のあとの、閑散期3ヶ月で休職が必要になるほど症状が悪化した
・趣味に対する関心が全くなくなった

という経緯があったので、どちらかというとうつ病の方に属するのではないかと思う。

脳はフィジカル?メンタル?

長々と申し訳ない。
ここまでが前提知識の説明となる。

この章で持論を展開し、次の章で主張を書くので、もうしばらくお付き合い願いたい。

脳はフィジカル、意識はメンタル

うつ病、適応障害などは、「メンタルヘルス」と呼ばれる。

では「メンタル」とはなんなのか。
脳は「メンタル」なのか。

それが、この章で私が問いたいことである。

結論からいうと、

・「脳」はフィジカル
・「意識」がメンタル
・「うつ状態になる」と「意識に問題が生じる」はイコールではない

ということを論じたいと思っている。
(論じるといっても、体験したことをある程度論理立てて説明するにすぎないが)

幸福を知れども、体動かず


うつ状態のピークである今年1月を除けば、わたしの今年の体調は

・メンタル面は、一貫して、人生史上最高に幸せ
※第1回「春」参照
https://note.com/dechi_ka/n/ne841a765e569?sub_rt=share_b&d=s5cHR_r8LQi

・ただ頭が働かず、体が動かない(うつ状態)
・もしくは動いたとしても軽率で、ケアレスミスなどが多い(そう状態)

という状態である。


つまり、「意識は回復したが、脳を含む体がついてきていない」という状態だ。


この「意識」と「脳を含む体」という分け方、要は「脳を体に含む分け方」は、
以下のような実体験を通じて辿り着いた感覚である。


①食事
1月、うつ状態のピークの時、とにかく食欲がわかなかった。
朝起きてから夜8時ごろまで、何も食べなくても、全く空腹感を感じなかった。

しかし、頭では「何か食べなくては死ぬ」とわかっていたので、とりあえず夕飯は食べるようにしていた。


②コンサート
コンサートのチケットは公演の半年前には購入していることが多い。

3/8、3/9の東京国際フォーラムでのユニコーンのツアー「クロスロード」も、
うつ状態などお構いなしに、前の年の10月ごろ買っていた。

1月には計5回ほど購入していたコンサートをキャンセルした(行かなかっただけなので、返金はなし)。

が、3月ごろには体調もだいぶ回復していたので、3/8の公演は見に行った。

結果、非常に楽しめた。
ツアー「クロスロード」の出来自体が素晴らしいのもあったし、
メンタルが回復して、感受性が戻ってきたのだ。


が、翌日3/9の公演は行かなかった。いや、行けなかった。
体がどうにも動かなかったのだ。

たしかその日かその前日か、風呂にも入れなかった記憶がある。


③友人の結婚式
うつ状態のピークの1月、友人の結婚式に招待されていた。

経緯については、第1回「春」に書いた通りだ。

うつ状態の症状に苦しむ1月末、会社の同僚の結婚式に招待されていた。

正直、行きたくはなかった。

これが初めての冠婚葬祭で、体が動かず給料ももらえない中で礼服の用意をしなければならなかったのもあるが、
それよりも参列者たちの反応が怖かった。

端的にいえば、「面倒くさがられる」と思ったのだ。

それまで私は両親を含めて誰にも、うつ状態で休職したことを告白していなかった。

だが、参列者には同じ部署の同僚がいるので、当然休職の事は知られている。

もし私が逆の立場だったら、休職者本人には休職の話題は振らず、
それ以外の面面で「あいつ就職したらしいぞ」と陰口を言うだろうと考えた。

だから、行きたくなかった。

だが、ここを逃すといよいよ社会復帰の機会がなくなってしまうと思い、這うようにして結婚式に行った。

ここでも、「意識」と「脳を含む体」の乖離が見て取れる。

脳も体も全く動かなかったが、意識がなんとか家から引っ張り出して、這うようにして礼服を買い、結婚式に出席したのだ。

「うつ病、もしくは適応障害になる」≒「気分が落ち込む」(≠=)

「うつ病、もしくは適応障害になると、気分が落ち込む」

これは一般的な認識だと思う。


が、「うつ病、もしくは適応障害になる」と「気分が落ち込む」はイコールではない。


もちろん、ニアリーイコールではある。

しかし、軽い風邪から末期がんまで「なにかしらの病気になる」と「気分が落ち込む」がニアリーイコールであるように、
「うつ病、もしくは適応障害になる」と「気分が落ち込む」もまたニアリーイコールなのである。

症状が脳という意識に限りなく近いところにある、ということで、ニアリーイコールの度合いが濃いだけだ。


・「うつ病、もしくは適応障害になる」=「気分が落ち込む」

ではなく

・「うつ病、もしくは適応障害になる」→「気分が落ち込む」

ということだ。

この右矢印は、大体の場合短いのだが、しかし絶対に=ではない。

この2つの間には、わずかながらといえども、確実に隙間が存在する。

以上、

・「うつ状態は、脳=フィジカル、体の病気」であり
・それが「気分が落ち込む」、つまり「意識=メンタルに問題が生じる」とはイコールではない

ということを論じた次第である。

うつ状態でも、笑うことはある

お待たせしました。やっと最後の主張の部分です。

主張は以下の2点である。

・うつ状態の人が楽しそうに笑っているのは、そう状態だからではない

・うつ状態の人が笑っていたとしても、症状が治っているわけではない

笑っているのは、そう状態だからではない

これ!これが言いたかった!

今回この文章を書こうと思った一番の動機である。


「うつになりて幸福を知」ったので、最近は楽しそうに友人と遊んだりしているのだが、
なかには「そう状態になっているのではないか」と心配してくれる人がいる。


ご心配いただけることありがたい限りなのだが、上に書いた通り、
「うつ状態、即気分が沈む」ではないので、過度にご心配いただく必要はございません。

少なくとも、わたしの場合は、「人間不信を克服する」という、明確な人格の変化が起こっているので、
明るくなっている原因の100%がそう状態、ということは全くない。

※第1回「春」参照(何度も申し訳ない)
https://note.com/dechi_ka/n/ne841a765e569?sub_rt=share_b&d=s5cHR_r8LQi

笑っているのは、治っているからではない


幸運なことにわたしの周りには上記のような乱暴な理屈を持ち出す人は今のところいないのだが、
不特定多数の方に見ていただけるプラットフォームにアップする以上、この点についても触れておかなくてはいけない。


また、現在うつ症状に苦しんでいる方も、何かを見て笑えるからといって社会復帰を急ぐことはしないほうがいい。
(と、まだ復帰の目処も立っていないわたしがいうのもおかしな話だが)


うつは再発しやすかったり、回復の過程で元気になりすぎるケースがあるようなので、
自身の症状を主治医や産業医にありのまま、あけすけに話して、医師の見解に正直に従うようにしましょう。


決して、嘘をつかないように。
他人にも、自分にも。


以上、
「うつ状態の患者が笑っているのは、みんなと同じように笑えるから笑っているのだ」
というお話でございました。

言いたいことはまだある

以下、有料部分になります。

人が何か主張をするときは

①感情の向くまま、書きたいように書く
②論理立てて、説明するように書く

の2通りの手法があると思う。

ここまでわたしは②の手法をとったつもりなのだが、
あとひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあるので、それを①の手法をもって書きたいと思う。

多少乱暴な物言いになりそうな気がするので、有料公開とさせてください。

では…


お前らさあ、
めんどくせえならめんどくせえって、はっきりいえよ。

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