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ソマン①~タシガン村~

山の分院に参った日の夕方、ホテルの従業員に車の手配をお願いした。

以前は(おそらく今も、村人が)ナコからソマンへ行くことは、少なくとも2日かかる大行脚だった。
ナコから、途中のタシガンまで1日歩き、タシガンで1泊する。
多くの場合、2日目にソマンとその先のコロドンパまで歩いて参拝し、タシガンまで帰り、また1泊。
3日目にタシガンからナコへ歩いて帰る、という行程である。

先日ナコ僧院でお坊さんに訊いたところ、
今は車で早朝ナコを出発し、2時間で上のタシガン村。
タシガンから歩いて3~4時間でソマン。
ソマンから下のタシガン村(タシガンはかなり広い地域を含んでいるらしい)の道路まで2時間かからずに降りて来れるので、
ナコから1日でソマンを往復できるという。

それには先ず、ナコからタシガンまで行って帰ってくる車を見つけなければならない。

ナコに着いた初日、タボのTさんはホテルのオーナーと話して、
「もし行きたいなら、オーナーが車を持っているから、連れて行ってくれるかもしれない。」と言っていた。

お上りさん丸出しの筆者は、単純にオーナーさんが車を出してくれると思っていたのだが、
彼は他にもゲストハウスを建設中で、忙しくて行けないという。
知り合いのタクシーの運転手に訊いてもらったが、
どうも誰も行きたがらないらしい。
最終的に、
「或る軽トラ運転手が1日で行って帰って3000Rsと言っているが。」
ということで、その人にお願いすることになった。

後になって現地の人が話してくれたのだが、本来の値段は1800Rsだそうである(2021年9月現在)。

なので、当たり前なのだが、先ず現地人レートを確認するのが旅行者の常識。
因みに筆者は、友人の強さのおかげで本来の値段近くまで値を下げてもらうことができた。笑いながら、という訳にはいかなかったけれど。

タクシーの運ちゃん達が行きたがらない理由は、後で分かった。
1日仕事になることと、帰りに客を拾うのが難しいこと。
そして道が悪いことである。

軽トラの運ちゃんは、普段道路工事に使う物資などを運んでいるのだろう。
オーナーさんの説明も、「彼は経験がある」だった。
舗装された道は、道中の半分ほどしかなかっただろうか。
川を渡り、対岸に着いてから道が左右に分かれていて、舗装されていない方の非常にガタガタな道をトラックは進んだ。

朝6時過ぎ、暗いうちに出発したけれど、その時にはもう明るくなっていた。
身体をバウンドさせながら、崩れやすそうな道を上がって行く。
この埃とガタガタが、タクシーを怖がらせるのだろうと合点がいった。

その時は3000Rsを払うだろうと思われていた上客を乗せて、運ちゃんはタシガンへ向かった。
運ちゃんの弁護をする訳ではないが、彼には友人が多いらしく、行きかう車の運転手やタシガンの村人らしき人々と、挨拶をしてよく笑いあっていた。
「タシガンに来るなら茶を飲みに来い」と誘われていたので、土地の人とも仲良しの、人の好いトラックドライバーなのだと思っていた。
きっとそうなのだろう。
彼も家族を養うために、持っている人から貰っているだけなのだ。

「タシガンに着いたので、ここから下りて下さい。」
と言われて降ろされた場所は、上のタシガン村のかなり下にある、駐車場のような広場だった。
左右には何もなく、荷物を持って村まで歩いていってくれという。
今考えれば、下のタシガンへ向かう幹線道路上で降ろされたのだろう。

何も分からずそのまま友人と2人で歩き始めたが、しばらくすると別の軽トラックが下から砂埃を立てて上がってくる。
『上に行くのか⁈』と天の助けを得たように手を振って車を止めた。
停まった軽トラ(後ろの荷台には土嚢か何かが入っていた)の中には、さっきの運ちゃんも乗っている。
さっき「お茶を飲んでいけ」と言っていたおじさんの車だったので、お茶を飲みに行くのだろう。
「上まで乗せて行って下さい」という祈りに似た気持ちで頼むと、荷台に乗っても良いという。
そうしてドナドナと、上のタシガンの人家のある集落まで運んでもらった。

おじさんは、運ちゃんと一緒に、我々にもお茶を御馳走してくれた。
インドの田舎で出される甘いお茶と、正方形のビスケットだった。
朝食を取っていなかったせいもあり、美味しく頂いた。

おじさんは学校の先生をしているそうだ。
通された居間も新しく、シンプルではあるけれど50人収容の集会場のように広かった。
正面に作りつけられた、横長の木製キャビネットの中央に、釈尊像が鎮座している。

おじさんはソマンへの道筋の説明をしてくれた。
タシガンからソマンへ向かうルートは2つある。

1つはここから上に登り、タシガン僧院に参り、そこから下るルートである。
タシガン僧院からは殆ど下りだけれど、あるポイントから上に向かう。
印があるから分かる。
そこから僅かに登り道であるが、坂はキツくないし、ソマンまでの距離もそれほど無いから大丈夫。

もう1つの道は、この高さからソマンへ向かってだんだん登っていく道である。
俺達の僧院(タシガン僧院)へは行かずに、そのまま登っていく。
上り坂だから、ちょっとキツい。

いずれにせよ、ソマンへは3~4時間で着くから、お寺を参って、周囲を散策して、降りてくれば1日で往復できる。

ソマンの先にはコロドンパという聖地もあるが、岩山の中を登って行かなければならない。道も悪いし、行くのは大変だから行かない方が良い。

軽トラの運ちゃん
「ソマンは何回か言ったことがあるが、コロドンパは1回だけ。あんな大変なところは二度と行きたくない。」

外国人2人
「きっともの凄く大変なところだから、次回登山の用意をちゃんとして来よう。寝袋も持ってこなくちゃ。
今回はソマンに行ければ良いね。」

共通認識が整ったところで、おじさんの家をお暇することになった。
先ずタシガン僧院へ向かう。

つづく。


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