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村上龍 五分後の世界  読了

村上さんが続きますが、特に意味はありません。(笑)

村上龍さんは、その昔、カンブリア宮殿で進行役をされてましたね。
「この人しゃべりもできるんだ」と思ってホッとした記憶があります。

何を読んだか忘れましたが、描写が妙にリアルでグロテスクな感じがしてギブアップしたんですよね。それ以来、避けていた作家だったのです。
関わってはいけない危ない世界の人のような気がしたんですね・・

しかし『五分後の世界』は、そんな私の印象を180度変えてくれた小説でした。

第二次世界大戦で、熾烈な戦闘を強いられる日本軍。日本はポツダム宣言を受け入れ無条件降伏する、というのが現実の世界。しかし、主人公が不意に迷い込んだ五分後の世界では、人口数十万人にまで減ったもう一つの日本、アンダーグラウンドが、高い教養と屈強な精神、肉体を研磨し、連合国軍をゲリラ戦で圧倒している。

まず、日本がポツダム宣言を受け入れなかったらどうなっていたんだろう?という好奇心から読んでしまう作品でもあります。普通に考えれば、武器の原料もエネルギーも底を尽いていた訳ですから、敗戦することは間違いなかったと思います。

ただ、ベトナム戦争の知識がある方は、アジア人特有の小柄な体格を生かした地下壕戦に持ち込めば、勝敗は分からなかったかもしれないと思い当たるかもしれません。
そうした日本人が持っているであろう、数%の「タラレバ」を非常にうまく具現化したのが『五分後の世界』だと言えます。

戦争世代でない私でも、戦争に負けたから日本は高度経済成長を成し遂げられたと思いがちです。でもこれは間違っていて、戦争に勝っていても経済は成長したかもしれません。

私は自分に対して驚きましたし、多少の混乱もしました。敗戦にもっともらしい理由をつけたい自分がいるなんて思ってもみなかったからです。日本人として我に返る作品ですね。逆に「実によくできたフィクションだ」と思って読める方は、真の新しい世代と言えるかもしれませんね。

皆さんはどちらに振れるでしょうか?

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