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「TAMABI」のポスターの考察




多摩美のポスターで、色々と問題にもなっていたが、グラフィックとしてクオリティ高く、面白いアイデアだと思うので落とし込んでいこうと思う。

1. なぜアイデアとして優れているか?

2Dと3Dの境界線を超えた融合

このグラフィックは、タイポグラフィや文字の2Dと、液体や磁石の「写真を使った現実的な3D表現」との境界を、融合しているように見せているところである。
例えば、1枚目のグラフィックは文字が、下半分の写真の領域に浸かってまるで溶けていくような表現になっていたり、2枚目のグラフィックは磁石の磁気によって文字が崩れており、文字自体が「砂鉄でできている」ような表現へと落とし込まれている。
そして、墨汁や砂鉄などを現実の物理法則に従って崩し、文字が溶けていくことによって文字と写真が連動しているように見せている。


2. ビジュアル表現のよさは何か

手が存在することによって2Dと3Dが自然に融合する

「2Dと3Dの融合」を感じさせる要因は、1つは「手」があることだと考える。
例えば1枚目のような溶けていく文字表現は、手があることによって押し沈めてられていくような「物理的な圧力」を感じさせる。
2枚目はS極を透過させ、砂鉄の付き方によって磁石の輪郭を浮き上がらせ、かつ手で磁石をつまんでいるようなグラフィックにし、磁石という認識を強めている。
このように、手が存在することによって重力を感じさせ、リアリティを演出している。

それに加えて、あえてカラーをモノトーンにすることでもフォントと写真を違和感なく馴染ませることができている。

3. 構図の妙は?

構図からも「2Dと3Dの融合」を感じさせる要因がある。このビジュアルは3分の1の領域を白いエリア、下3分の2程度を写真のエリアと、2つの画角に分けることでルールができる。
そのエリアのルールをはみ出すことによって、境界を超えて融合しているということが認識できる。


4.フォントの特徴は?

ベーシックなゴシックにすることで崩しても可読性をキープできる

オールドなフォントではなく、モダンなスタイルのフォントを使うことで、崩しやフォントを持つことなど、あそびがあっても読みやすさを保てる。


5. 批判的視点

1枚目の水に溶けていく様子のビジュアルは、手が文字を掴んでいるように見えないので、ハンドパワーによって沈んでいくように見えなくもない。
また、ABIが沈んでいるが、3つが溶けている黒い液体のすべてが中央に向かって水に溶けて沈んでいっているのは物理的に違和感がないものなのか?が気になる。
個人的にはそこまで気にならないが、物理法則のプロが見た時に違和感のないような作りにすることも意識する必要があるなと感じた。

6. 個人的な感想

一枚絵のグラフィックで、次元の違うものを融合させるという面白さが秀逸。
構図と手の存在によって掛け合わせがうまく成立しているところは是非インプット、アウトプットで試してみたい。

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