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棟梁とシンクロ

築130年の古民家に移住した

家族の移住まえに
最低限の改修工事が必要で
引っ越しの1カ月前に
工事をスタートした
畳をめくって板張りにしたり
トイレと洗面所を新設したり
最低限といっても家族が
納得してくれるくらいには
しておかなければいけなかったので
まあまあの大工事になった

あるご縁から
偶然紹介していただいた家で
大家さんのことも
歴代の住んでいた人のことも
ほとんど何も知らない状態で
工事をスタートさせた

何年も空き家だったらしく
家の中は結構荒れていた

畳はぶよぶよ
障子ビリビリ
動物の痕跡
虫の死骸
蜘蛛の巣
天井の染み
ほこりだらけ

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廃墟とまではいかないが

「出るよ」

と言われても

「だよね」

って言える感じではあった

正直一人でこの家にいるのは怖かった
気が重かった

築130年ともなれば
この家でいろいろな出来事もあっただろう
良いこともあれば悪いこともあっただろう
たくさんの人の思いが交錯したこともあっただろう

今までこの家でのできごとや住んでいた人の思いを
もしかしたら写真のフィルムのように
柱や畳や襖が
床下や天井裏が
キッチンや洗面台が
記憶しているかもしれない

そんなことを考えていたら

ふと

もしかして『おばけ』って
そこに残った細かなキズとか
シミとか柱の落書きとか
そこに漂う湿気とか

一つひとつは些細な情報を
自分の中でねりねりと混ぜ合わせて
組み合わせて作り上げる
ものなのかもしれないと
そんな考えが浮かんだ

私はリアルに『おばけ』というものを
見たことがないので
本当に見える人には違うよと
言われるかもしれないが
本当に見たことがないので
仕方がない

だったらこれまでに
住んでいた人の痕跡をスルーして
一気に新築当時のことに
思いをタイムスリップさせてみたら
どうだろうかと

この家を建てた棟梁に
思いを馳せてみたらどうだろうかと

急に

楽しくなってきた

「棟梁、ここんとこ手抜きですけどいいんすか?」

「よかよか〜」

「棟梁、こここんなふうに直しますけどいいすか?」

「よかよか〜好きにせんね」

と勝手に想像していたら
気の重さは吹き飛んで
気づいたら仕事がめちゃくちゃ
はかどっていた

側からみたら
ヤバい奴だけど
自分一人しかいないから
良しと

『棟梁、ここめっちゃいい仕事してますねー!』

『そやろ〜誰がやったと思っとんのや〜』

棟梁のお陰様で
無事引っ越しできました



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