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書籍紹介「自分をいかして生きる」(西村佳哲 著)
こんにちは。
Dear Hope 副塾長の伊藤です。
今回は、好きな書籍のひとつである「自分をいかして生きる」をご紹介します。
著者はプランニングディレクターの西村佳哲氏。氏は当初、働き方研究家として、様々なジャンルで活躍するクリエイターらにインタビューを行い、その記事を雑誌等で発表していました。そして「自分の仕事をつくる」を上梓、それに続く第2作として、本書「自分をいかして生きる」を出版しました。
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氏の著作との出会いは私が大学生のとき、「自分の仕事をつくる」でした(本当は、高校生のときに平積みになっていたのを見て頭の片隅では引っかかっていましたが、実際に手に取ったのは大学生の時でした)。
はじめはあまりピンと来ませんでしたが、社会人になって読み返したところ、しみじみいい本だなあと感じ入り、そこから氏の著作を追いかけています。NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」が好きな方は、気に入ると思います。
さて、前置きはこのくらいにして著作の紹介に入りたいと思います。感銘を受けた記述やエピソードは多々あるのですが、仕事柄、進路や職業選択に関する相談に接することが少なくないので、その参考になった部分を引用しつつ、紹介していきたいと思います。
例えばここに高校生くらいの女の子がいて、「美容師になりたいんだ……」と相談してきたとする。
僕ならその彼女に「どんな○○○になりたいの?」という問いを戻すと思う。それは、「美容師になりたい」と言っている彼女のなりたいものが美容師とは限らないと考えるからだ。彼女は、人をきれいにする仕事がしたいのかもしれない。人に感謝される仕事をしたいのかもしれない。(中略)いつか自分の店が持てるようなことを仕事にしたいのかもしれない。
その年齢の彼女が、心の中にあるいろいろな願いや悩みを投じる対象として知っている職業の中から「これかな?」とあるカードをひいてみた。それがたまたま美容師だった。
としたら、職名よりも〈どんな〉という部分の方が、彼女の本体に近いんじゃないか。
自身を顧みてもその通り、高校生の頭で思いつく職業というのは、おおよそ、実際に存在する(さらには、今後存在することになる)職業のうちの、ほんの僅かに過ぎません。
だから「何をしたいか」よりも「どうありたいか」に光を当ててインタビューしたほうが、より本質的な話を引き出せるわけです。
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その上で、巷でたびたび聞かれる「好きなことを仕事に」というスローガンに対して、著者は、「この言葉には、好きなことがあるべきだというニュアンスも混ざっている感がある。軽い脅迫感を前に、自分には好きと言えるほどのことが無いと、逆に弱まってしまう人もいるんじゃないか。好きなことが無いと駄目なのか?」と疑問を投げかけつつ、次のように述べます。
好きなことより、「大切にしたいことは?」という問いの方が、まだ有効なんじゃないかと思う。(中略)あるいは「自分がお客さんでいられないことは?」という問いはどうだろう。
どんなに映画が好きでも、ただそれを見ていれば幸せで、足りる人はお客さんだと思う。別に客でいることが悪いわけじゃない。店で食事をして、「美味しかったー」とただ満足して帰路につけるなら、そこに自分の仕事の影は見当たらないだろう。他の人がどれほど素晴らしくやっていても、その成果の享受をただ楽しめること。他の誰がやっていても構わずにいられる仕事は、いわば他人事の仕事と言える。
でも「好き」だけではすまない。いまはお客さんの立場でも、ずっとそのままでいられるかというとそんなことはない。というか、そうありたくない。気持ちがザワザワする。落ち着かない。見たくない。悔しい。時にはその場から走り出したくさえなるような、本人にもわけのわからないもてあます感覚を感じている人は、そのことについて、ただのお客さんではいられない人なんじゃないかと思う。
何についてそのような感じが生じるかは、人それぞれだろう。ある人は駅で車掌さんの姿を見ている時、ある人はカフェを開いた若い子の姿を見て、ある人はマンガのページをめくりながら、収まり切らないなにかを感じていたりするんじゃないかと思う。フライパンの上ではじけるポップコーンのように、次第にいてもたってもいられなくなるのなら、そのあたりに明らかになにか熱源があるのだろう。
「自分がお客さんでいられないことは?」という問いをもっておくと、自分のやりたいことや、あるべき姿に気づくきっかけが得られるのではないかと思います。
これに関連して、本書では、著者の友人のアーティストが20代のころ(どれくらい昔かは分かりませんが)にしてくれた、次のような話が紹介されています。
自分は高校で美術部に入って、本格的に絵を描くようになった。大学のころからいろいろなことに手を出して、音楽も、演劇もやり、今はイラストレーターとして食べていこうとしている。企業とグラフィック・ソフトの開発もしている。いろいろやっている。
けど、自分がいちばん「できてない」と思えるのは、やっぱり絵なんだよね。だから僕は、絵を描いていくと思うんだ。
この話を聞いた著者は、「できてない」ことが可能性でもあるということに、目から鱗が落ちる思いがした、と述懐しています。
私自身も、いちばん「できてない」と思うのは、数学であったり、その指導だと感じているので、すごく共感できます。悩みは、「こうありたい自分」と「そうでない現実」のギャップから生まれます。だから、「こうありたい自分」に近づくために日々勉強が続けられているのかもしれません。
さて、本書には、奈良でカフェを開いた女性の、カフェを立ち上げるまでの奇跡的なエピソードや、カーデザイナー➡ソニーのプロダクトデザイナー➡・・・➡スピーカーの研究開発➡蕎麦屋という異色の経歴を持つ職人さんへの充実したインタビューなど、興味深いストーリーがいくつも収められています。
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これから社会に出る人や、働きながら何か違和感を覚えている人は、役立つヒントがきっと見つかると思います。
ということで、今回は西村佳哲さんの「自分をいかして生きる」を紹介させていただきました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
このnoteでは、教育家夫婦が開いた大学受験の小さな塾「Dear Hope」のスタッフが、大切にしていることや、日々考えていることなどを書き記していきたいと思います。
今後とも、よろしくお願いいたします。
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