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バラガン イスラエル!

イスラエルは移民国家だ。第二次世界大戦後1948年に建国された、まだ新しい国家だ。
けれどもその歴史は古い。
イスラエルの歴史はユダヤ人の歴史であり、遙か聖書の時代にまで遡る。

イスラエルにはユダヤ人、アラブ人、パレスチナ人、その他の少数派の民族など様々な人たちが暮らしていて、イスラエル居住者は皆イスラエル人ということになる。
では、ユダヤ人とはどのような人のことか?
ユダヤ人は『ユダヤ教を信仰する人』と『ユダヤ人を母親に持つ子』である。両親が共にユダヤ人であればその子供は自動的にユダヤ人となるが、父親がユダヤ人で母親がそうでなければその子は自動的にユダヤ人にはならない。従って母親がユダヤ教徒に改宗しなければ、その子どもはイスラエル人ということになる。
また、ユダヤ人も"どこからの移民か"というところで三系統に分けられていて、それぞれに文化が少しずつ異なる。ヨーロッパからの移民を「アシュケナジム」、(元々はスペインや南欧の移民を指していたが)今では中東及びアジアアフリカからの移民を指して「スファラディム」、それに中東及びアフリカのユダヤ人を指す「ミズラヒム」。それぞれ『ム』で終わるのはイスラエルの公用語ヘブライ語の複数形の末尾が『ィム』だから人々という意味で『ム』で終わる。ちなみに、前回登場した"ナオミ"の母親はモロッコ出身のユダヤ人だから『スファラデァム』ということになる。最近ではロシアからの移民も増えているらしい。

アラブ人はアラビア語を話す人たち。
パレスチナ人は第二次世界大戦前にパレスチナ地方に住んでいたとされるアラブ人たちのことを指す。そして、そのどこにも属さない少数派民族の人たち。イスラエルはまさに人種のるつぼであり、そこには多文化共生社会があるということだ。
 多文化共生社会の実現はどの国においても試行錯誤の連続だし、誰もが満足できる多文化共生社会とはどのようなものかと考えれば実現はかなり難しい。それでもイスラエルはいろいろな角度から挑戦している。『Dancing in Jaffa』というフィルムがあるがユダヤ系のイスラエル人の子どもたちとアラブ系のイスラエル人の子どもたちが男女一組になってボールルームダンス(社交ダンス)に挑戦するというものだ。最初はイヤイヤながら、また家族にも複雑な思いを与えながら、それぞれが自身の葛藤と向き合い、ボールルームダンスのイベントを作り上げていく。ドキュメンタリー映画だ。学校という小さな社会の中で、子どもを通して多文化共生社会の難しさを考えることができる。


 このようなケースもある。オフィールという「ミズラヒ」の青年は両親共にユダヤ人であるが、イェメンからの移民の子だ。彼の家は小さな商店を営んでいるが、そこで働いて商店を支えているのはパレスチナの人たちで、彼はいつも「イスラエルはパレスチナと戦っているというイメージを持たれているけど、一緒に仕事をしてランチを楽しむ、僕たちのようなユダヤ人もたくさんいることを知ってほしい。」とため息混じりに言っていた、とても寂しそうな顔で。オフィールは一緒に働いて、ご飯を食べて、楽しい時間を共有しながら異文化を受け入れて、相手の文化をリスペクトしていた。

このように"ごちゃごちゃ"した、多文化が入り混じった、混雑した感じをヘブライ語で『バラガン』と言う。イスラエル人は『バラガン』をよく使う。バラガンイスラエル‼︎
これはいい言葉だと思う。"イスラエル"オリジナルのいい文化だと思う。

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