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神社とお寺の違い② 守衛役(狛犬と仁王像)について

 二つ前の記事、「神社とお寺の違い① 入口について」では、まず神社とお寺の違いの初めとして入口の違いについて簡単に説明しました。
復習すると神社が「鳥居」、お寺が「山門」という違いでした。

今回は実際に「神社に足を踏み入れました、お寺に足を踏み入れました」、その時に目に入る違いの一つである「守衛役」にスポットを当ててみました。

守衛役

 神社やお寺につきました。そして実際に足を踏み入れました。その時に拝殿や本堂(入口である鳥居や山門にもある場合も多いです)の傍にいるものが「守衛役」と呼ばれる「狛犬」であり「仁王像」であります。
本来なら脇役でありますが、ファンが多いのがこの両者であります。守衛役として外敵に目を光らせています。
口を開いた形が「阿形(あぎょう)」、口を結んだものが「吽形(うんぎょう)」で一対であることは同じです。狛犬は仏教の伝来とともにもたらされたのでお寺に置かれているケースも多いです。また、「阿吽」の表情は仁王像から影響を受けたと考えられています。
 なお、伊勢神宮や出雲大社など成立が古い神社では狛犬は存在しないこともあります。神社によってはほかの動物が守衛役を担うこともあります。稲荷社の狐や春日社の鹿、天満宮の牛がそうです。

狛犬

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 鳥居から拝殿までの参道に鎮座して魔物を追い払う役を担っています。参道を挟んで向かい合い、一対になるのが基本です。起源はエジプトやバビロニア、インドのライオン像であるとされ、日本には仏教の伝来とともに中国から唐の時代のものが朝鮮半島の高麗を経由して伝わりました。そのため「こま」の由来は「高麗」だとされています。獅子と狛犬で一対をなすという説もあります。神社によって姿が異なりこれを目当てに神社を訪れる方も多いです。

仁王像

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 仏敵の侵入を防ぐために左右に置かれた一対の像です。置いてあるお寺は実は少ないですが筋骨隆々とした姿は存在感が際立ちます。正しくは「金剛力士像」と言います。運慶の指揮によって製作された東大寺南大門の金剛力士像が有名です。裸形なのは中国古来の力士の姿に倣ったからだと言われています。威嚇の表情をしています。阿吽で一対をなします。
 なお、梵字において「阿」は口を開いて発する最初の字音であり、「吽」は口を閉じて発する最後の字音です。そこから阿吽とは万物の始まりと終わりを象徴するものとみなされたとあります。(出典:岩波 仏教辞典(岩波書店))

色々な狛犬

 多くの愛好家が存在し、人気のある狛犬。それぞれ違う形をしております。拝殿に向かって右が阿形、角のない獅子、左が吽形で角のある狛犬とされておりますが時代が下るにつれて区別が曖昧となり例外がとても多いです。形態は獅子、呼称は狛犬となっているところが多いです。
 像の裏には石工の名前や制作年、由縁などが刻まれたりします。しかし名前の伝わる石工は稀です。江戸時代に狛犬を知らない市井の石工たちが制作に携わったことから、想像上の動物だけに決まった形が無く、形態は作り手の腕や個性に依存します。古今東西、色んな形が存在します。

・玉取り形…子犬と玉を抱えている狛犬。
・獅子山形…溶岩で築かれたであろう小山に乗る狛犬。尻を持ち上げた姿勢が多い。子犬を従え雌雄のペアのこともあり交尾の姿勢と解釈することもある。
・コミカル形…表情や造形が奇妙であったりする。石工の豊かな創造性が活かされている。
・プリミティブ形…年代の古い狛犬に見られる。原始的かつ味わいのある造形です。

他にも青銅製であったり備前焼で作られたものもあります。

狛犬以外の動物、眷属について

 眷属(けんぞく)とは神の使いや従者のことです。神使(しんし)とも言います。神に先駆けて現れたり、神意を知らせるために人間と接触する存在と考えられています。狛犬以外の動物がたくさん存在します。犬、牛、馬、象、鹿、狐、猿、猫、狼、兎などの哺乳類、鳩、鶴、烏といった鳥類、鯛、ナマズ、蟹などの魚類・甲殻類、鳳凰、龍といった想像上の生き物などです。神話に由来するもの、土地に所縁のあるものなど多種多様です。

・烏…日本サッカー協会のシンボルマークでも有名なのが三本足の八咫烏です。神武天皇の東征の際に熊野国から大和国まで道案内をしました。
・狐…稲荷社の神使です。元々稲荷社は穀物・食物の恵をもたらす神様ですのでネズミを捕食する狐は神様からの恵を守る働きをすると考えられています。また黄金色の体毛が実った稲穂を連想するということもあります。
・牛…全国の天満宮に多いです。所説ありますが、天満宮のご祭神である菅原道真公が丑年生まれで死後の亡骸を牛車に運ばせたりしたことから菅原道真公の神使とされています。
・狼…日本武尊(やまとたけるのみこと)が道に迷ったところを助けたのが狼だとされています。害獣を追い払う習性から神使とされています。また江戸時代にコレラがはやったときに、当時コレラは「虎列刺」と表記され異国から入り込んだ悪い虎を狼が退けることが願われたりしました。
・猿…日吉・山王・日枝神社の神使であります。所説ありますが山の神様である大山咋大神(オオヤマクイノオオカミ)の使いであるとされています。

まとめ

 神社とお寺の違いの第二弾として守衛役の狛犬と仁王像にスポットを当ててみました。特に狛犬は神社によって様々な形があったり、狛犬以外の動物がいたりなどと知ることでその神社の歴史や日本の神話を知ることができる重要な存在でもあります。
 ぜひ、地元や旅行先の神社やお寺に参拝される際はそういったところも見ていただければと思います。

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