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人間味あふれる日本の神々 古事記上巻④

 全体記事39記事目は久しぶりの古事記シリーズの続編となります。

合わせて読みたい
人間味あふれる日本の神々 古事記上巻①
人間味あふれる日本の神々 古事記上巻②
人間味あふれる日本の神々 古事記上巻③

黄泉の国

 伊邪那岐命は伊邪那美命と会いたいと思い黄泉の国(地下にある死者の住む国で穢れた所とされている)まで追いに行きます。
入口まで来たところで伊邪那美命に語ります。
「あなたと作る(生む)国々はまだ完成していない。
また戻ってきてほしい」

 そして伊邪那美命は答えます。
「黄泉の国の食べ物を食べてしまったのでこの国の住人となってしまった。
だけど、愛する貴方(伊邪那岐命)の頼みなので戻りたい。
黄泉の国の神に頼んでくるのでそれまで私を見ないでほしい」

 伊邪那岐命は待つが一向に帰ってこない。
待ちわびたので身に着けていた櫛の1つに火をつけて中を見てしまった。
すると伊邪那美命に蛆が集まっていた。

 伊邪那美命が見てはいけないと言ったのに伊邪那岐命に見られたことの腹を立て八柱の雷神を生んでしまいます。

大雷…頭
火雷…胸
黒雷…腹
折雷…陰(ほと)
若雷…左の手
土雷…右の手
鳴雷…左の足
伏雷…右の足

 このことに恐れをなした伊邪那岐命は逃げ帰ります。
しかし、腹を立てた伊邪那美命は黄泉醜女(よもつしこめ…黄泉の国の醜い女で死の穢れ擬人化)を使い追った。

 伊邪那岐命が髪飾りを投げるとブドウの実が成った。
黄泉醜女がそれを拾い食べるあいだに逃げるがまた追いつかれた。

 次に櫛を投げると竹の子が成った。
黄泉醜女がそれを抜く間に逃げるが、八柱の雷神と黄泉軍(黄泉の国の兵士、悪霊邪鬼の擬人化)に追われる。

 次に持っていた十拳剣を抜いて振りながら逃げるが再々度追いつかれた。

 黄泉比良坂の根本に至ったときに桃を三つ投げた。
すると悉く逃げ帰った。
伊邪那岐命は桃の実に「私を助けてくれたように、葦原の中つ国(日本)にいる人々が苦しむときは私は助ける」と告げて意富加牟豆美命(おほかむづみのみこと)と名を賜った。

 伊邪那美命は自身が遂に追いついた。
千引の石(千人かかって引くほどの大きな岩。岩石は悪霊邪鬼の侵入を防ぐものと考えられていた)を境に伊邪那岐命と伊邪那美命は離別を言い渡した。

伊邪那美命「一日にその国の人間を1,000人殺す」
伊邪那岐命「それであれば私は一日に1,500人産む」
※この宣言の為、この世に生者必死の理が生まれることになりました。→下記の補足に続きます。

 伊邪那美命は黄泉津大神(よもつおおかみ)と呼ばれるようになった。
また、道に追いついたことで道敷大神(ちしきのおおかみ:道を占拠するということが本来の意味だがここでは道を追いついたという意味になっている)と名付けられた。

 また、黄泉の国との境目にある岩石は道反之大神(ちがえしのおおかみ)、またの名を黄泉戸大神(よみどのおおかみ)と名付けられた。

 黄泉比良坂は出雲國の伊賦夜坂(いうやさか)と呼ばれることとなった。
※所在不明だが出雲風土記出雲郡宇賀郷の条に「北の海浜に窟戸があり窟内に入れない穴がある。夢に窟の辺に行ったと見れば必ず死ぬ。これを黄泉の坂、黄泉の穴と言い伝えている」とある。

補足
見てはいけないものを見る

⇒見てはいけないものを見る。

「鶴の恩返し」などにもあるように、古今東西「見てはいけないものを見てしまう」という話はあるようです。

桃を投げる

 桃には聖なる力があると考えられていました。
これは中国、道教の影響があるようです。
桃の実には悪霊邪鬼を払うという中国思想があるようです。

生者必死と人口増加

 伊邪那岐命と伊邪那美命が離別するときに言い合った言葉。

伊邪那美命「愛しき我が汝夫の命、かく爲ば、汝の國の人草、一日に千頭絞り殺さむ。」
伊邪那岐命「愛しき我が汝妹の命、汝然爲ば、吾一日に千五百の産屋を立てむ。」

この言葉により、この世に「生者必死」という原則が生まれ、またこの世の人口増加が出来ることとなりました。

つまり生きとし生ける者は必ず死ぬということ。
人の生と死の起源を説明しています。
そしてこの世は死ぬ人間と生まれる人間は生まれる人間の方が多いので人口が増えていくということ。

この二点があるということを示しております。

まとめ

 今回は1つの記事を用いて丸々「黄泉の国」について述べることになりました。

大切な「人の生と死の起源」についての説明がある項目になります。

また、古事記が中国の影響を色濃く受けていることも見られる個所となります。

次回、いよいよ天照大御神や須佐之男命が出てくることになります。

また、なじみ深い「禊」についても出てきますのでお楽しみに。

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