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HDDは自分で開封して復旧できる!?物理障害のデータ復旧手法を解説

こんにちは、デジタルデータリカバリーです。

HDDが故障した際に、自力で分解して復旧できると考え、HDDを開封する人は少なくないでしょう。

果たして、自力でHDDを開封してデータを復旧することはできるのでしょうか?
そもそも、設備の整っていない自宅などの環境でHDDを開封して良いのでしょうか?

素朴な疑問をデータ復旧歴12年、累計対応件数1万5,000件のベテランエンジニア西村さんへ直撃インタビューを行いました。

前回の「他2社で復旧不可、傷の付いたHDDからのデータ復旧」の記事はこちら


1.HDDはどこでも開封して良い訳ではない!?


聞き手:
お客様ご自身で開封してしまったHDDのご依頼をいただいたことはありますか?

西村さん(以下、西村):あります。年に10回程は、お客様がご自身で開封してしまったHDDのデータ復旧のご依頼を受けます。大半は、開封時に傷・指紋・汚れ・埃などが侵入していましたね。そうなると、復旧の難易度も高くなってしまいます。


聞き手:
HDDのデータ復旧を自力で行おうと、お客様が開封、分解するのは大丈夫なのでしょうか?

西村:非常に危険です。
普段生活している空気には、目には見えなくとも、たくさんの埃や塵などの不純物が浮遊しています。

HDDのヘッドとプラッタの隙間は、僅か2ナノメートルしかないのですが、たばこの煙の粒子よりもさらに狭いです。
そのため、普段生活している空気の中で作業をしてしまうと、空気中の不純物がHDDのプラッタとヘッドの間に侵入し、不具合やプラッタに傷(スクラッチ)が付く原因になってしまいます。


西村:エンジニアがHDDの開封作業を行う際も、不純物が表面に付着しないよう、細心の注意を払っています。

まず、不純物が侵入しない造りになっている「クリーンルーム」という設備の中で作業を行います。また、このクリーンルームはかなり高性能ですが、たとえこの中で作業をしても100%不純物を防げるわけではありませんから、クリーンルームの中で作業をした後に、必ずエアブロワーで埃を飛ばしてからHDDを閉じています。

2.HDD復旧に欠かせないクリーンルーム

聞き手:クリーンルームの中は、どのような環境ですか?

西村:クリーンルームは、空気中に浮遊する埃や塵などが極力入り込まないように高い清浄度に管理されている部屋です。HDDを開封して復旧作業を行う際、クリーンルームで作業をすると、HDD内部の部品に不純物が付着することを防げます

聞き手:空気中に存在する害から守るというのは、手術室と似ていますね。

西村:そうなんです。実は手術室もクリーンルームの一種です。データ復旧に使用するクリーンルームが埃や塵を防ぐことに対して、手術室は細菌の侵入を防ぎます。用途は違えど、目的は一緒なんです。

デジタルデータリカバリーは、クラス100のクリーンルームを使用しています。クラス100とは、JIS規格で空気中の0.1ミクロンの微粒子が1㎥に100,000以下という定義になっています。

数字ではピンとこないと思いますが、クラス100のクリーンルームでは、髪の毛1本どころか目に見える塵はありません。0.1ミクロンの微粒子というのは電子顕微鏡などで見て、ようやく確認できるようなものであり、他にも室温や湿度など様々な細かい条件をクリアして、やっとクラス100として認定を受けられます。


聞き手:
クリーンルームは、これほど厳しい条件をクリアしている環境なのですね。これでは普段生活している空気の中では、HDDを開封できそうにないですね。。。


3.データ復旧依頼は、クリーンルームが設置されている業者へ

聞き手:HDDにどのような障害がある場合、クリーンルームのある業者に依頼するべきですか?

西村:物理障害が起きているHDDはほぼ全てですね。

ヘッドやスピンドルモーターなど内部の部品が破損していて交換が必要な場合、プラッタに傷が付いているスクラッチ障害、読み込みが遅い・異音がするなどの経度な物理異常でも結果的に悪化のリスクが高いため、クリーンルームのある業者にデータ復旧を依頼した方が良いです。

聞き手:上記のような障害が起きているHDDを安全に復旧するために、ユーザーに伝えたいことはありますか?

西村:ネット上では様々な情報が流れていますが、正しい情報ではない場合が圧倒的に多いので鵜呑みにしないで欲しいです。

YouTubeなどでHDDの部品交換をしている動画があったりしますが、危ないのでマネしないでください。たまたま成功しているだけの場合もほとんどで、一時的にデータを認識しても、HDDが正常に動作しているわけではないので、根本的な解決にはなりません

西村:もし自力で解体や部品交換をして、最初はHDDが動作しても、次第にヘッドの状態が悪化して故障が進んで最終的に壊れてしまう…となると業者でもかなり復旧が難しいです。技術力と設備はセットで必要なものなので、ご自宅で作業するのはやはり危険かなと。

聞き手:技術力があっても、それを活かす環境が整っていないと、目には見えない不純物の侵入などで状態の悪化の可能性がありますよね。

西村:その通りです。いくらデータ復旧に携わっていた人でも、設備が整った環境でなければ、状態を悪化させるリスクがあるため、結果的に確実な復旧作業はできません。

聞き手:データ復旧業者を選ぶ上での注意点はありますか?

西村:ホームページなどで物理障害に対応していると謳っている業者はたくさんありますが、国内でクリーンルームを設置している業者は希少で、設備・技術力の足りていない業者もあります。

実際に、他社様で開封作業を行ってもデータ復旧できなかったHDDのご依頼を受けた時のことを話すと、弊社でよく調べたところ不具合の原因はファームウェア異常だったのですが、他社様ではヘッド異常と診断して開封して部品交換をするなどの的外れな作業を行ってしまったために復旧できなかったようです。

※ファームウェア:機器を動かすプログラムのこと

聞き手:他社様で誤った診断を行って開封してしまうことで、不純物が侵入したり、最悪の場合には誤った処置によって、データを復旧できなくなってしまいますね。

西村:1社目で正しい処置が行われないと、本当は復旧できた症状にもかかわらず、復旧できない状態になってしまうこともあります。

復旧料金が安いからではなく、少し高額だとしても、しっかり復旧できなくては意味がありません。ですから、慎重に、設備と技術力のある業者を選ぶようにしましょう。

4.12年のエンジニア歴で見えたHDD復旧技術の違い

聞き手:西村さんのデータ復旧エンジニア歴は12年とのことで、これまでどのような経験をされてきたのですか?

西村:物理チームのエンジニアからスタートし、スクラッチ障害の研究開発などを行っていた時期もありました。シンガポール支社があった時代には、シンガポールに駐在していたこともありました。

デジタルデータリカバリーのエンジニア組織図 現在は約40名のエンジニアが在籍する

聞き手:海外経験からみえた世界のデータ復旧業界の課題など、感じたことはありますか?

西村:物理障害へしっかりと対応できるデータ復旧業者は、世界的にも希少です。設備や技術の導入には非常にお金がかかりますからね。また、長年の実績や復旧経験から得た知見の蓄積がなければできないことが多いことも関係していますね。

シンガポールでは、物理障害に対応できる業者が1社もありませんし、復旧できるとも思われていないという状況でした。

聞き手:物理障害に対応できる設備や技術力を備えた業者は世界的にも希少なのですね。データ復旧業界で長い経験を積んできた西村さんの、今後のビジョンをお聞かせください。

西村:シンガポール時代には、先ほどお話したような背景から、自分たちの物理復旧レベルは高いと思っていました。ですが、まだまだ上を目指せると思っています。

この時代になって、データはインフラ化してきていて、データを持っていない人が存在しない、データが必要不可欠な存在になっています。

どうしても医療と比較してしまうのですが、医療は大学など様々な場所で研究され、新たな治療法が開発されていますよね。データ復旧エンジニアとして、HDDに関して研究している様々な分野にアプローチをかけ、いまだ復旧できない症状を復旧する方法を、新しいアプローチで開発していきたいです。

聞き手:いまだ復旧できない症状を復旧する方法を、新しいアプローチで開発していきたい…素晴らしい意気込みですね。本日はありがとうございました!


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