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他社様2社で復旧不可…傷のついた最重度障害のHDDからデータ復旧する物理エンジニアを直撃インタビュー

こんにちは、デジタルデータリカバリーです。

データ復旧やハードウェアについての情報を掲載しているこのnote。今回は、傷のついたHDDからのデータ復旧について、物理障害の専門エンジニア片山さんへ直撃インタビューを行いました。

前回の「データ復旧業者の選び方」の記事はこちら


傷のついたHDDはデータ復旧のなかでも最重度の障害とされています。果たして復旧できるのか?
それでは早速いきましょう!


1. 他社2社で復旧不可、部品交換済み、目に見えないスクラッチが入ったHDD

デジタルデータリカバリーでは、開業当初からHDDのデータ復旧を多数行い、実績を積み上げてきています。Twitterにおいても事例としてご紹介したように、過去に様々なタイプのHDDからデータを復旧してきました。

自然災害で水没したHDDからデータを復旧したり、

パスワードを上限まで打ち込み、データを閲覧できなくなってしまったHDDからのデータ復旧も行います。



今回、数あるHDDの復旧事例の中から紹介するのは、IO-DATA製「HDL2-S2.0」、RAID構成で使用されていたHDDです。
このHDDは、他社様2社にご依頼済みで、そのうち1社では磁気ヘッドの交換を行っても、データを読み出すことができませんでした。また、HDDには傷が付いてしまっている状態でしたが、それが他社様では見落とされていました。
2度にわたって人の手が加わっているこの状態から、どのようにデータ復旧を行ったのでしょうか。復旧を担当した物理エンジニアの片山さんを直撃しました。

※ヘッド:HDD内部のデータの読み書きを行う部品


2. データ復旧を担当した物理エンジニアの片山さん

片山さん(以下、片山):
今回のHDDは、他社様2社でデータ復旧不可で、部品交換(ヘッド)もされていました。また、私が作業を進める中で、新たに、他社様では見落とされていたスクラッチ障害があることが発覚しました。

※スクラッチ障害:HDD内部のデータの記録されているプラッタに傷がついていること

左が正常なHDD。右のHDDの〇型の傷がスクラッチ障害です。

聞き手:
HDDは基本的に、開封すると塵埃の侵入や付着により難易度が高くなる
ものなので、他社様で作業済みの機器は、データ復旧が難しいとされていますよね。スクラッチ障害は、どのような経緯で発見したのでしょうか?

片山:
他社様で作業済みのHDDだったので、初めは、ご依頼段階から分かっていた情報をもとにデータを認識させる作業を行いました。ですが、50%くらいしかデータを認識しなかったので、違和感を抱いて、クリーンルームの中の顕微鏡でHDDのプラッタを確認しました。すると、目視では見えない傷が入っていることが発覚しました。

※クリーンルーム:手術室と同等の環境で、HDDを開封して作業を行っても、ホコリや塵が付着することを防げる設備

聞き手:
他社様では見落とされていた障害が発覚した
のですね。スクラッチ障害が発生していると気づけたことが、今回の復旧成功に至った決め手ですか?

片山:
そうですね、状態をいち早く確認できて良かったです。目視で確認できない、まだ初期段階のスクラッチ障害でした。他社様ではヘッドの交換のみ行い、データを読み出せないまま返却されてしまいましたが、弊社でスクラッチ障害を発見し、傷が入っている部分からもデータを読み出すために、表面を滑らかにする作業を行ったところ、データを読み出せるようになりました。

聞き手:
日々の研究の賜物ですね。HDDのプラッタの表面を滑らかにする作業は、国内でも対応できる業者はごくわずかです。デジタルデータリカバリーのスクラッチ障害の復旧技術は東京都経営革新賞でも表彰いただいたほど、トップクラスの難易度にあたります。


片山:

仰る通りです。私たちは、これまでの先輩エンジニアが築いた知見を代々引き継いで、チームで復旧にあたっています。これまでの実績が豊富なため、他社様と比べると情報量も違うという点はあるかと思います。
HDDは、個々のHDDによって特徴があります。「このメーカーのこのモデルのHDDはこう復旧する」という違いをエンジニアが理解していることもポイントですね。今回のHDDは特徴的で、ヘッド交換の影響で認識が遅れる特徴がありましたが、こういうことを分かった上で作業を行いました。

聞き手:
今回、他社様2社で復旧不可だったHDDのデータ復旧作業を実際に行って、他社様との違いを感じたことはありましたか?

片山:
他社様2社では、ファームウェア修復を行っていなかったですね。また、ヘッド交換が上手く行われていないと感じました。物理的な修復作業は、基本的に復旧業者専用のツールに依るところが大きいです。ですが、同じスペックのツールを持っていない、もしくはツールを使用しても技術力に差が出てしまうことはあります。そういった部分の差が積み重なって、他社様では復旧不可能となり、弊社で復旧できたのだと思います。

※ファームウェア:機器を動かすプログラムのこと


3. スクラッチ障害に対応できる業者・できない業者の違い!

聞き手:
デジタルデータリカバリーでは、スクラッチ障害のあるHDDからのデータ復旧の成功実績が多数ありますが、ずばり弊社の強みであるポイントは何でしょうか?

片山:
私たちの強みは、ファームウェア修復力ですね。技術力はもちろん、今までの実績や知識量が他社様とは違うと思います。また、HDDのヘッド交換に関する知識、ノウハウもおそらく国内No.1でしょう。

聞き手:
これまでのノウハウの蓄積と、それを使いこなすエンジニアの実力が他社様との違いですね。スクラッチのように、物理的な障害があるHDDを安全に復旧するために、ユーザーに伝えたいことはありますか?

片山:
ご自身でHDDを開封するのは絶対に辞めて欲しいですね。触ってはいけないところを触ってしまってしまうことが致命傷になりかねません。
過去に、お客様がご自身で開封し、プラッタの表面に指紋がたくさんついてしまったHDDの復旧のご依頼を受けたことがありました。
プラッタと磁気ヘッドの隙間は、僅か2ナノメートルしかありません。指紋の跡は0.5ナノメートルで、僅かな隙間についた指紋を取り除くことは非常に困難でした。


4. エンジニアを経験してきて見えたこと

聞き手:
片山さんは、新卒で入社して以来ずっとエンジニアを経験してきましたよね。

片山:
そうですね、新卒8か月目までは機器の検品・解体・組み立てを行う、物流チームのエンジニアでした。その後からは、一時的に論理チームなどを経験して勉強することもありましたが、物理チームのエンジニアとして約7,000件のデータ復旧を手掛けてきました。

聞き手:
片山さんは、物理エンジニアの中でもベテランエンジニアですよね。これまでの経験から、難しいケースのデータ復旧の特徴など、気づいたことはありましたか?

片山:
一番難しいケースは、やはりスクラッチ障害のあるHDDのデータ復旧ですね。他で言うならば、最近はデータ容量が大きくなってきていて、記録方式も変わってきているので、それに対応していくことです。次世代型の記録方式のHDDは壊れやすく、これに対応できるようにすることは今後の課題ですね。

聞き手:
難しいケースのデータ復旧ができるだけではなく、常に知識と技術力をアップデートする必要があるのですね。今後挑戦したい研究などは他にありますか?

片山:
物理障害の復旧作業は、ツールに依るところが大きいという話をしましたが、そこも課題だと考えています。
これまで手動で行っていた修復作業も、ツールを開発していけば誰でも安全に素早く復旧が可能となります。また、これまでのノウハウを活用すれば、自分たちの手で、今後増えていく新たなタイプの障害の復旧にも応用していける可能性があると思っています。自分たちでツールを作るには、更なる技量と知識が必要だと感じているので、それが実現できるように復旧や研究にあたっていきたいです。

聞き手:
将来増えるであろう障害にも自分たちの手で対応する…素晴らしい意気込みですね。本日はありがとうございました!


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